巻頭特集

徹底研究!サマーキャンプ2023

お子さんを抱える家庭にとっては、毎年この時期がサマーキャンプを決める大事なタイミング。日本への一時帰国の計画のあるなし、市内の日帰りキャンプにするか? 山間部のお泊まりキャンプにするか? お財布との相談も悩ましい。約2ヶ月に及ぶアメリカの長い夏休みを子供達がいかに有効に過ごすか? キャンプ選びのヒントになる情報を集めてみた。(文・取材/中村英雄)


NYに居ながらにして日本を
体験するシティキャンプ

都会型の日帰りキャンプの中には様々なアクティビティを提供する団体があるが、夏休みの機会に日本の文化習慣や日本語を思う存分体感できるユニークなキャンプがある。

ブルックリン区のクリントン・アベニューに活動拠点を構える日本語学校「あおぞらコミュニティー」のサマーキャンプは10年前に発足した。

毎年7月から8月にかけて6週間、月曜から金曜まで週5日開催される。幼児部は3〜5歳が対象の「あおぞらプリスクール」、小学生部門が6歳〜9歳が対象の「あおぞらアカデミー」の2クラスあり、指導員の目が行き届くよう一日の参加児童を最大59人に制限している。モットーは「日本に行かなくても体験できる日本」。キャンプ内の公用語は9割日本語だそう。丁寧な指導が評判の日本語学習はもとより、衣食住全てにわたって日本の文化や習慣、そして価値観を学べるのが特徴だ。

「日本一周旅行キャンプ」にて。北海道について熱心にリサーチ中

幼児部は日本昔ばなしキャンプ」。1週間に一つずつ昔話を読みながら、関連する科学や道徳の話題にも触れる。例えばかぐや姫から月の不思議、浦島太郎から海の自然、笠地蔵から思いやり、と言った具合に。

手作りのトントン紙ずもうを楽しむ子供たち

一方、小学生部門は「日本一周旅行キャンプ」。九州、中国四国、近畿関東、中部…と週替わりで各地域の方言や食べ物の特徴を体感し、日本という国の多様性を知る。一般の補習・学習キャンプとは違って、あくまでも楽しむことが主眼。参加児童の多くは市内の現地校に通うため、成長するに従って日本に触れる機会が減る。「夏休みの間、毎日、日本語に囲まれる環境を作って、子供達に自然に日本を吸収してもらいたいのです」と語るのは同アカデミーの主任教師でカリキュラム開発担当の工藤賀代先生。「両親ともに日本人のお子さんもいれば国際結婚カップルのお子さんもいるし、両親ともにアメリカ人のお子さんもいます。みんなが日本語で会話し、遊び、楽しんでいますよ」いかにもブルックリンらしい光景だ。

近くには公園がいくつかあり水遊びや野外活動も充実

もちろん、教室でのアクティビティの他に野外活動も用意する。毎日、午前中は必ず、近所の公園に繰り出して、思いっきり体を動かす。さらに、このキャンプならではの魅力は、美味しい日本食の給食。メニューは、食の安全やアレルギー対策に気を配り、出汁まで自家製という。「食事も大事な日本文化です。和食の味に触れ、お箸の使い方や日本の食習慣を覚え、配膳や片付けもみんなで助け合って行う。その一切が、日本体験なのです」と言う工藤先生。国籍や人種の隔たりなく子供達が日本の良い部分を幼少期に体験すれば、将来のいいコミュニティ作りにも繋がる、そう先生は確信する。

 

工藤賀代先生
あおぞらアカデミー主任教師・カリキュラム
開発担当

日本の大学で教育学専攻。
教員免許取得。
渡米してアメリカの大学院でバイリンガル教育を専攻。
教育学修士。
ニューヨーク州の教員免許を取得してブルックリンの公立校PS147にて、Japanese Dual Language Program(JDLP)の立ち上げに携わる(2016〜21年)。
同プログラムは市の教育界で高く評価され、日本の総理大臣夫人の授業参観を2度受けている。
2021年から、あおぞらアカデミーの母体であるあおぞらコミュニティーで勤務。

 

 

あおぞらコミュニティー
535 Clinton Ave., 2nd Fl.
Brooklyn, NY 11238
Tel: 347-721-3521
aozoracommunity.org

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