巻頭特集

イレギュラーなゴハン事情

ニューヨーク市内の飲食店は、3月16日から店内営業ができない状態が続いている。経済事情から店を完全休業するところも多いが、今日に至るまで、デリバリーとテークアウトを続けている店もある。今回は、苦境の中でも奮闘し続ける市内の飲食店を、いくつか紹介しよう(取材・文/南あや)


つくし #日本食  #家族経営
待っている常連がそこにいる

政府の要請を受けて、飲食業界が一斉に店内営業を休止したのが、3月16日。ミッドタウンにある日本食店「つくし」は、翌17日からデリバリーとテークアウト営業をスタートさせた。

「店内営業禁止が決まったとき、常連さんが『つくしさんは(営業を)どうされるんですか?』と聞いてきてくださって、そこで初めて『持ち帰りを始めるか』、という話になりました」

オーナーシェフ、真鍋徳彦(のりひこ)さんを支える妻、真鍋裕子さんは当時をそう振り返る。営業し続けることで職人たる徳彦さんの腕を鈍らせず、いつでも営業再開できるようにという配慮でもあったという。

メニューを設けず、平均60ドル前後のおまかせコースで営業してきた同店の、初の挑戦。常連客に以前作った弁当を参考に、ボリュームを持たせつつ野菜たっぷりの、日替わり弁当(20ドル)を考案した。

最初の1週間は、まだマンハッタンに出ていた客からのオーダーが入り、順調だったそう。しかし人々がパンデミックを警戒した2週目に街から人が消えた。

子供を連れて配送

真鍋さんはデリバリー要員として車を走らせた。目指すは、マンハッタンに通勤できなくなった常連客が住む、アップステート。駐在家族の多い地域でもある。

「一日中家族が家にいると、お母さんは大変。3食のうち1回を、うちのお弁当にするだけでも、全然違うと思うんです」

前日までに注文を受け付け、当日の朝に、店で調理した弁当と休校中の2人の子供を車に乗せ、真鍋さん自ら運転した。いくつかの主要鉄道駅で客に受け渡す。噂が噂を呼び、今では日に15件ほどの注文が入る。

子供を含め、家族4人で一丸となって立ち向かって来た結果、「一家で忍耐力や結束力が身に付きました」と真鍋さんは笑う。

みんなで乗り越える

20ドルの弁当は、おかずたっぷり。採算は度外視しているという。

「この非常事態、必要としている人に栄養たっぷりの食事を届けたい。みんなで助け合って行きたいと思っています」

ウェブサイトを設けず、口コミを中心にここまでやって来た同店を支えるのは、常連客。商品に感謝のメッセージを添え、「つくし」は完全復活の時まで、街を走り回る。

 

オーナーシェフ、真鍋徳彦さんが作る弁当(写真提供=つくし)

Tsukushi Restaurant

357 E. 50th St.
TEL: 347-624-3660

上記番号は弁当注文専用。
店頭販売は月〜金曜日の午後3時〜7時、デリバリーは日替わり(郊外は火、水、金のみ、前日までに注文)。

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