歴史的名盤レコードを掘る! 今週の1枚

第7回 今週のレコード:CAT 鈴木 弘

今、米国の若い世代の間で1970年代後半から80年代にかけて日本で大流行したシティーポップを中心に熱狂的なファンが増えている。ブルックリン区に店を構え、レアものを揃えるフェイスレコードの間宮さんが選ぶ名曲を通して、その魅力を探ってみたい。


世界で評価されている和ジャズから大人気の一枚

同店で、日本のジャズ(通称:和ジャズ)系でよく在庫を聞かれるのは、福井良の『シーナリー』、稲垣次郎の『ファンキースタッフ』、そして鈴木弘の『キャット』。どれもSpotifyで聴けるが、レコードは高額だ。その中でも『キャット』は、オリジナルの価格は帯なしで18万円ほど、写真の帯があれば40万円を超える。価格の半分は帯という驚きである。約8年ほど前、著者は渡米当時に帯なし盤を所有していた。昔に1万円くらいで日本で購入したもので、当時は貧乏留学生で金欠のためにイーストビレッジ地区の某レコード店に泣く泣く350ドルで売った(レコードコレクターあるある笑)。それが、現在では4倍ほどの価格になる。在庫を聞かれるたびに苦い経験を思い出す(笑)。USスピリチュアルジャズを感じさせつつ、日本の美しさ、侘び寂びを感じさせる和ジャズの名盤である。もう1万円で買える日は永遠に来ないであろう…。


フェイスレコード

2018年にウィリアムズバーグ地区にオープン(営業は木曜日から日曜日の午後1時〜7時)。シティーポップをはじめ、山下達郎、竹内まりや、坂本龍一、YMOなどに代表される日本の音楽を中心に、ヒップホップや日本盤のジャズロックなども豊富に取り扱う。在庫数は8000枚、新入荷は毎週金曜日。レコードの買い取りも受け付け中。1994年に東京で創業し、現在は日本全国に全6店舗展開中。


間宮祐一

横浜市出身。脱サラし、2015年からニューヨーク在住。18年に同店をオープン。自身も筋金入りのレコードコレクター。また、ヒップホップの楽曲制作も行い、2020年に客演に『Freddie Gibbs』(グラミー賞ノミネーター)を迎えたシングルレコードを発表。座右の銘は「NO VINYL NO LIFE」。

               

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