巻頭特集

新学期がはじまる

新型コロナウイルスを意識しながらの登校再開か、遠隔授業か…今年は特に、子育てで悩む保護者も多いだろう。この秋学期を有意義にするには、どうすればいい? さまざまな立場の「教育者」に話を聞いた(取材・文/南あや)


「もしも」に備えた対策を練る

ニューヨーク育英学園(全日制部門)

「プライオリティー(優先事項)は安全です」

そう力説するのは、ニューヨーク育英学園ニューヨークキャンパス・フレンズアカデミーのディレクター、河野茂さん。同校はニュージャージー州イングルウッドクリフス(全日制、週末校など)、フォートリー(りんごラーニングセンター)、マンハッタン(フレンズアカデミーなど)、ポートワシントン(週末クラスなど)の計4地域で、多様な教育プログラムを提供している。

ニューヨーク近辺の新学期の対応は、各地域の教育局によって異なるが、イングルウッドクリフスの全日制クラスにおいては、キャンパス内での対面保育・授業が行われる予定だ。

ソーシャルディスタンスを保ちながらスイカ割りをした、サマーデイキャンプ

 

考えうる限りの対策を

感染を防ぐための再開環境は、当局の規制を下に、かなり慎重に決められている。まず、敷地には子供と職員以外は立ち入り禁止。マスクの常時着用はもちろん、職員はグローブも必要に応じて着用する。

教室の個々の机はアクリル板で仕切り、空気清浄機を導入。廊下につながるドアは開けたまま、換気扇を使って換気を促す。

「別々のクラスの子供が接触するのを防ぐため、トイレの時間はずらし、図書館は閉鎖します」と河野さん。校内各所にサニタイザーの設置も忘れない。幼児部のおやつは、先生が直接触れずに済む、個別梱包されたものに変更予定。

ただ、じっと一カ所に留まると運動不足になり、自然に触れる機会がないのが心配だ。そこで休憩時間はなるべく外に出て、ソーシャルディスタンスを保ちながら過ごすという。

保護者の不安と懸念

対面授業の再開については、ニュージャージーキャンパスは保護者間で意見が割れた。およそ95%の家庭が登校再開を選んだ一方、約5%は遠隔での出席継続を望んだ。遠隔の園児・児童のために、教室の後ろにカメラを設置して、保育・授業をストリーミング配信する予定だという。

通学送迎のシャトルバスは運行予定だというが、州のルールで乗車人数が制限されており、何割かは保護者が送迎する負担も承知してもらう必要がある。

「何より、いつまた完全遠隔に切り替わるか分からないという点を、保護者の皆さまに理解していただかなければ」と河野さん。「強引に学校を開いてもいいことはありません」

オンラインサマーキャンプの実施を経て、オンライン授業だからこそ使える教材やアプローチがあることを知ったという。同校は、対面と遠隔、どちらの方法でも「人間力」を培える教育を目指す。

9月1日現在の教育局ルール

【新学期の日程】

ニューヨーク市内の学校は当初9月10日(木)に対面授業を開始予定だったが、感染拡大を懸念した市の教員労働組合が反発し、ストライキを示唆。これを受けてデブラシオ市長は9月1日、対面授業の開始を21日(月)に延期するとの見解を示した。

【NYCの学校閉鎖の条件】

対面授業で、クラスの1人がコロナウイルス陽性と判断された場合、そのクラスは遠隔授業に。二つ以上のクラスで陽性者が確認されたら、全校で2週間の遠隔授業処置。

8 W. Bayview Ave.
Englewood Cliffs, NJ 07632
TEL: 201-947-4832
japaneseschool.org

日本の文部科学省の定める指導要領に基づいた、幼小一貫教育を行う。ニュージャージーキャンパスの幼児部・小学部共に、現在の定員は各クラス20人。

NYジャピオン 最新号

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。

Vol. 1271

冬に飲みたくなる、贈りたくなる ウイスキー魅力再発見

ウイスキーといえば、近年ジャパニーズウイスキーが世界で注目を集め、希少価値も上がっているようだ。ウイスキーには、シングルモルトや、ブレンデッド、グレーンなど種類によって味が異なり、銘柄ごとの個性を楽しめるのも魅力だ。そこで今回は、ニューヨークでウイスキーの魅力を再発見してみよう。