ハートに刺さるニュース解説

バイデン氏勝利に導いたBLM運動 鍵を握ったのは若者層と黒人層

11月7日午前11時25分、テレビが「次期大統領ジョー・バイデン」という画面を映した。民主党候補バイデン前副大統領の当確を示すチェックマークが付いた。バイデン氏が共和党のドナルド・トランプ大統領を選挙人の獲得数で負かした瞬間だ。

ニューヨークの様子は一変した。ユニオンスクエア、グリニッジビレッジ、5番街が人で溢れ、まるで戦争でも終わったかのような解放感だ。新型コロナウイルスの感染拡大による3月の自宅待機から、こんなに多くの市民を見たのは初めてだ。ニューヨークは、祝祭状況となった。

票開票は接戦かつ長期戦

とはいえ、接戦ではあった。票開票前の2日の世論調査では、バイデン氏の支持率が51.1%、トランプ氏が44.2%とバイデン氏が6.9%リードし、大勝してもおかしくなかったデータといえる(リアルクリアポリティクス=RCPによる主要調査機関の平均)。しかし、8日現在の開票状況で、バイデン氏の得票率が50.5%、トランプ氏が47.7%と、その差がわずか2.8ポイント(米紙ニューヨーク・タイムズ)と縮小していた。

バイデン勝利を祝うマクナスさん

バイデン勝利に導いた
BLM運動

バイデン氏を勝たせた理由は二つある。まず、ミレニアル(1981〜96年生まれ)とZ世代(97年以降生まれ)という若者層の投票率が上昇したことだ。

第二に、特にペンシルベニア州など激戦州都市部のバイデン派黒人層が、地方のトランプ派白人層を上回って投票した。つまり、鍵を握ったのは若者層と黒人層。そしてこの二つの層を結び付けたのが、今年5月末に始まったブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大切だ)だった。

ハーレム在住で、ジャーナリスト・ミレニアル / Z世代評論家シェリーめぐみ氏は、こう指摘する。

「5月下旬に起きたBLMが若者に及ぼした影響は大きかったです。今まで一人で見ていたSNSの情報を見て、居ても立ってもいられず、新型コロナ感染拡大の最中に、彼らが外に出てデモに初めて参加し、体を張って思いをシェアすることができました。それによって、自分たちが行動することが希望につながるというのを確信しました。それが投票するという今回の行動につながったのだと思います」

筆者も5〜6月に若者が圧倒的多数のBLMの活動を取材し、「VOTE!」と訴えている姿を見て、BLMは大統領選挙に必ずや影響を及ぼすと強く感じた。それが現実となった。

関連記事

               

バックナンバー

Vol. 1321

サンクスギビング特集 ニューヨーカーに愛される手作りパイ 〜ケーバーズの舞台裏〜

ウエストビレッジの一角に、どこかノスタルジックな空気をまとったパイ専門店「ケーバーズ」がある。ロングアイランド地区で生まれたこのブランドは、“農場から都会へ” をテーマに、素朴な焼き菓子をニューヨークの街へ届けている。季節のパイはもちろんビスケットサンドなど魅力は尽きない。今回は同店のミシェルさんに、人気の理由やホリデーシーズンの舞台裏について話を聞いた。

Vol. 1320

どんどん変わる、ますます面白い ゴワナス探訪

ニューヨークの最旬スポットとして  ニューファミリーやレストラン業界、不動産開発業者から熱い視線が注がれるブルックリン西部の中心地ゴワナス。今週はゴワナス入門編として、その楽しみ方を紹介する。

Vol. 1319

その歴史から最新スポットまで ニューヨークドラァグクイーン

華やかで、挑発的で、どこまでも自由。ドラァグクイーンは、衣装とメーク、そしてパフォーマンスを通じて、性の境界を軽やかに越え、自らの存在を鮮やかに表現する。そしてニューヨークは、世界でも屈指のドラァグカルチャーの都。本特集では、1980〜90年代のアンダーグラウンドシーンの歴史から、最新のショーやクラブまでを紹介し、変化し続けるその魅力に迫る。

Vol. 1318

私たち、こんなことやってます!

患者さまの歯を一生涯守り抜く、高品質で長持ちする歯科医療を目指すDental Serenity of Manhattanのチャン院長と、人と人とのつながりを大切にし、お客様に寄り添ったサポートを心がけるCOMPASS不動産エージェントの石崎さんに話を聞きました。