アメリカでの健康と医療

第24回「ふらっと」立ち寄れる安心を:FLATが目指す日本人コミュニティー支

在米日本人の健康と医療をサポートする「FLAT・ふらっと」がお届けする連載。アメリカで健康な生活を送るために役立つ情報を発信します。


在米日本人を結ぶFLAT

「FLAT・ふらっと」は、2023年4月にニューヨークで設立されたNPO法人です。日本語を話す在米の医療従事者と患者をつなぐネットワークづくりを通して、日本人コミュニティーを支援することを目的としています。FLATという名称には、「誰もが同じ(FLAT=平らな、均一な)目線で、ふらっと立ち寄れる場所にしたい」という思いが込められています。

このNPOを共同で創設したブロディー愛子さんがこれまで代表理事を務めてこられましたが、25年からは私、山田悠史が後を引き継ぎ、代表を務めることとなりました。私は、ニューヨーク市内の大学病院で老年科医として勤務しています。日々、高齢の患者さんと向き合う中で、米国に暮らす日本人の中には、社会とのつながりが薄く、孤立していたり孤独を抱えたりしている人が少なくないことを知りました。

同世代の友人が日本に帰国したり、配偶者を亡くしたり、お子さんが結婚して別の州に移り住んだりといった出来事が重なり、気づけば人間関係が減っていたという話をたびたび耳にしたのです。

日本語で助けあう場をつくりたい

現在、ニューヨーク市内には少なくとも2000人の日本人高齢者が暮らしており、そのうち約1000人は英語で自由にコミュニケーションを取ることができないといわれています。少し視野を広げると、ニューヨーク全体で約5万人の日本人が住んでいるとも推計されます。実際には、もっと多い可能性もあるでしょう。その中のどれだけの人が米国の医療システムや保険制度を十分に理解し、医療機関で安心して意思疎通できているのでしょうか。

日常会話では問題なく英語を使えていても、医療の場面となると難しさを感じることもあるかもしれません。世界中から人が集まる大都市ニューヨークですが、日本語による医療リソースやサポートは限られています。日本人コミュニティーにとっては「都会の顔をした村」のような場所なのかもしれません。電車やUberで物理的には移動しやすくても、困ったときにどこに相談すればよいのかがわかりにくい情報面での不便さを抱えた場所なのです。

地域によっては、さらに日本語で受けられる医療や相談のリソースが限られていることも考えられます。そうした現状を受け、私たちは「困ったときに、少しでも医療リソースとの架け橋になれたら」という思いで、活動を続けています。

米国での暮らしを支えあうために

人はどこに住んでいても時に病気になります。がんのような深刻な病にかかると、多くの人が「まさか自分が」と思うものですが、成人の三人に一人ががんを発症する時代です。ただし、医学の進歩により、適切な治療を受けることで、長期にわたって生活を続けられるようにもなっています。実際、米国でもがんの治療を受けながら生活する方や、ほかの慢性疾患を抱えながら日々を送る日本人の方が多くいます。また、年齢を重ねれば、誰もがやがて高齢者となり、高齢者ならではの悩みや困りごとを抱えるようになります。

現在FLATでは、がん患者や、膠原病などの自己免疫疾患患者のためのサポートミーティング、高齢者が気軽に集まっておしゃべりできるシニアカフェ、ストレス軽減に役立つ陰ヨガなど、さまざまなプログラムを提供しています。いずれも参加費は無料で、医療専門家の話を聞く機会もあります。すべてオンラインですので、全米のどこからでも参加可能です。たとえ住んでいる地域が違っていても、同じような体験をした在米日本人同士が、知識や情報を日本語でシェアしたり、ざっくばらんな会話を楽しんだりすることで、日々の暮らしを支える力になれるのではと考えています。

また、医療専門家による日本語のオンラインセミナーや、米国で発行する日本語情報誌への寄稿を通して健康情報の発信も行っています。こうした活動を通じて、少しでも病気や不安を抱える人の力になりたいと願っています。ぜひ、FLATのウェブサイトを訪問してください。ご提案やボランティアへの参加も大歓迎です。お気軽にご連絡ください!


今週の執筆者

山田悠史 米国老年医学専門医

マウントサイナイ医科大学、老年医学・緩和医療科所属。臨床医として活躍する傍ら、ニュースメディアや音声コンテンツなど多岐にわたって活動中。著書は「健康の大疑問」(マガジンハウス新書)他多数。在米日本人の健康と医療を支える「FLAT」の代表メンバー。Twitter: @YujiY0402


●サポートミーティング情報●

乳がん、婦人科がん、その他のがん、転移がん、自己免疫疾患患者さんのためのサポートミーティング、シニアカフェなどをオンラインで定期開催中。参加費は無料。

スケジュールや詳細は、FLATのウェブサイトをご参照ください。この他にも、一般の方にもご参加いただけるウェビナーなども実施しています。

 

 

 

 


「FL AT・ふらっと」は、がん患者や慢性疾患、高齢者、特別支援が必要な子どもを持つ保護者、介護者など、在米日本人の健康を、広い範囲でサポートする団体です。

Website: www.flatjp.org

Email: contact@flatjp.org

               

バックナンバー

Vol. 1343

ニューヨークの野生動物図鑑 コンクリートジャングルの住人たち

高層ビルが建ち並ぶ、大都市ニューヨーク。しかし実は、驚くほど多様な野生動物たちが暮らしている。公園の芝生、街路樹の上、そして川辺や住宅街まで、都市のあらゆる場所に現れる動物たちを紹介したい。

Vol. 1342

完全保存版 フードトラック ベスト8

街角から漂う香ばしいスパイスの香りに思わず足が止まる春のニューヨーク。今、フードトラックは単なる「手軽なランチ」を超え一流シェフたちが腕を振るう「動く美食レストラン」へと進化を遂げている。

Vol. 1341

世界で最も多様な街 ジャクソンハイツへ

マンハッタン区から地下鉄で約20分。クイーンズ区ジャクソンハイツ地区は、数ブロック歩くだけで、文化も言語もめまぐるしく変化する、多様性の極地のようなエリアだ。かつてニューヨークタイムズは「世界で最も多様な地域の一つ」、BBCは「ニューヨークを体現する街」と評した。本特集ではこのエリアの魅力に迫る。