巻頭特集

ニューヨーク・ファッション・ウィークが再開!日本人デザイナーやモデルにもフォーカス

ニューヨークで活躍する日本人デザイナーをピックアップ

繊細なもの作りやユニークな素材を使う日本人デザイナーの評価も高い。今秋冬のトレンドと合わせてご紹介。


日本独自の強靭で環境に優しい「紙糸」を使用し、ニューヨークを拠点に靴下やユニセックスウェアを展開しているのが繊維商社、タキヒヨーのオリジナルブランド「ペーパープロジェクト」だ。着た時に心地よく、さらには環境に配慮し、日本独自の素材の良さを消費者に届けているデザイナーの合田渉虹(ごうだ・しょうこう)さんに話を伺った。

─「ペーパープロジェクト」を始めることになった経緯を教えてください。

タキヒヨーに入社してから繊維開発室に配属となり、紙糸の存在を知りました。社としてもダイレクトコンシューマーのEコマースビジネスに参入しようという話になり、「ペーパープロジェクト」がスタートしました。世に出回っているさまざまな素材はマーケティングの力で有名になっているものも多く、多くの機能を持った紙糸も、消費者にうまくメリットを伝えればアメリカで広められるのではないかと思いました。

吸水速乾に優れ、夏は涼しく、冬は暖かい素材で年中心地よく履くことができる

 

─素材の特徴をアメリカ市場にどのように伝えていますか?

マニラ麻を使用している紙糸は生育が早く、年に3回刈り取ることができるサステナブルな植物です。また強度も高く、吸水速乾に優れていることから、お札やコーヒーフィルターにも使用されています。商品としては靴下に適しているのでは、と考えました。ニューヨークベースのブランドとしてマーケティングしていますが、アメリカにいる人たちは異文化に寛容で、日本の技術に対して興味を持つ消費者が多いことは事実です。特にアメリカの市場にとって紙糸は新しい素材になるので、あまり敷居を高くしたくなく、多くの人に試してもらい、気に入ったらリピートしてもらいたいと思っています。

デザインはベーシックでシンプルに、基本的にはユニセックスにしています。靴下は価格も低く、トライしてもらいやすい商材だと感じています。「日本のものだからこうしたい」という先入観は持たず、拠点となるニューヨークの市場に耳を傾けるようにも心掛けています。

ドレスシューズにも似合う目の細かいホーズ(ソックス)も人気だ

 

─「ペーパープロジェクト」が行っているサステナブルな取り組みはありますか?

紙糸自体は生育の早いエコな素材で作られていますが、紙糸以外の素材を掛け合わせて商品を作る際、例えばコットンならオーガニックコットンを選ぶなど、環境負荷が少ない素材を選ぶようにしています。あとはブランド創業当時から、購入ごとに木のドネーションをする「Buy One. Plant One.」をブランドの活動にしています。

─環境汚染産業第2位といわれるファッション業界は今後どのように変わっていくべきでしょうか?

サステナビリティーについて考えることは必須になってくると思います。デザインする過程の一つ一つの段階でどんな生地を選ぶか、ボタンならどんな素材を選ぶかなどで、その商品が環境へ与える負荷が変わってくるからです。

常に、環境により良い選択は何かを考えることは重要です。アメリカではメディアの影響もあり、消費者がこうした社会問題への意識がとても高いです。メディアがこうした問題を啓蒙してくれるのは大切ですが、ファッションブランド側も、どういったステートメントでもの作りをしているのかを発信しなくてはいけない時代だと思っています。

─今後「ペーパープロジェクト」をどういったブランドにしていきたいですか?

紙糸といえば「ペーパープロジェクト」という存在になりたいですし、靴下を入り口に、ライフスタイルブランドとして紙糸を色々な方に知ってもらいたいです。「ペーパープロジェクト」は素材のブランドとして、他のブランドとも積極的にコラボレーションしていけたらと。

幸いにもアメリカ市場では紙糸にフォーカスしているブランドがまだないので、紙糸素材の第一人者として、日本の技術を世界の人に広めていきたいです。

 

 

合田渉虹さん

「Paper Project」デザイナー。
東京大学工学部を卒業後、文化ファッション大学院大学でファッションデザインを専攻。
2019年に「Paper Project」をスタート。
paperprojectny.com


この秋冬に取り入れたい
トレンドをチェック!

これから迎える秋冬シーズンにすぐに取り入れられるファッショントレンドとは? スタイリストの曽山さんに聞いた。

ショート丈トップス

重心を高くみせ、足長効果も狙えるショート丈トップスは秋冬も引き続き人気のアイテムだ。

「ニット系など沢山のショート丈トップスが展開されていて、取り入れやすいです。ハイウエストのボトムと合わせるのがおすすめです」(曽山さん)。


ボリュームアウター

アウターがコーディネートの主役になる秋冬はボリュームアウターでゴージャスな印象を演出したい。寒いニューヨークの冬にはダウンジャケットなど、心強いアイテムになりそうだ。

「ダウンやビッグシルエットのアウターを羽織ることで、一気に今年らしくなります」(曽山さん)。


ミディ丈スカート

エレガントな印象のミディ丈スカートは全体のバランスが取りやすく、多くの人に取り入れやすいアイテムとしても注目。

「上記に挙げたショート丈トップスやボリュームアウターとのバランスもいいので、比較的挑戦しやすいスタイルです」(曽山さん)。


カラーコート

全体的にダークカラー中心のコーディネートになりがちな秋冬のスタイルに明るいカラーを投入。多くのブランドから発売されているので、トライしてみよう。

「ニューヨークでは黒いコートを着る人が多いですが、カラフルなコートがたくさん出ているので、冒険してみるのもいいですよ」(曽山さん)。

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今年のセントパトリックデーはイル文化を探索しよう

3月17日(土)のセントパトリックデー(Saint Patrick’s Day。以下:聖パトリックデー)が近づくとニューヨークの街中が緑色の装飾で活気づく。一足先に春の芽吹きを感じさせるこの記念日は、アイルランドの血を引く人にとっては「盆暮れ」と同じくらい大事。大人も子供も大はしゃぎでパレード見物やアイリッシュパブに出かける。聖パトリックデーとアイルランド魂の真髄を紹介する。