

ニューヨーク州およびニュージャージー州弁護士。ニューヨーク大学、ホフストラ大学ロースクール卒業。離婚、家庭法及び移民法が専門。日本人クライアントも多い。離婚では裁判にせず、話し合いで早期解決するように努め、その実績も豊富。
日本で言われるところの「パワハラ」と同様の言葉は、米国にもあるのか。似たような被害にあった場合、訴えることは可能なのかを聞きました。
和製英語であるパワーハラスメント(以下パワハラ)と似たような言葉や概念は、米国にもありますか?
社会的に優位に立つ人が、その地位や権力を利用して、下位の人をいじめる、嫌がらせを行うというものですね。会社などで、本来の職務を逸脱した形で、上司が部下をいじめるような場合を指します。これが性的な嫌がらせであれば、セクハラになりますが、パワハラは性別に関係なく起こりうるものとされています。このような意味での「パワーハラスメント」という言葉や概念は、和製英語が逆輸入されたものかもしれませんが、米国にもあります。ただし、法律的な定義としてはありません。
職場での嫌がらせは、米国でもあるのでは? それを訴えるための法律はないのですか?
そのような問題があった場合は、民事法の不法行為法(Tort law)に依拠して訴えることが可能かもしれません。この法律は、連邦レベルではなく、各州が制定している法律で、ある人の行為が、意図的か意図的でないかにかかわらず、他者の財産・人格・身体の自由などを、正当な理由なく侵害した場合に、行為者に対して損害賠償などの責任を負わせるものです。名誉棄損や誹謗(ひぼう)中傷、精神的苦痛も、不法行為法の対象となります。
あるいは、その問題を嫌がらせとしてではなく、差別としてとらえ、それが、人種、肌の色・宗教・性・出身国のどれに属する差別であるのかを特定して、訴える必要があるかもしれません。この場合は、「タイトル7(公民権法第7編)」に依拠することになります。
上司がひんぱんに、「イヤなら辞めればいい、おまえの代わりはいくらでもいる、首にだってできる」などと言います。
これは問題です。ただ、米国の会社には、パワハラに関する就業規則はありませんし、裁判に訴えたとしても、勝つのは難しいと思います。まず、上司が本当にそのようなことを日常的に言っていたのか、そのような言動を行う人物だという評判はあるのか、といった証明をする必要があります。しかし、たとえそれができても、上司の側は、そのようなことを言った、無数の「正当な」理由を挙げることができるのです。
レストランのキッチンで働いています。先輩が明らかに私にだけ細かいミスを指摘し、毎日罵声を浴びせ、物を投げつけるなどしてきます。
裁判に訴えるのは難しいでしょう。まず、キッチンの環境とは、罵声が飛び交うものという基本的な認識があります。さらにその先輩は、後輩の仕事がスローだ、ミスが多い、といった多くの理由をあげて、行為の正当性を主張することができます。ただし、もしも、その先輩が物を投げつけたりしたことを証言する人がいたり、医者の診断により、レストランで働き始めてから健康上の被害が見られ、それが仕事のストレスのせいであるとされた場合は、訴えることも可能かもしれませんが、難しいケースだと思います。
(おことわり)
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