巻頭特集

激動のコロナ禍教育 リモート授業に自宅学習…利点と弊害とは

ニューヨーク市内の再度のシャットダウンも、いよいよ現実味を帯びてきた。リモート勤務に慣れてきた大人がいる一方、子供、そして親は、対応が二転三転する学校教育に戸惑いを覚えっぱなしだ。今、何が起こっている? (取材・文/南あや、音成映舞)

<編集注>この記事は12月22日現在の情報をもとに作成しています。


「リモート授業」利点弊害

騒動が長引きすぎて忘れたかもしれないが、ニューヨーク市内の学校が最初に対面授業を禁止したのは3月15日のことだ。市内5区の1800校に通う、110万人以上の児童・生徒が通常形式の教育を受けられなくなり、同月30日からはビデオ通話やオンライン教材を基盤としたリモート授業に移行した。

当初は、爆発的に増加した感染件数を抑え込むための一時的措置としていた(厳密には、政府は現在も同様の見解を示している)が、4月11日には6月までの学期を全てリモート授業にする旨を決定。ニューヨークタイムズ(4月11日付)は、「悲惨なシナリオ」が実現したと嘆いている。

その後、対面とリモートを組み合わせたイレギュラー形式で秋学期がスタートしたが、感染件数急増を受けて、11月19日〜24日のリモート移行を実施。3K〜5年生限定で、12月7日に再び登校が再開されたが、残りの学年については22日現在も詳細不明だ。

なお市内では、英語が第一言語でないマルチランゲージの児童・生徒や、特別支援学級(IEP)の児童・生徒に、週5日の対面授業を優先的に提供するという動きもあるようだ。

アンドリュー・クオモ知事が学校閉鎖を急かす一方で、ニューヨーク市のビル・デブラジオ市長は一部の教員・保護者の反発を受け、閉鎖に消極的な姿勢を見せる。この双方の差異に振り回されているところが、少なからずあるだろう。

市庁舎前にて、「ジムに行けるのに学校に通えないのはなぜ?」と学校再開を訴える保護者(2020年11月)

 

立場ごとに異なる評価

リモート授業にはさまざまな弊害が付きまとう。子供を学校に送り出すことが前提の、特にエッセンシャルワーカーの家庭は、子供を預けて授業を受けさせるサービスが必要だ。家で子供が見られる親にとっても、これまで以上に子供を監督する必要が出てきた。また複数の子供を持つ家庭では、十分な数のパソコンや安定したネット回線を確保することが難しい。

一方、感染を懸念して登校を拒否する家庭も少なくない。郊外などに移住した家庭はそもそも登校できない。そして、リモート移行でいじめが減ったという好意的な見解もある。

教員側としては、全員が同じ空間にいない、あるいは児童・生徒同士が直接やり取りできない状況は、コミュニケーション能力の発達に影響を及ぼすと危ぐする人もいる。同時に、感染のリスクを負ってまで学校に出勤したくはないと考える人も、もちろんいる。

ただ、教員・保護者の多くが認めているのが、「子供の適応力が想像以上」であること。デジタル教材を使いこなし、登校時のマスク着用や、小まめな手洗いも順守している。デジタルネーティブである彼らが、この激動の青春をどう受け止めるのかは興味深い。


ここでおさらい!
学校教育仕組み

プリK(Pre-Kindergarten)

3〜5歳向けの幼児教育。日本での幼稚園・保育園相当。入学できる期間が決まっているが、市内では基本的に、全ての希望家庭がプリK教育を受けられることになっている。

キンダー(Kindergarten)

5〜6歳。日本では小学1年生相当だが、米国では本格教育の準備期間とみなされる。

小学校(Elementary School)・中学校(Middle High School)・高校(High School)

6〜18歳。日本同様、6歳で入学すると「1年生」だが、中学校に進学しても学年カウントは続き、高校3年生が「12年生」になる。12月18日現在、プリKから5年生(=日本の小学6年生)までで、対面授業が再開されている。

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