巻頭特集

繊細なセンスでニューヨーカーを魅了している日本人の女性アーティストたちを紹介

華麗なる転身! タトゥーアートで人々の心を癒す
タトゥーアーティスト 鈴木真梨子さん

ブルックリン区ブッシュウィックにあるタトゥースタジオ「テンダーフットスタジオ」で働く鈴木真梨子さんが、タトゥーアーティストとして活動し始めたのは4年前。もともとは有名アーティストのもとでアシスタントをしながら現代アーティストとしてドローイング作品を手掛けていたが、出産を機に「何か新しいことをしよう」と思い立ち、媒体を紙から人の体に移したのだという。

︎施術の数カ月前から予約し、デザインを事前に相談しながら決めていくという

ニューヨークでは若者はもちろん、医師や弁護士がタトゥーを入れていることも少なくないが、タトゥーに抵抗がある人種が多いことも確かだ。「日本人だけでなく、例えばユダヤ系の人たちなどタトゥーを嫌悪する人は多いです」。

そんな一癖あるタトゥー業界に足を踏み入れたのは、全ての人種やLGBTQの人など誰にでもオープンで業界のイメージや差別を払拭しようという同店のコンセプトに共感したからだそう。好みのアーティストを指名する完全予約制で、施す側も受ける側も安心できると評判の店だ。

セラピーとしての効果

鈴木さんが手掛けるタトゥーは、いわゆる日本人の持つ「入れ墨」のイメージを覆してくれる、植物や花をモチーフにした美しいアート。古いタトゥーの上から施すカバー・アップ・タトゥーとしてや、体型にコンプレックスがある人が自信を持つためのボディーポジティブを目的に取り入れられることも多いとか。

開放感のあるスタジオ

「自分だけの大切な思い出や忘れたくない瞬間を体に刻むことができるのがタトゥーの魅力です。痛みも伴いますが、お客様の人生を聞きながら施術していく行程は一種のセラピーだとも感じます」。

ファインアーティスト時代は、「魂を込めた自分の作品の買い手の顔が見えないことに寂しさを覚えていた」という鈴木さんだが、タトゥーアーティストに転身したことで「自分のアートを好きと言ってくれる人に直接会えることが一番の喜びです」とほほ笑む。

アーティストとして母親として、力強く歩んできた鈴木さん。自分らしさの表現の一つとして、日本人にもタトゥーを気軽に楽しむ人が増えてくれることを願っている。

 

 

鈴木真梨子さん

2000年に来米。
世界的現代アーティストのジェフ・クーンズのアシスタントを務める傍ら、自身も現代アーティストとして10年間活動。
結婚、出産を機に休業し、18年にタトゥーアーティストに転身。
21年より「テンダーフットスタジオ」に所属。
Instagram: @belltreeink
WEB: tenderfootstudio.com


日欧のエッセンスが融合したフラワーアレンジに注目
フラワーアーティスト 永田絵梨子さん

「エリン・デザイン・インターナショナル」オーナー兼フラワーアーティストとして活躍する永田絵梨子さん。見る人のため息を誘う美しいフラワーアレンジメントは、「ディオール」「マイケルコース」「ナイキ」といった有名ブランドからの依頼が絶えず、ファッションショーから店舗、イベント、ウェディングまでの幅広い装花を数々手掛ける。

永田さんの作品には1本1本に力強さと繊細さが込められている

いつかは枯れてしまうはかない花で作るフラワーアートの魅力にはまった永田さんは、日本やハワイ、パリで修行を積んだのち、2015年にニューヨークに移住。世界中からインポートの花が集まるニューヨークは、花の種類はもちろん、通常では考えつかないような花の使い方や常識に捉われないアレンジに溢れている。そんな環境の中で、自分のアレンジにも影響を受けたという。

ヨーロッパ仕込みの華やかな装飾技術と日本の生け花が持つミニマリズムな要素をミックスした永田さんのアレンジは、ある意味では伝統の枠からはみ出ているかもしれない。だがニューヨークに来たことでそれも自分のスタイルなのだと改めて自信を持つことができたのだそう。「どんなスタイルでもその人らしさとして受け入れてもらえる土壌があるのがニューヨークの魅力です」。

NYならではの働き方

コロナ禍で妊娠・出産を経験し、産後1カ月で復帰した永田さん。産後すぐに仕事をオファーしてくれる取引先に驚きながらも、「仕事する上で子供がいることがウィークポイントにならないのはニューヨークの魅力の一つです。ここで働く女性はみんなタフですよね」と笑う。

ウェディングブーケのオーダーも可

最近は、一度使用した花を再利用するアップサイクルのプロジェクトや、朽ちていく花の姿も一つのアートとし、捨てずにそれを生かしたインスタレーション制作などにも意欲を見せる。

「生のお花が持つエネルギーを届けたいんです」と話す永田さんは、企業向け以外にも一般宅の装飾、ウェディングブーケ、ギフトなどさまざまなフラワーアレンジを要相談で受け付け中だ。素敵で新鮮な装花が依頼主の元に届けられるというから、ぜひ依頼してみてはいかがだろうか。

All Photos by EriN Design International

 

永田絵梨子さん

東京、ハワイ、パリでフラワーデザイナーとして活動。
2016年1月にニューヨークで「EriN Design International」設立。
ファッションショー、広告、イベントやパーティーでの花装飾を手掛ける。
繊細かつエッジを効かせたスタイルが特徴。
Instagram: @erindesign_eriko
WEB: erindesignintl.com

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