ドクターベルモンテが教えるウェルネス道

2足歩行の人間だからこそ 背骨は「S字」カーブ必須

今月のテーマ:首から背骨、腰までのS字カーブ(Vol. 6)

不調が起きやすい今だからこそ、さまざまな体のメンテナンスが大切だ。健康でいるための生活のポイントを、カイロプラクターのドクターベルモンテが教えてくれる連載。


いよいよ本格的な夏ですね。皆さんはいかがお過ごしですか。前回はこのコラムで頭痛を取り上げ、「ストレートネック」が非常にマズイという話をしました。今回は、首も含め背骨が緩やかにカーブしていることの大切さについて一緒に考えてみましょう。

背骨の「S字」カーブは、外部からの衝撃を吸収し、体を守っている。「赤ちゃんのハイハイはとても大事な第一歩。この頃からS字カーブが本格的に形成されます」とベルモンテ先生

ストレートネックとは

仕事や勉強で、コンピューター画面に向かって首を突き出すような姿勢を長時間続けていると、頚椎(けいつい=脊柱の首の部分)の緩やかなカーブがなくなり、「ストレートネック」になります。首の骨は適度にカーブすることで、首にかかる衝撃を吸収し、重い頭を柔らかく支えています。ストレートネックになると、そのショック吸収力が減退し、首の骨周りの神経や筋肉に負担がかかり、頭痛の原因になることは前回お話ししました。

人間の脊柱は本来、首から胸部、腰まで「S字」状に緩やかにカーブしています。生まれた時は「C」カーブで、成長と共に「S字」カーブに変わってきます。

赤ちゃんがお母さんの中にいる胎児期は、体全体を丸めていますから、背骨は「C」カーブですね。生まれてからしばらくはそのままですが、首が据わる時期になると首の骨の部分に「C」と逆のカーブができ始め、なんとなく「S字」っぽくなります。その後ハイハイするようになると、首をぐっと持ち上げて頭を上げますが、実はこれがとても大事な動きで、これによって首に〝しなり〟ができます。1歳前後で立って歩くようになると、首と背骨の「S字」カーブの出来上がり。「S字」カーブは「生理的湾曲」と言われます。

「S字」カーブの役割

背骨が緩やかな「S字」にカーブしていると、背骨周りの筋肉がリラックスした状態で、外部からの衝撃も吸収してくれます。ところが成長過程で、頭を前に突き出すような姿勢を続けていると、大人になる頃には首のカーブも背骨のカーブもなくなり、真っすぐになってしまうことがあります。ひどい時は「C」カーブに逆戻りしてしまうこともあります。

さて皆さん、日常を振り返ってみてください。一日中椅子に座り、首を前に突き出してコンピューター画面をのぞき込み、背中と腰を「C」型に曲げていませんか? 週末は一日中、背を丸めてカウチに座ってテレビを見ていませんか? 立っている時も、腰とお腹を前に突き出すようにして、背中を「C」型に曲げていませんか?

そういう日常を続けていると、背骨のカーブがなくなります。そうすると背骨周りの筋肉に負担がかかるので、筋肉が凝り、神経を圧迫して腰痛になります。

ちなみに、ヒトに近いとはいえゴリラや猿は足と両手を使う4足歩行なので、「S字」カーブでなくても平気です。人間が「S字」カーブを必要とするのは、2足歩行だからです。人間はスイカほどの大きさの重い頭を体のてっぺんに置いて、2本脚で立って生活しています。走ったり歩いたりしたときに、地面から背骨を通って頭(脳)に届く衝撃は、じっとしている時の数倍です。そしてその衝撃を、柔らかく湾曲した背骨は吸収することができますが、真っすぐだとまともに頭(脳)が衝撃を食らってしまうのです。湾曲があることで、真っすぐな状態に比べて約10倍の衝撃に耐えられると言われています。

さらにいえば、背骨が緩やかな「S字」にカーブしていると、内臓が正しい位置に収まっているということ。心臓、肺、肝臓と胃の一部は、胸椎と肋骨、胸骨で守られています。背骨が「S字」カーブを描いているときは、これらが正しい位置にあり、しっかり臓器としての役割を果たし、腹部にある腸も圧迫されずに済むのです。

 

 

 

 

ジョン・J・ベルモンテ 先生
John J. Belmonte, DC

E. 53 Wellness院長。
カイロプラクター(Doctor of Chiropractic)。
全米カイロプラクティック協会会員、ゴルフPGAツアー・スポーツ医学チーム所属。
アスリートのけがの治療、妊娠中の痛みの緩和、成長期の子供のカイロ治療も手掛ける。

 

E. 53 Wellness
211 E. 53rd St./TEL: 212-980-4211
e53wellnessnyc.com


今月の教訓!

「目指せ、S字カーブ!」

姿見の前で、体の横が映るように立ち、背中の「S字」カーブがあるか、自分で見てみましょう。「ある!」と思って安心しないように。最近の仕事用の椅子は、背中や腰をうまく支えるようにデザインされたものも多いですし、普通の椅子でも、ちょっとした小道具(背中の腰の部分と椅子の間に置く筒状のクッションとか)を活用することで、背骨のカーブをサポートできます。歩くときも前屈みにならないよう、体を起こし、前をしっかり見ましょう。

リクエスト募集中▶ドクターベルモンテへの質問や取り上げてほしいテーマについてはeditor@nyjapion.comまで!

 

               

バックナンバー

Vol. 1318

私たち、こんなことやってます!

患者さまの歯を一生涯守り抜く、高品質で長持ちする歯科医療を目指すDental Serenity of Manhattanのチャン院長と、人と人とのつながりを大切にし、お客様に寄り添ったサポートを心がけるCOMPASS不動産エージェントの石崎さんに話を聞きました。

Vol. 1317

ソーバーオクトーバー 一カ月の休肝がもたらす静かな変化

お酒をやめることは、意志の強さの証しではなく、自分の調子を取り戻すためのセルフケアの一つ。世界中で広がる「ソーバーオクトーバー(禁酒月間)」は、心身のバランスを見つめ直す、穏やかな一カ月の習慣。飲まないことで見えてくる「自分」を、少しの勇気と共に体験してみませんか。

Vol. 1316

知りたい、見たい、感じたい 幽霊都市ニューヨーク

ハロウィーンまで残すところ3週間。この時期なぜか気になるのが幽霊や怪奇スポットだ。アメリカ有数の「幽霊都市」ニューヨークにも背筋がゾッとする逸話が数え切れないほど残っている。こよいはその一部をご紹介。

Vol. 1315

ニューヨークの秋 最旬・案内

ニューヨークに秋が訪れた。木々が色づきはじめるこの季節は、本と静かに向き合うのにぴったり。第一線で活躍する作家や編集者の言葉を手がかりに、この街で読書をする愉しさを探ってみたい。