巻頭特集

夏だから挑戦!男のソロキャンプ

YouTubeなどでも今話題なのがソロキャンプ。今号は、その魅力とソロキャンプに最適なニューヨーク近郊のスポットを紹介する。(取材・文/加藤麻美)


ソロキャンプの神髄は、自問自答を繰り返すこと

都会の喧騒(けんそう)や日常生活の煩わしさを離れ、大自然の中に一人身を任せるのがソロキャンプ。ソロキャンプ歴40年以上という、アーティストの山田雄司さんにその魅力と心得を聞いた。
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ソロキャンプの魅力は?
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一人でキャンプに行ったら、何をやるにしても自問自答しなければならない。それがまず魅力というか、僕にとっての神髄です。

普段の生活では他人と相談して、その答えを聞いてから判断しますよね。ソロキャンプは、それとは全く別の世界なんです。次は何をすべきかを自分に問い、そこから行動に移す。それがキャンプの最初から最後までずっと続きます。現地に向かうまでのプロセス、テントの設営、飯(メシ)はどうするか、何を楽しむか、何を見るか、どこへ行くか……。全て自分一人で考えて行動する。どんなハプニングが起きても自分だけで判断して対処しなければならないわけです。

例えば、「雲が向こうからやって来たな。湿気が出てきた。さぁ雨が降るぞ。今のままではテントがびしょ濡れになるからタープ(雨よけ)を張ろう」とか、「今のうちにメシを作って、テントの中に入れておこう」とかね。雨でテントがびしょびしょになって干す時間がないときも、どうやって持って帰るかなど、一人で全て計算していかなければならない。厄介だけどそこが面白さでもある。そしてそれを経験することによって、帰って来たときに頭の中が少しスッキリしているんです。この感覚はソロキャンプを体験しないとわからないと思います。

僕は、ソロキャンプを毎年やらないと「リセット」ができなくなるんです。自然を楽しみたいとか、孤独になりたいとか、最初の動機はなんでもいいんです。でも1回体験すると、今言ったようなことが魅力になって、ハマっちゃうと思いますよ(笑)。

2つ目は、一人ぼっちで空をじっくり観察できること。どんなキャンプ場に行っても空は広くて、それをただひたすら見てしまう本能が僕らにはある。都会と違って星もきれいです。こんなきれいな星を見ていると、人間は夜空をもっとたくさん見なければいけないんじゃないかって思えてくる。鳥のさえずりで朝の訪れを知り、夕方にな ると虫が鳴いて夜の訪れを教えてくれる。哺乳類が普通に生きて感じてきたことを「このへんでそろそろ思い出してみようよ」って教えられるんです。僕はそうやって確認していかないと、「自分は何者なのか、何のために生まれてきたのか」、不安になるんです。

3つ目は「一人たき火」ですね。炎を見ることで人間がどれだけ癒やされるか、再確認させてくれます。
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キャンプ場での心得は?
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規則を守ることです。州運営のキャンプ場の規則はインターネットに出ていますので、事前に読んでおいてください。特に気を付けてほしいのは、騒音と食料の管理・残飯処理です。クワイエットアワー(午後10時から午前7時まで)には、一切音を出さないようにしてください。

また、野生動物に「ここに食べ物がある」という情報を絶対に与えてはいけません。車のトランクなどがなければ木の間にロープを張ってぶら下げましょう。残飯は匂いが外に漏れないようにして指定の場所に捨てること。捨てる場所がなかったら、必ず持ち帰ってください。

 

 

山田雄司さん

音楽家、アーティスト。
小学4年生からソロキャンプを始める。
1985年の来米後は、山や海で木の枝や砂、石などを採集し、キャンバスに貼り付けて作品を制作。
自然の中のさまざまな音を録音し、それらを取り込んで作曲しライブなどで演奏している。
次のプロジェクトはアイスランドでのキャンプ。
Eメール: toriman@gmail.com


必ず守ろう!

ニューヨーク州運営のキャンプ場・規則

宿泊やたき火、基本的態度などについて細かく定められている。違反した場合は退去させられることもあり、使用料も返金されない。下記はその一例。

■花火の持ち込み禁止

■指定のゲームエリア以外での運動、その他の騒々しい活動は禁止

■犬をキャンプ場に連れて行く場合は、有効な狂犬病予防接種の証明書の提出が必要

■21歳以上の者が飲酒する場合は、要求に応じて年齢を証明する身分証明書(写真付き)の提示が必要

詳細は下記ウェブサイトをチェック!
dec.ny.gov/outdoor/7817.html

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