

NY州認定弁護士。幼少時から20年以上にわたり神戸に住む。オーストラリア、マクエアリ大学法科大学院卒。日米両国の大学で法科の専任講師を勤めた経験もある。主に、家族法、移民法、傷害、軽犯罪を専門とし、法廷経験豊富。2002年、妻のスザンヌ・ウエイン弁護士と法律事務所を設立。
医療過誤訴訟とはどのようなものなのでしょう。今週から、医療過誤訴訟の具体例について伺います。
子供のガン治療に対する訴訟の結果、和解が成立したケースについて、概略をご説明ください。
本人が特定されないよう、事実を少し変えて概要を説明します。
7歳の男の子が膀胱ガンにかかり、膀胱の全摘出手術を受けました。そのため膀胱を失い、この男の子はおへそのところに開けた穴から、一生涯、カテーテルを使って自分で尿を排出しなければならなくなりました。母親の訴えは、膀胱ガンは早期発見していれば容易に治療できたはずなのに、医師の怠慢で、子供の病名を特定するまでに8カ月もかかったため、息子が膀胱を失うことになったというものでした。
子供がよく尿を漏らすのを心配した母親が電話で外科医に相談し、小児科医に尿検査と尿培養をしてもらいましたが、結果は陰性でした。それでも納得できない母親は2度、医師に電話をしましたが、医師はこれは病気のせいではなく単なる子供のおもらしだとして、再検査をしようとしなかったと訴えています。さらに、心配した母親は、自分の検診の時に子供を診てもらおうとしましたが、これも拒否されたと言っています。医師が超音波検査さえしてくれていれば、膀胱の腫瘍は見つかっていたというのが被害者側の主張です。
一方、医師側は、母親が病院に電話をしてきたという記録はなく、それを証明できないので、医師の怠慢で子供の診察が遅れたとは言えないと反論し、子供の診察を拒否した事実もないと否定しました。さらに、母親は子供の尿検査の後、すぐに医師に相談しなかったことに責任を感じており、自分の落ち度を償うために外科医を訴えている、また、腫瘍は膀胱のベースの部分にできていたので、いずれにしても膀胱の全摘出が必要だったことは疑いなく、母親が早く放射線治療を受けていれば、腫瘍を完全に治療することができたと考えているのは憶測に過ぎないと反論しました。
このケースでは、最終的にこの男の子に88万7000ドル支払われることで和解が成立しました。
医療過誤の被害を最小限に抑えるために、この事例からできるアドバイスはありますか。
裁判では記録がすべてといっても過言ではありません。このケースで、母親が電話でも訴えたという証拠がないと反論されています。電話ではなく、ファクスで子供の症状を訴えていれば記録として残すことができ、こうした反論は防ぐことができたでしょう。
(おことわり)
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