巻頭特集

今だからこそウキウキ!大人の社会科見学

観光名所や大企業の本社が集まるニューヨークは、世界を代表する街。ビジターに一般公開をして、いわゆる「大人の社会科見学」を提供する企業や工場が多いのをご存知だろうか? 大人になった今だからこそ知りたい、大人の社会科見学で、ニューヨークをもっと知ろう! (取材・文=菅礼子)



社会科見学はNYを知ることに通ず

IT産業のお膝元の西海岸に対し、ニューヨークは幅広い産業がひしめき合う、活気あふれる大都市だ。それだけに、今回フォーカスする企業や政府機関、非営利団体などの会社・工場見学も、多様で面白い。

社会科見学の魅力は、単にオフィスや工場に足を運び、現在の姿やあり方を知るだけでなく、ニューヨークやアメリカの深い歴史と対峙(たいじ)することにあるだろう。

高級ピアノブランド「スタインウェイ&サンズ」のアストリア工場は、約100年前にマンハッタンからアストリアに移転したという。企業城下町として、従業員のために教会や学校、病院が造られ、「スタインウェー・ビレッジ」が形成さたという歴史がある。同企業は今でも、同じ工場から世界に向けて最高級のピアノを届け続けている。

また、ブルックリンで催行されているビールツアーも同様だ。1800年代初頭には、米国全体のビールシェア約10%を占めていたという同区。しかしながら、1920年から突入した禁酒法時代により、産業の終了を余儀なくされたという歴史なども、ツアーの中で語られるから面白い(いずれのツアーも、詳細は5ページ参照)。

新旧が交差する新名所は
NYならではの魅力

かつてのアメリカ海軍の造船施設を再開発している「ブルックリン・ネイビーヤード」は、1800年代前半の建物をモダンにリノベーションした上で、屋上庭園を設けたり、ソーラーパネルによる発電や、雨水の浄化システムを建物内で行ったりと、エコシステムの導入に力を入れている。

広大な敷地の中には、ブラウンストーンのウイスキー蒸留所も

 

敷地内の乾ドック。有名な戦艦「ミズーリ」や「アリゾナ」もここから出航した


一般向けツアーでは、古いものを現代風に変換し、これからのニューヨークを支える中小企業を支援するという、同施設の働きを学ぶことができる。

スタートアップ支援の一環として新興企業を集め、当時のネイビーヤードのウェアハウス(倉庫)をシェアオフィスに充てているのも、その一環だ。

かつて、ブルックリンは食品製造業の一大拠点でもあった。この名残りからか、現在も敷地内の一角にはビールやウイスキーが製造されている他、老舗デリ「ラス&ドーターズ」の工場も、今年ネイビーヤードに移転してきた。歴史的な建物を今に蘇らせ、新たな新名所として一般公開しているのは、今のニューヨークでは見逃せない動きだ。

 

「ラス&ドーターズ」は、工場をマンハッタンから全てネイビーヤードへ移転

 

Brooklyn Navy Yard

141 Flushing Ave., Unit 801

Brooklyn, NY 11205
brooklynnavyyard.org
一般ツアーは通常、土・日曜日に催行。金曜もあり。大人20〜30ドル

 

NYジャピオン 最新号

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。

Vol. 1271

冬に飲みたくなる、贈りたくなる ウイスキー魅力再発見

ウイスキーといえば、近年ジャパニーズウイスキーが世界で注目を集め、希少価値も上がっているようだ。ウイスキーには、シングルモルトや、ブレンデッド、グレーンなど種類によって味が異なり、銘柄ごとの個性を楽しめるのも魅力だ。そこで今回は、ニューヨークでウイスキーの魅力を再発見してみよう。