2017/02/24発行 ジャピオン904号掲載記事

中村武彦のプロスポーツから見る経営学

第9回 選手のセカンドキャリア(前編)


元なでしこに聞く
選手引退後の進路

 今回はプロスポーツ選手のセカンドキャリアについて、今年1月からブルーユナイテッド社でインターンとして働く、元サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)の山口麻美さんに話を聞く特別編。

 日本ではプロスポーツ選手の多くが引退後の進路として、競技者の延長として「指導者」を考えることが多い。そんな中、ブルーユナイテッド社では現在、スタッフとして、アメリカのプロサッカーリーグでプレーした奥田哲也さんが日本に常駐し、カンボジアには横浜マリノスはじめ9カ国10チームでプレーした深澤仁博さんと、プロ選手としてキャリアを築いてきた人材を積極的に採用している。彼らに共通するのは、同社代表の中村武彦さんいわく、「(セカンドキャリアに)指導者ではない可能性を探りたいという思い」。今回は山口さんに、選手の目線から現役時代にセカンドキャリアについてどう捉えていたのか聞いた。

——ブルー・ユナイテッド社でインターンをすることになった経緯は?

 以前、山田卓也選手(元日本代表、Jリーグ、アメリカのプロリーグでプレー。現在、JFL奈良クラブ所属)に弊社代表の中村を紹介されました。そのとき、どんな事業をしているのか興味を覚え、ウェブサイトやフェイスブックなどを調べました。

 私は日テレ・ベレーザ(日本女子サッカーリーグ)で2014シーズンを最後に引退しました。その後は、以前留学していたフロリダ州立大に復学し、以前は選手として所属したサッカーチームのボランティアコーチとしてチームの運営を手伝っていました。コーチの勉強をしながらも在学中から、指導者以外の道を考え始め、ブルー・ユナイテッドのことを思い出して、大学卒業後のインターンを申し出ました。

——現役時代は、引退後のことはどう捉えていましたか?

 現役時代もセカンドキャリアのことを考えてはいました。ですが、そのときは、選手でいることにこだわりがあり、いいプレーをすることが優先先で、練習に多くの時間を割き、時間に余裕があまりなくて、具体的なことにまで考えは及びませんでした。選手しかやってこなかったので、自分が他に何ができるのか分からないというのが正直なところでした。

——現役時代、周りの選手とはそういう話は?

 日本でプレーしているときはほとんどしなかったですね。チームメイトと話をしても、お互いに「分からない」、あるいは「指導者」という答えが多かったです。

 アメリカの選手はもう少し現実的でした。特に大学は全国レベルのチームでしたが、「アスリートだから」といって特別扱いされません。成績が伴わないと活動できないので、単位取得の重要さも分かっていて、プロ選手という道だけでなく、皆、将来こうなりたいという考えを持っている傾向が強かった。チームメートでも大学での活動をひとくくりとして考え、卒業後はきっぱり辞めて別の仕事を、という人も多かったです。

 スウェーデンのプロチームでもプレーしましたが、スウェーデンは社会福祉制度が発達していて、学校の授業料が無料なので、選手の多くがサッカーだけでなく、自分の興味のある他の分野の勉強をしていました。パートタイムで働いている人がいたり、チームのスポンサーで働ける機会もあって、意欲的にいろいろな活動に取り組んでいる人も多かったです。

——引退を考えたきっかけは?

 きっかけは、けがです。スウェーデンでプレー中、右膝に大けがを負いました。手術を受けるために2011年の11月、日本に帰国しました。その後、スウェーデンのチームからオファーもありましたが、けがが深刻で戻れませんでした。帰国後は長くリハビリを行っていました。

——その時は、次のキャリアついては考えましたか?

 考えましたが、私の場合は見つからなかった。これをやりたいというものが本当に見つかりませんでした。まだ現役にこだわる情熱が強かったので、「もう一度サッカーをしたい」という思いだけがありました。
(続きは3月10日付号に掲載します)

山口麻美(まみ)さん■東京都出身。1999年、日本女子サッカーリーグの日テレ・ベレーザの下部組織メニーナに入団。2002年にトップチーム昇格。05年にフロリダ州立大学に留学し選手としてプレー。在学中はハーマン杯を同大選手として初受賞。07年に日本代表に初招集され代表デビュー。08年にスウェーデンのウメオIKに入団しリーグ優勝(2回)、UEFA決勝戦進出を経験。09年に米女子プロリーグのアトランタ・ビートからドラフト指名を受け入団。10年にスウェーデンのハンマルビーIFに移籍しプレー。帰国後、岡山湯郷ベルを経て日テレ・ベレーザに復帰、2015年2月に引退。今年1月からブルー・ユナイテッド社でインターン。

中村武彦

中村武彦
マサチューセッツ大学アマースト校スポーツマネジメント修士取得、2004年、MLS国際部入社。08年アジア市場総責任者就任、パンパシフィック選手権設立。09年FCバルセロナ国際部ディレクター就任。ISDE法科大学院国際スポーツ法修了。FIFAマッチエージェント。リードオフ・スポーツ・マーケティングGMを経て、15年ブルー・ユナイテッド社創設。

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