巻頭特集

海外から日本の大学の受験最新情報

米国からの帰国生が大学受験において知っておくべきことはなんだろうか? 先週号に引き続き大学の進学事情をお届けする今週号では、海外から日本の大学を受験するための基礎知識と基本最新情報を徹底解剖する。(取材・文/河原その子)


進学塾代表に聞く
日本大学最新受験事情

最近では、駐在家庭に限らず永住家庭でも現地の高校を卒業後、日本の大学進学を選択することが増えているようだ。次世代の国際人への期待、多様性のある人材を求める社会がその背景にある。米国在住者の日本の大学進学について、ニューヨークにある海外生向け進学塾、SAPIX USA代表の岩田篤格(あつのり)さんに伺った。

米国からの日本の大学進学への道筋を教えてください。

まず国籍を考慮する必要があります。受験生が①日本国籍のみ、②日米二重国籍保持者、③米国籍のみの3通りです。二重国籍者が日本人として受験する場合は①、米国人として受験する場合は③と同じ扱いになりますが、二重国籍者の扱いは大学によって異なるので各大学の受験資格を調べることが大事です。

次に、日本の大学受験は大きく分けて「一般選抜」「AO入試(総合型選抜)」「帰国生枠入試」「留学生枠入試」の4通りがあります。「一般選抜」は日本在住者と全く同じ条件での受験になりますが、最も一般的なのは「帰国生枠」と「留学生枠」です。前者は日本人対象で、二重国籍保持者が日本人として受験する場合も含まれます。後者は外国人対象で、二重国籍者が米国市民として受験する場合も該当します。とはいえ、大学ごとに条件が異なる場合もあるので実際はとても複雑といえます。

普通の学部とオールイングリッシュプログラムの違いとは?

オールイングリッシュプログラムは英語のみで学士を取れるプログラムです。東大のPEAK、慶応のPEARLなど、私大11校、国立大で9校ほどあり今後も増えるでしょう。募集学部は人文・教養系が主ですが、名古屋大、上智大、早稲田大では理系学部の応募もあります。理数系に進む場合は、日本語で学士を取る普通の学部への受験も視野に入れましょう。

「帰国生枠」「留学生枠」入試で、コロナ禍で大きな変化はありますか?

「帰国生枠」「留学生枠」入試では、TOEFLなどの英語能力試験のスコア、共通テストのSAT、ACTのスコア、高校の成績、IBが審査に利用されています。加えて、オールイングリッシュプログラムでは英語のエッセーを提出します。選考は、書類審査のみか面接で行われることが多いですが、普通学部の受験では、日本語小論文や学部ごとの学科試験もあるでしょう。コロナ禍の影響で、今年に限り共通テストの提出を免除したり、オンライン試験に切り替えた大学もありました。また、SATサブジェクトテストの実施が今年6月で終了するため、日本の大学がサブジェクトテストに変わるものを求めるのか、これから注視が必要です。

米国育ちで日本の大学進学を選ぶメリットを教えてください。

日本人に限らず、米国全体で海外大学進学が一種のトレンドになりつつあります。米国のみで育った学生が米国外での学びを得る、多言語や異文化の理解など、多様な価値観を持つことを社会が評価するようになってきたからです。例えば、日本人が米企業への就職を目指す場合、米国育ちで米国大学を卒業した日本人よりも、日本の大学を卒業し、日本国内から就職するほうが有利なこともあります。企業側も人材の多様性を求める時代なのです。日本の大学側も国際感覚を持つ日本人学生を歓迎します。

日本の大学の学費は米国と比べると安価な傾向にあること、日本の文化を知り、日本語力の強化を望めることもあり、日本の大学で学士課程を修了後、専門性の高い米国大学院を目指す進路は、今、米国在住日本人にとって魅力的な選択肢になってきています。

 

 

 

岩田篤格さん
SAPIX USA代表

長年海外在住子女教育に携わり、一般入試、帰国入試、ならびに海外進学を支援。
2015年SAPIX USA立ち上げより現職。
「生徒、保護者、講師のチームで受験に臨む」がモットー。
sapix.nyc

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