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マラソンとジョギングで起こるけが(Vol.46)
現代に生きる老若男女が健康でいるための生活のポイントを、カイロプラクターのドクターベルモンテが教えてくれる連載。
マラソンが注目される季節「ランナー膝」予防と治療
もうすぐNYCマラソンですね。今回はランナーのけがについて考えてみましょう。ランニングは一つの動作を延々と繰り返すため、一定の部位に負荷が集中し、炎症を起こし、けがに発展します。特に多いのは膝と足首のけがです。
「ランナー膝」という症状を聞いたことがある読者も多いでしょう。これは俗称で、正式名を「膝蓋大腿痛(しつがいだいたいつう)症候群(PFPS=Patellofemoral pain syndrome)」と言います。マラソンランナーとジョギング愛好家の間で非常に多いけがです。膝蓋骨(膝の皿)が正常な軌道から外れて、大腿骨(太ももの骨)と過剰な摩擦を起こすことが原因で膝の前部に痛みが生じます。当院の理学療法士・城戸亜幹絵の患者さんのケースを紹介しましょう。ここでは親しみやすい俗称を使います。
女性に多いランナー膝
この患者さんは40代の女性で、ジョギング愛好家でした。ちなみに、ランナー膝は男性よりも女性に多い症状です。女性の方が、骨盤が広いために膝が内側に偏りやすく、負担が蓄積しやすいという体の構造上の理由があります。
この女性は、坂や階段の上り下りをしたり、走ったり、しばらく座っていて立ち上がる時などに、膝に痛みが走ると訴えておられました。治療では、硬くなった部位の筋肉をほぐし、弱った部位をストレッチします。そうしながら膝を守る周辺筋肉を理学療法(運動療法)により鍛えます。
亜幹絵によると、集中的に鍛えるべきは内側広筋(ないそくこうきん)。太ももの前面にある大腿四頭筋の一部で、膝の皿の内側あたりに位置する筋肉です。マラソンだろうとジョギングだろうと、ランナーにとって最も重要な筋肉といえます。

お尻の筋肉を鍛えよう
「加えて、お尻の筋肉の強化が治療と再発予防の鍵です」と亜幹絵。お尻? と思われるかもしれませんが、実際さまざまな研究結果で、足首と膝のけがにお尻の筋肉が関与していることが示されています。
この女性は週2回、7週間通院してもらい、これらの筋肉強化を徹底することで完治しました。治療にはステロイドの関節注射などは必要ありません。痛みがある間は市販の抗炎症鎮痛剤(アドビルなど)を服用しますが、理学療法を進めるうちに割とすぐ痛みが和らぎます。言うまでもありませんが、そこで治療を終えてはまた痛みは戻りますから、しっかり筋肉を鍛えて完治します。
そしてランナー膝の予防には、①お尻の筋肉を強化するエクササイズと、②脚を開くための筋肉と後ろに伸ばすための筋肉を鍛えることです。写真を参考に、自宅でやってみてください。日常的にフォームロールで脚の筋肉をほぐし、ストレッチすることも効果的です。
欲を言えば、膝の前、裏側を包む筋肉強化のエクササイズもやってほしいです。それにはスクワットとランジという、読者にも馴染みのあるエクササイズをやっていれば、とりあえず満遍なくカバーできます。
参考までに、マラソンとジョギングは似て非なるものです。けがの傾向も少し異なります。例えば、足底筋膜炎(足裏の筋肉を包む筋膜の炎症)などはマラソンランナーに多いですが、ジョギング愛好家にはあまり見られません。
マラソンは競技であり、体にかかる負荷も大きいということです。選手たちは完走、記録更新などそれぞれの目標を掲げ、トップ選手になれば上位入賞を目指し、それぞれが自分の限界に挑戦するのがマラソンです。今年もNYCマラソンでは走りの勇者たちが我々に感動をくれることでしょう。けがをしないよう、頑張って自己ベストを出してほしいものです。
ジョン・J・ベルモンテ 先生
John J. Belmonte, DC
E. 53 Wellness院長。カイロプラクター(Doctor of Chiropractic)。全米カイロプラクティック協会会員、ゴルフPGAツアー・スポーツ医学チーム所属。アスリートのけがの治療、妊娠中の痛みの緩和、成長期の子供のカイロ治療も手掛ける。
E. 53 Wellness
211 E. 53rd St./TEL: 212-980-4211
e53wellnessnyc.com
今月のワンポイント
「必須!ウォーミングアップ」
これから寒い季節になるので、外を走る前に暖かい室内でしっかりウォーミングアップし、筋肉を温め、関節をほぐしてください。これを怠り、筋肉が硬いまま、関節が固まったままで急に走ると、けがのもとです。汗が出るまでウォーミングアップする必要はありません。ジャンピングジャックや、腕を回して肩関節をほぐすなど、ちょっと体が温まれば十分です。ウォーミングアップは暖かい季節にも行ってほしいですが、冬は必須です。
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