巻頭特集

夏バテはこれで解決!

暑さで体調を崩しがちなこの季節、ヘルスケアの専門家から夏を乗り切るための注意点や対策を教えてもらった。(取材・文/加藤麻美)


怖い熱中症、その症状と対策

マウントサイナイ東京海上記念診療所ハーツデールオフィスで、内科と老年病の診療にあたる木村先生に熱中症について聞いた。

―なぜ熱中症になるのですか?

熱中症や熱射病は、体を適切に冷やせない場合に起こります。

通常は汗をかくことで体を冷やしていますが、猛暑では汗をかくだけでは不十分な場合があり、このような場合は体が冷えるよりも早く体温が上昇します。その結果、脳や臓器にダメージを与える熱中症になる可能性があります。

―熱中症になりやすいのはどんな人ですか?

幼児と高齢者が熱中症にかかりやすいですね。4歳以下の乳幼児は、自分で暑さから身を守ることができません。言い換えれば、保護者の適切な対応が不可欠であるということです。65歳以上の高齢者は、慢性疾患や服用している薬によって暑さに適応することが困難な場合があります。さらに体が不自由になったり認知能力が低下すると、自分自身で熱中症から身を守ることが困難になります。

その他にも建設労働者など屋外で働く人や、スポーツ選手、炎天下に激しい運動をする若くて健康な人が熱中症になる例も少なくありません。

―熱中症の症状(危険サイン)は?

大量の発汗、寒気、むくみ、筋肉のけいれん、疲労感から、やがて吐き気や嘔吐(おうと)、頭痛、意識混濁(こんだく)し、失神に至る場合もあります。

体温が華氏103度(摂氏39.4)以上で体が熱く、皮膚が赤く火照り乾燥し、汗が出なくなったら、「オーバーヒート」状態です。

―応急処置は?

先に述べた症状は、熱中症が進行している状態ですので、すぐに911に電話し、救急車を呼びましょう。涼しい場所に移動させ、衣服を緩めるなどして体を休ませましょう。

体を急速に冷やすのが最も効果的ですので、水道が近くにある場合は、水を掛け、自宅であれば、水のシャワーを掛けてあげてください。

それができない場合は、ぬれたタオルを体に当て、数分ごとに冷たいタオルを交換しましょう。水を一口飲ませるのも良いです。ただし、嘔吐していたり意識が混乱していたり朦朧(もうろう)としている場合に水を与えてはいけません。

―熱波(ヒートウェーブ)到来時にはどのようなことに注意したらよいですか?

自宅で過ごす高齢者や障害者など、熱中症による死亡の危険性がある人の様子をこまめに確認してください。真昼の時間帯や、海岸など日差しが特に強い場所では直射日光に当たる時間をなるべく少なくしてください。

アルコール以外の水分を十分に取り、発汗によって放出される塩分やミネラルをなるべく体内に補給しましょう。ただし、医師の指導がない限り、塩分補給の錠剤は飲んではいけません。また乳幼児には通気性に優れたゆったりした服を着せ、帽子や日傘で頭部を日差しから守りましょう。

これは熱波到来時に限ったことではありませんが、車中熱中症死の原因になりますので、子供を1人で車中に絶対に置き去りにしてはいけません。ふざけて車のトランクなどの密閉された空間に入ることがないように最大限、注意してください。

 

お話を聞いた人

木村啓子医師

内科、老年病専門医。
マウントサイナイ東京海上記念診療所勤務。
永住権申請の健康診断も受け付けている。

マウントサイナイ東京海上記念診療所(ハーツデール)
141 S. Central Ave., #102
Hartsdale, NY 10530
TEL: 914-997-1200
mountsinai.org


熱波とは?

米気象局は、少なくとも3日間連続して華氏90度以上の高温が続くことを熱波(Heat Wave)と定義している。

ヒートアドバイザリーって?

ニューヨーク市では、熱指数が2日以上連続で華氏95度から99度に達する、またはどんなに短い間であっても100度から104度に達することが予想される場合に、ヒートアドバイザリーが発令される。市内のシニアセンターやコミュニティーセンターなどに「クーリングセンター」が開設される他、公共図書館や屋内ショッピングモールなど冷房がある施設で涼むことができる。

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