本場アメリカ&#
ニューヨークでは日本のカツサンドが今静かなブーム。数年前まではkatsuには“Japanese style cutlet”と英語の説明が必要だったが、今は堂々とkatsuで通じる。また「サンド」もsandwichではなくsandoと表記されることが多くなった。そこで今号では、ニューヨークで進化する、オリジナリティーあふれるカツサンドを紹介する。(取材・文/古村典子)
セレブシェフの新解釈
極上ロースカツサンド
エステラ
シンプルかつ斬新、そして何よりも素材のうま味を最大限に生かす調理法で、世界から注目されるセレブシェフ、イグナチオ・マットス。彼が手掛ける「エステラ」では金曜日のランチ時のみ極上の「ポークカツサンド」が食べられる。
厚切りのロースカツはしっとり柔らかく、さんしょう、からし、唐辛子など、複数のスパイスをきかせてあり、カラッと揚げた後はみそベースのソースに絡める。味付けとしてはいかにも和風なのだが、西洋の味を追求した日本のカツサンドとは逆方向からのアプローチの和テイストが新しい。
パンはニューヨークのジューイッシュグルメの老舗「ラス・アンド・ドーターズ」から仕入れたハッラーブレッドを使用。付け合わせに大根とりんごのピクルスを添えていただく。
食べられるチャンスは週に一度、3時間だけ。オバマ大統領も訪れたという名店でぜひ味わいたい限定カツサンドだ。
Estela
47 E. Houseton St.
(bet. Mott & Mulberry Sts.)
TEL: 212-219-7693
estelanyc.com
牛タンカツを
フレンチのツイストで
メゾン・ヤキ
市内でも珍しい「牛タンカツサンド」を提供するのは、ブルックリンのプロスペクトハイツにあるフレンチスタイルの焼き鳥ビストロ「メゾン・ヤキ」。オーナーシェフはファーム・トゥ・テーブルで知られる店「オルムステッド」のグレッグ・バクストロムで、彼の和食への愛が感じられる店だ。
さて、この牛タン、コリコリかと思いきや、しっとりと柔らかい食感で脂っこさがなく、しっかり揚がった衣と好相性。食パンはわずかにクランチがあるぐらいの焼き加減で、基本的にはソフトなので、「カリッ、ふわっ、そしてまたカリッ」が連続する食感のレイヤーを楽しめる。
上にかかった力強いとんかつソースを、中にぬってある優しい味のグリビッシュソース(フランス料理で使うマヨネーズ風の卵ソース)が和らげ、深みのある味わいに。とはいえ、全体的には味にかなりインパクトがあるので、赤ワインと一緒に楽しむのがおすすめ。
Maison Yaki
626 Vanderbilt Ave., Brooklyn, NY 11238
TEL: 718-552-2609
maisonyaki.com
イタリアンソーセージを
サクサクの衣で包んだ逸品
カタナ・キトゥン
「かわいさの後ろに刀のような鋭い爪を隠した子猫」、そんなイメージの店名がクールなカクテルバー「カタナ・キトゥン」では、「モルタデッラ・カツサンド」が食べられる。
イタリアのモルタデッラ・ソーセージの厚切りを使った、言ってみれば極厚のハムカツサンドだが、余計な味付けはせず、モルタデッラの特徴を巧みに生かした極上のB級グルメだ。ソーセージ自体の味と食感にレイヤーがあり、食べていて小気味良いリズム感と楽しさがある。もぐもぐしていると突然ブラックペッぺーの粒にあたってキーンとした辛さに刺されることも。まさに店名そのものだ。
しかし、このサンドで感じて欲しいのは衣のサクサク感。さらりと口中で崩れるデリケートな衣は、柔らかいソーセージとふかふかパンの食感と完璧にコーディネートされている。シンプルだが考え尽くされた逸品だ。
この他に同店のサンドのラインアップには「キャットフィッシュ・サンド」「ザ・テリヤキバーガー」「カタナ・キトゥン・グリルド・チーズ」があり、どれも創意工夫にあふれている。
Katana Kitten
531 Hudson St. (bet. 10th & Charles Sts. )
TEL: 212-243-3007
katanakitten.com
見ためは豪快、味は優しい
チキンカツサンド
ボンサイ・カキゴーリ
スモーガスバーグでも人気のかき氷専門店「ボンサイ・カキゴーリ」で提供するのは、見た目豪快、でも優しい味の「チキンカツサンド」。
日本のカツサンドへのオマージュにあふれた王道系で、特大のチキンカツを、焦げめがしっかりついた厚切りの耳付きトーストで挟んである。「おこげ部分」のカリカリ具合と中のふわっとした食感のコントラスト、そして食パンの甘さ、あっさりした味わいのチキンカツのバランスが良く、かなり大ぶりだが、千切りキャベツのクリスプ感も手伝い、一気に食べられる。
アクセントになっているのが千切りキャベツの中に隠れているたくあん。小口切りとみじん切りの中間ぐらいのサイズで、食べ進むうちにたくあんのうま味と塩気、スモーキーな香り、そしてコリッとした歯ごたえがたまらなくクセになり、次から次へとかぶりつきたくなる。千枚漬け風の大根ピクルスを添えていただく。
キャナルストリート・マーケットにも支店を持つが、「チキンカツサンド」はローワーイーストサイドの旗艦店だけ。
Bonsai Kakigori
100 Stanton St.
(bet. Ludlow & Orchard Sts.)
bonsaikakigori.com
ボリューム満点のカツサンドは
週末のブランチ限定メニュー
別荘
ノーホーの「別荘」では、日本の家庭料理をベースに、ほどよくニューヨークらしいツイストをきかせた食事と食空間を提供する。今年の5月にオープンしたタイムアウト・マーケットにも出店している人気店だ。
オーナーも料理長も女性とあり、繊細で小ぶりの料理が多いのかと思いきや、味付けも量も結構しっかり。素材や栄養のバランスが吟味されていて、そして何よりも遊び心があるメニューが豊富だ。
同店で週末のブランチ時だけ登場するのがボリューム満点の「トンカツサンドイッチ」。厚さ2センチもあろうかと思われるトンカツ、シャキシャキのレタス、そして大根のピクルスを耳付きのトーストで挟んだホームスタイルだ。分厚い肉は驚くほどしっとりと柔らかく、優しいみそ味のソースに日本人としては和んでしまう。基本のカツサンドに、スクランブルドエッグとベーコンをオプションでプラスすることもできる(写真は卵のみをプラスしたバージョン)。
とにかく大口を開けないとかめないほどのサイズなので、必ずおなかをすかせていくこと。
Bessou
5 Bleecker St.
(bet. Bowery & Lafayette St.)
bessou.nyc