巻頭特集

体に悪そぅ~でも食べたぁ~い!背徳の脂ギッシュグルメ

ダイエットの大敵と分かっていても、ときどき無性に食べたくなるのが脂っこい食物。今週は、高脂肪の食物が好まれる理由を紐解き、多民族都市ニューヨークを代表する「脂ギッシュ」グルメを紹介する。(文・取材/加藤麻美)


脂っこい食べ物は、なぜ美味しい?

人間を含むほとんどの哺乳類はほぼ例外なく、低脂肪より高脂肪の食物を好む。なぜ脂っこい食物を美味しく感じるのか、米国立衛生研究所(NIH)バイオテクノロジー情報センターの資料などをもとに紐解いていこう。

人間が脂肪を美味しいと感じる理由は大別して2つ。調理における脂肪の利用と生理学的要因だ。調理方法の多くは何らかの形で脂肪と塩を利用しているし、脂肪がなければ、数多くの作業が困難となる。脂肪は「クリーミー」「サクサク」「カリッ」などといった食感や口当たりに重要な役割を果たす他、風味や香りを良くする。脂肪が舌を覆うことで風味がより長く残り、味全体が向上する。他の栄養素よりゆっくり消化するため腹持ちも良い。脂っこい食事をした後、満腹感と幸福感に満たされるのはこのためだ。

脳に刺激を与え
快感を放出する脂肪

脳内の快感反応または嫌悪反応に関連する神経ペプチドおよび神経伝達物質は、基本的な味物質(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)が(舌の)味蕾(みもう)細胞の味受容体によって受け入れられた後に放出される。オリーブオイルやごま油など一部のものを除いて脂肪は無味無臭だが、最近の研究によると食べ物に含まれる脂肪(食餌性脂肪)、特に遊離脂肪酸は基本的な味物質と同様に味蕾細胞において化学的に知覚される可能性があること、さらに近年、舌周皮乳頭の長鎖脂肪酸トランスポーター(CD36/FAT)に受容された長鎖脂肪酸が、食餌性脂肪の味覚に極めて重要な役割を果たすことが示唆されたという。

研究者たちは、舌上で長鎖脂肪酸が認識され、脳内で神経ペプチドやβエンドルフィン、ドーパミンなどの神経伝達物質が放出されると仮説を立ており、これが食餌性脂肪の嗜好性のメカニズムの1つと推定されている。また、高脂肪の食事を好む人、そうでない人に分かれるのは、風味受容体や快感信号に遺伝が関係しているからではないかといわれている。

人類発達に不可欠だった
高脂肪高カロリーの食事

コンピュータの前に座りっぱなしで運動不足の現代人にとって高脂肪の食事は好ましくないが、狩猟や農耕、戦争などで体力を消耗した数百〜数千年前の人類にとって、手っ取り早くカロリーを摂取できる脂肪を多く含む食物は欠かせないものだった。さらに太古に遡れば、脂肪を食べることで「原人」を他の動物から区別し、明確に「人間」にしたのではないかと考えられている。

周知のように頭脳労働をしたり精神を集中させたりするには多大なエネルギーが必要で、その消費量は身体全体のエネルギー消費量の約20%(骨や筋肉が使用する量の約16倍)を占めるという。哺乳類の中で最も発達した脳を持つ人間が脳の発達を維持するためには高度のエネルギー消費を継続しなければならず、太古の人類は大量のカロリーを必要としていた。脂っこい食べ物への渇望は、生命活動のために脂肪を必要としていた何世代にもわたる人間の「DNA」が現代人に脈々と受け継がれている証なのである。


麻薬のような刺激
脂肪✖️炭水化

ラーメンやカレー、ピザ、ハンバーガーなど万人に愛される人気メニュー、すなわち脂肪と炭水化物を組み合わせた現代の加工食品は、自然に採餌された食品ではあり得ない方法で脳を刺激するとの研究結果が報告されている。これは実際に脳をスキャンした実験に基づいた結果だが、研究者らは「なぜ現代人の多くが肥満なのか、空腹でもないのに過食してしまうのか」を説明するのに役立つかもしれないと考えている。

イエール大学現代食事生理学研究センターのダナ・スモール氏によると、加工食品の脳への刺激は、人々が意識すらしていない形で行われており、「好き嫌い」は関係なく、人間は「特定の食べ物は抵抗しにくい」ことが判明したという。自然界には存在しない量と組み合わせで栄養素を提供している現代の食環境は、主に木本植物と生の動物の肉で構成されていた私たちの祖先の食生活とは対照的で(現代の)加工食品は、太古に進化した人間の脳の回路を騙し混乱させ、薬物を乱用したときと同じように脳の報酬機構を過剰に刺激する可能性があると述べている。(参考資料:NBC)

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