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2月に向かってグッと寒くなってきたこの頃。こんな時は熱々スープで体も心もおいしく暖まりたいもの。今号は、料理の基本でもあり、食文化に深く根ざしたスープの魅力に迫る。(取材・文/加藤麻美)
食の歴史研究家で図書館司書のリン・オルバーが古今東西の文献を基に立ち上げたウェブサイト形式のアーカイブ、フードタイムラインなどによると、スープの歴史は料理と同じぐらい古いという。
現生人類が生まれた20万年前、人類は調理器具を持たず水などの液体を沸騰させるものがなかった。1万年前に人類は石焼きなどで調理する方法を学び、紀元前8000~8500年頃までには牧畜や耕作が始まった。やがて炭火や土器を使った調理方法が考案され、「焼く」以外に、煮炊きするなどの調理方法が誕生。これが現在のスープ(シチューやおかゆなども含む)の原型となり、その土地の食材や人々の味覚に合わせて進化してきた。18世紀パリの大衆食堂で最初に出されたのもコンソメなどのスープ料理だった。
「スープ」という言葉に
込められた意味は?
「スープ」の語源は「浸す」という意味。古典期以降のラテン語の動詞suppare soak’にさかのぼる。英語のSupやSupperと同じ先史時代のドイツ語の語源「Sup─」から借用されたもので、そこからSuppaという名詞が生まれ、古フランス語のSoupeに受け継がれた。Soupeは「液体に浸したパンのかけら」のことで、転じて「パンにかけたスープ」を意味し、英語になった17世紀においては後者のことを指した。
スープは当時、肉料理や野菜料理と一緒に出され、パンやトースト(クルトンの原型)にかけて食べるのが一般的だった。その後、液体状のスープをそのまま提供することが流行し始め、18世紀初頭には現在のように前菜として登場するようになったという。
地域ごとに特徴ある
スープが発展
移民の国アメリカでは、各地域の特産物と住民の出身国に影響を受けた特色のあるスープ(シチューを含む)が発展した。
メーン州にはロブスタービスクが、マサチューセッツ州には有名なニューイングランド・クラム・チャウダーがある。ニューヨーク州はもちろん、マンハッタン・クラム・チャウダーとミネストローネスープ。ブルークラブが特産のメリーランド州はクラブスープ、キューバ系移民が多いフロリダ州はブラック・ビーン・スープ、アフリカから連れて来られた奴隷、フランス系移民、西インド諸島の文化がクロスオーバーして誕生したルイジアナ州のガンボ、メキシコと国境を接するニューメキシコやテキサス州のチリ、ロシア系移民が多いモンタナ州のビーツスープ、ドイツ系移民が多いノースダコタ州のポテト・ダンプリング・スープなど枚挙にいとまがない。
世界に目を向けてみると、なんと約250種類以上のスープのレシピがあるという。代表的なスープを国別にまとめた(左の表を参照)。
時代や世代を超えて
愛される理由
大鍋にさまざまな食材を放り込み煮込んだスープやシチューは、スローフードの代表格。滋養に富み、胃に優しく消化しやすいことから赤ちゃんからお年寄り、病人まで、誰にでも愛される万能食だ。
固形の食べ物に比べてカロリーが低く、胃拡張にならないことから肥満防止にも効果的。加えて1つの鍋で済み、冷凍野菜など工夫次第でどんな材料でも使え、調理方法も盛り付けも後片付けも簡単、経済的ときている。忙しい現代生活に最適の食べ物なのだ。
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