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まだまだデジタルでの新作発表を行うブランドが多いものの、パンデミック以降、初めてゲストを招いてのニューヨーク・ファッション・ウィークが再開した。今回のショーの動向、ニューヨークのファッションシーンを盛り上げるべく奮闘する、日本人デザイナーやモデルにもフォーカスする。(取材・文/菅礼子)
パンデミック以降のニューヨーク
ファッションショーはどう変わった?
パンデミック以降、8日〜12日まで2年ぶりに観客を入れてのニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)が行われ、13日には多くのセレブリティーがドレスアップした恒例のメットガラで終了を迎えた。ニューヨークは1年半の過酷な時を経て復活したが、ニューヨークの象徴的な存在ともいえるNYFWはどう変わったのだろうか? ニューヨークと東京を拠点に活躍するスタイリストの曽山絵里さんによるトレンド分析も交えて紹介する。
ワクチンパスポートの
提示&小規模での開催
ワクチン接種が普及してきたとはいえ、今回開催されたショーは感染対策を十分行うことが開催の条件ともいえただろう。9月という時期的にも残暑が残る気候ということもあり、感染対策も考慮し、多くのブランドが屋外でのショーを開催していた。それでもどこのブランドも通常より招待客の人数を絞り、入り口でワクチン接種証明を確認するなど、パンデミック前のファッションショーとはまだまだ様子が異なる。「ショーの内容自体はさほど変わりませんが、キャパシティーがかなり制限されている印象がありました。でも、オンラインでどこにいてもショーを見ることができるのは今の時代うれしいことですよね」と曽山さん。
NYFWの公式スケジュールによると、デジタル形式でショーを発表するブランドも多くあったが、7割ほどのブランドが招待制でショーを開催していた。
ショーのチケットも
一般に販売する時代へ
今までファッションショーといえばエディターやバイヤーなど、業界人に向けたものだったが、今季はNYFWの公式ページから一般の人々がショーのチケットを購入できるようになっていた。人気ブランドは約3000ドルと驚くほど高額ではあったが、リムジンでの送迎サービスやフロントローの席でショーを見ることができる権利、スペシャルイベントへのアクセスも含むというファッション好きにはたまらない内容となっていて、各ブランドのチケットが完売していた。
また、今回は後払い決済サービスの「アフターペイ」がNYFWの公式スポンサーとなっており、いくつかのブランドで「See now buy now」として、ショーで見たものをすぐ購入できるシステムを導入していた。「See now buy now」はファッション業界にとって困難な時代を乗り切り、消費者とデザイナーをより近い距離でつなぐ新たな購買方法として改めて注目されている。
ファッションショーは
現代を映し出す鏡
2年ぶりのショーということもあり、間近でブランドの世界観を見ることができたおかげで各ブランドの主張も鮮明になった。
パンデミックでは環境問題への意識が高まり、ファッション業界はつらい立場に立たされることとなった。今回のショーではアップサイクルの服で構成された服や、サステナビリティーを強化したブランド、今まで以上にモデルの人種や体型が多様化し、車椅子の人が着用をした際にきれいに見えるドレスを発表したブランドなどもあった。まるで多様性が受け入れられる社会の実現へ向けた力強いメッセージを、多くのブランドが発信していたようにも見える。
トレンドもショーが再開したことで豊作だった。「春夏のコレクションはカラーバリエーションが楽しいです。いろいろな総柄のアイテムや、引き続きボリュームたっぷりのシルエットにも注目しています」と曽山さんが話してくれた。
曽山絵里さん
ニューヨーク在住スタイリスト。
東京で多くの雑誌やアーティスト、ブランドのカタログなどのスタイリングを担当。
2015年より活動の場をニューヨークにも広げる。
ウェブマガジン「ジュリアンマガジン」(julianmagazine.net)も手掛ける。