巻頭特集

2020年秋冬にニューヨークで新たにビジネスを始めたオーナーたち

スキンディープNYC (メディカルスパ)

コツコツ準備して怖いものなし!

「美容先進国アメリカで、しっかり結果が出る美容医療のクリニック経営に携わりたい」という思いから、2020年9月にミッドタウンで「スキンディープNYC」をオープンさせた名取由稀江さん。銀座の「エンパイア・ニューヨーク・ネイルスクール東京」、ニューヨークのスパサロン「ユキエ・ナトリ・ニューヨーク」をはじめとした美容ビジネスを展開している。

 

角質を除去しながら肌をマッサージする「ハイドロフェーシャル」は、同店のおすすめサービスの一つ

 

オープン目前で
先の見えない待機突入

美容医療の医師が駐在し、最新機器の数々で施術を行うことが売りの「スキンディープNYC」の、当初のオープン予定は、なんとロックダウン中の20年3月だったそう。

「半年前から準備していて、このロックダウンも『1カ月くらいかな?』と思っていたら、いつまで経っても見通しが立たず…」と名取さんは苦笑い。店舗・スタッフ共に準備万端の状態で、実に6カ月も待ちぼうけをくらってしまった。

日本からニューヨークに戻ってきたばかりだったという名取さんは、自主隔離期間中だった。とにかくスタッフと「できることをしていこう」と励まし合ったという。名取さんはとにかく全員が感染せず、安全に過ごせるよう腐心した。

 

医師が扱える特別な薬品や機器の効果を実感できるのが、美容医療。こちらはビタミン注射前のカウンセリングの様子

 

事業主も置いてけぼり?
細かすぎるガイドライン

ロックダウンの段階解除は各事業主に通達がある訳ではなく、一般市民と同じように州ウェブサイトを確認する日々だった。定員の50%という条件付きで7月に再開OKとなり(これも直前に知った)、合わせて州の衛生ガイドラインが設けられたが、これがかなり細かいそう。

「消毒剤の種類や使い方、スクリーニングや検温の手順、そして手袋の脱ぎ方まで、全てに細かい規定があります。オンラインで勉強して証明書をもらい、自分でも従業員に指導しました」

また予約の合間に消毒が必要なので、通常よりも少ない予約数になってしまうという欠点も。

6フィート間隔を促すステッカーや、感染予防に準拠していることを示すポスターを導入することには賛成な一方、高級感あふれたシックな内装とのアンバランスさに、内心ため息をついたそう。しかし、これらのきめ細かいルールを網羅した現在は、スタッフの衛生管理には自信あり。

人が戻るタイミングが
今後のビジネスの鍵に

現在の客層は非常に幅広く、20〜70代。ただ、この騒動でニューヨークを離れた人は多い。ミッドタウンはビジネス街なので、リモート体制が続くのも、客足が戻らない一因だ。「リモート勤務はダウンタイムが目立たないので、絶好の施術チャンスなんですけどね」と名取さん。

一方で、水流を使って肌を美しくする「ハイドロフェーシャル」など、他店にはないメニューに、すでにリピーターがいるのも事実。

「アメリカ人医師に施術を受けるのが怖い、肌に合うか分からない、といった不安を抱える人は多い。安全性を知ってもらい、役に立つサロンとして利用していただければと思います」

順調にスタートを切ったが、美容業界全体は苦難が続く。多いと週に5、6件、閉店の知らせを耳にするという。「これから物件賃貸料が下がる可能性があるので、新規事業は参入しやすくなるかも」と名取さん。

自身で実践してきた美容術の数々を、1人でも多くの人に紹介したい名取さん。今日も、新規客が店のドアを開けてくれることを願っている。

施術室は清潔感を重視した個室

 

「Skin Deep NYC」オーナーの名取由稀江さん

 

店内は、高級感ある落ち着いた雰囲気で統一している

 

Skin Deep NYC

【オープン】2020年9月(当初のオープン予定=同年3月)
【従業員】8人
【営業時間】月〜金曜日 午前10時〜午後8時、土曜日 午前11時〜午後7時
39 W. 56th St.
(bet. 5th & 6th Aves.)
TEL: 646-692-3330
skindeepnyc.com

 

 

 

 

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1245

春到来! 週末のプチお出かけ 〜ハドソン川流域・キャッツキル山麓編〜

桜の花も満開を迎え春の行楽シーズンがやって来た。ニューヨーク市内から日帰りできるハドソン川流域・キャッツキル山麓の人気のスポットを紹介しよう。

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。