巻頭特集

春はもうすぐ!今年のお花見、 どこ行く?

約3万4000本以上の観賞用桜が植えられ、開花時期によって街の風景が一変するのがニューヨーク。短い春を華麗に彩る桜と、おすすめのお花見スポットを紹介する。(文・取材/加藤麻美)


3種類の桜が楽しめるNYC

桜を見る楽しみは、つぼみから始まり、初花、見頃(ピーク)、そして散り際まであり、移り変わりごとにそれぞれの美しさがある。ものの哀れや花鳥風月を愛でる日本人にとって桜は、その歴史的・文化的背景も相俟って唯一無二の存在と言っても過言ではない。

ニューヨーク市では3月から5月にかけてさまざまな花が咲き乱れ、まさに春爛漫となる。とりわけ桜の木は、早咲きのオカメからソメイヨシノ、カンザンまで市内の至るところにあり、長期間私たちの目を楽しませてくれる。

オカメ(Prunus incamp)

ニューヨーク市の桜の開花時期は?

桜の開花は天候に左右されるため、開花のピークを10日以上前に予測するのはほとんど不可能である。また、桜の種類が豊富なニューヨーク市ではそれぞれ咲く時期も異なる。開花時期の最新情報は市公園局がツイッターなどで公開しているので、フォローしておこう。ニューヨーク市では先述したように3種類の桜が楽しめるが、それぞれ見頃が異なり、オカメがいちばん早く開花(3月中旬ごろ)する。濃いピンク色は周辺の裸木の中でひときわ目立つので、オカメの開花で春の訪れを感じるニューヨーカーも多い。

ソメイヨシノ(Cerasus × yedoensis)

ソメイヨシノの開花は4月上旬から中旬。白に近いピンク色の花びらが一斉に開き、周囲一帯がかすみのようになる様は、毎年見ても飽きない。「願わくは 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃」と詠んだ西行、「桜の樹の下には屍体が埋まっている。なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか」と書いた梶井基次郎のように、日本人にとっての桜はこのソメイヨシノだ。繊細なソメイヨシノは、涼しく穏やかな天候であれば開花期間は長くなり、雨や風の強い日にはあっという間に散り、遅霜が降りると、まったく咲かないことがある。

カンザンの開花は4月下旬から5月上旬にかけて。濃いピンク色の八重咲きで、他の桜に比べて花房が厚いのが特徴だ。

カンザン(Prunus lannesiana ‘Sekiyama’)

環境にも貢献する桜

美的効果に加え、桜の木は毎年、900万ガロン以上の雨水を遮り、約1万9000ポンドの大気汚染物質を除去し、1430万7448トンの二酸化炭素を削減するなど、生態学的にも大きな役割を担っている。ニューヨーク市は、桜の木が生態系に与える影響だけで年間1億56万5930ドルの利益を生み出すと推定している。


ニューヨーク市の桜の歴史

ニューヨーク市の桜は、1909年のハドソン・フルトン祭(蒸気船の生みの親、ロバート・フルトンがハドソン川での蒸気船テストに成功してから100年、イギリスの探検家ヘンリー・ハドソンがハドソン川を発見してから300年を記念)の一環として、当時のニューヨーク在留邦人委員会がニューヨーク市に2,000本の桜を寄贈する計画を立てたのが始まり。しかし、日本からの桜を積んだ蒸気船が海上で遭難し計画は頓挫。その後、東京市がワシントンDCに桜を再度寄贈(ワシントンDCに最初に送られた桜は病害虫に侵され、焼却処分された)することを知ったニューヨーク在留邦人日本クラブと高峰譲吉博士らは、ワシントン寄贈用の桜とは別にニューヨーク植樹用として苗木作りを興津の農事試験場に依頼。 1912年、ワシントンDCへの桜と同時に輸送され、3月にニューヨークに到着、4月28日に植樹式が行われ、翌29日に植樹された(出典:在ニューヨーク日本国総領事館)。当初贈られた2,000本のうち700本がリバーサイドパークおよび近くのサクラパーク、セントラルパークに現存している。

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