巻頭特集

熱々スープが飲みた~い!

世界のスープを食べ歩き

世界各地にはお国柄を反映した「郷土スープ」がある。中米、ヨーロッパ、アジア、中近東に伝わるスープが楽しめるお店を紹介しよう。


ジャマイカ
Fish Tea Soup(魚のスープ)

カリブ海に浮かぶ島国、ジャマイカに伝わる魚のスープ。フィッシュティー(魚茶)というだけあって、同国の代表的なスープである牛や鶏の足のスープと比べて味は薄く、具材はほとんど原型を残していないものが多い。アメリカ人が風邪をひいたときにチキンスープを飲むのと同様、フィッシュ・ティー・スープはジャマイカ人が体調の優れない時に飲む療養食でもある。その日手に入った魚をオクラ、激辛のスコッチ・ボネット・ペッパー、タイム、オールスパイス、野菜類などと一緒に煮込んで作る。

魚のうま味が凝縮。(小・5.85ドル、大・11.05ドル)

ニューヨーク市内にジャマイカ料理店は数多くあるが、フィッシュ・ティー・スープを出す店は珍しい。ちなみに西インド諸島出身の移民が多く住むイーストニューヨークのジャークチキン専門店、「ロイヤルジャーク」では、毎週金曜のみ提供している。

他にロティーやジャークカレーなどメニューも豊富。テイクアウトのみ

 

Royal Jerk
805 Van Siclen Ave.
Brooklyn, NY 11207
TEL: 718-708-6900
royaljerkfood.com


マレーシア
Bah Kut Teh(臓物の薬膳スープ)

マレーシアとシンガポールで20世紀初め頃から常食されている薬膳スープ。「中国・福建省の肉料理ニウパイ(牛排)が原型」「マレーシアの港湾労働者向けのスタミナ料理として生まれた」「福建省出身の漢方医が病弱な息子のために療養食として考案した」などと、その起源については諸説ある。材料は、豚の皮付きあばら肉と耳、足をガーリック、スターアニス、高麗ニンジン、シナモン、クローブ、コショウなどの香辛料。味は地域(広東、福建、巴生[クラン])によって異なり、広東風はコショウとニンニクで仕上げ香辛料は使わない。福建風は甘めの醤油で味付け。巴生風は、香辛料の他に油揚げや野菜が入るそうだ。

肉厚の干ししいたけ(どんこ)と生活習慣病の予防に効果があるとされるクコの実も入っている(15.50ドル)

チャイナタウンのマレーシア料理店「ニョニャ」のバクテーは、福建風。豚耳も豚足も箸で切れる柔らかさ。臓物特有の臭みもない。

看板メニューは海南鶏飯。支払いは現金のみ

Nyonya
199 Grand St.
TEL: 212-334-3669
ilovenyonya.com


ルーマニア
Ciorba de Perisoare(ミートボールのスープ)

バルカン半島、中・東欧、中央アジア、中近東、インドではシチューを「ショルバ」と呼ぶ。ルーマニアでのショルバは、野菜と肉が入った酸味のあるスープのこと。ペリソアレは、ルーマニア語でミートボールのことだ。ニンジンやジャガイモ、セロリベースのスープは、レモン汁と小麦の皮を発酵させた「ボルス」、ザワークラウトの汁、トマトペーストなどを加えて酸っぱく味付けし、豚ひき肉に米、卵、玉ネギ、パセリ、塩とコショウを混ぜてよく練り、一口大のだんご状にしたものを入れて煮込む。本場ルーマニアではこれにセリ科の香草ラベージを加える。

一緒に出てくるサワークリームをトッピングすれば、まろやかな味に(8ドル)

サニーサイドのルーマニア料理専門店、「ルーマニアガーデン」のショルバ・デ・ペリソアレは、本場の味を忠実に再現。大きめのミートボールがゴロゴロ入って食べ応えたっぷり。店で一番人気のスープだそうだ。

サニーサイドで20年以上続く有名店

Romanian Garden
43-06 43rd Ave.
Queens, NY 11104
TEL: 718-786-7894
romaniangarden.nyc


イエメン
Saltah(肉と野菜のシチュー)

アラビア半島南端の国、イエメンの伝統料理。13世紀末から始まったオスマン帝国時代にトルコ人からもたらされた。富裕層やモスクから寄付された残飯をフェヌグリーク(地中海沿岸地方原産の香辛料をふやかしてとろろ状にしたもの)と一緒に石鍋で煮込んだのが始まり。ベースはアラビア語で「マラーク」と呼ばれるラムまたはチキンブロス。フェヌグリーク、サハウィーク(青または赤唐辛子、コリアンダー、ガーリック、カルダモン、クミンなどをすりつぶしたもの)、米、スクランブルエッグ、野菜を加えて食べる。

フラットブレッド、ピリ辛味のローストチキン、サラダが付いたチキンサルタ(17.95ドル)

ダウンタウンブルックリンの「イエメンカフェ」のサルタは、石鍋にグツグツと煮立った状態で登場。具材はオクラ、スクワッシュやジャガイモなどの根菜類が中心。適度な粘りと痺れる辛さはクセになる味。凍える冬にイチオシだ。

1986年創業、アメリカ初のイエメン料理店

Yemen Cafe
176 Atlantic Ave.
Brooklyn, NY 11201
TEL: 718-834-9533
yemencafe.com

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1245

春到来! 週末のプチお出かけ 〜ハドソン川流域・キャッツキル山麓編〜

桜の花も満開を迎え春の行楽シーズンがやって来た。ニューヨーク市内から日帰りできるハドソン川流域・キャッツキル山麓の人気のスポットを紹介しよう。

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。