高級化の勢いが止まらない、ウィリアムズバーグ地区

かつて製造業が盛んだった名残が見えるインダストリアルなウエアハウスとトレンディーなホテルやショップなどが混在するウィリアムズバーグ地区。そんな同地区がここ何年かで急激にジェントリフィケーション化が進み、完全に「富裕層が住む街」と化している。今号ではそんな同地区で話題の高級ショップ&最新レストランを紹介。(文・取材/伏見真理子)


高級店の出店ラッシュが続くファッション消費の激戦区

 

ブルックリン区のLラインが通るベッドフォードアベニュー駅。駅から東のワイスストリートにかけた、北5から8ストリート周辺には、一昨年オープンしたシャネルビューティーや、エルメスなどのラグジュアリー系を中心に、上質なデザイナーズブランドや、インスピレーションを刺激する感度の高いセレクトショップなどが軒を連ねる。エルメスは、2年前にポップアップショップとしてオープン。数軒先にこの夏、待望の旗艦店を出店する。現在の店舗1階部分にはファッション小物やホーム用品、ビューティー、2階は靴が中心。客層は近隣に住む富裕層が曜日を問わず買い物に訪れるといった様子だ。

高感度ショップが集中

昨年秋にオープンしたサステナブルな背景が魅力のスニーカーブランドのベジャは、同地区に米国で初めて自社で靴職人と靴修理ステーションを備えた店舗を展開。ここ数年、新店舗のオープンに合わせ、欧州で自社の靴職人を増員してきた。あらゆるブランドの古いスニーカーを修理し機能を維持し、埋め立てごみにしない「クリーン・リペア・コレクト」というプログラムを通じて、フットウエアとアパレルのライフサイクルを延ばすことにも力を入れている。

一昨年の春、ニューヨークに3店舗目の旗艦店をオープンしたセレクトショップのキースは、同本社ビルの真下に位置する。ストリートとハイファッションの融合の特徴的な要素を取り入れながら、ウィリアムズバーグの工業地帯に調和するような無骨な要素と洗練された雰囲気がマッチ。訪れる客はTシャツやフーディー、スニーカーといったカジュアルな装いだが、身に付けているそのブランドは全て最先端のトレンド商品の物ばかりだ。

 

転落から復活劇を見せるあのブランドも登場

続いて、今年春に同地区に出店したのは、長らく低迷していた米国のアパレルチェーン、アバクロンビー&フィッチ(以下アバクロ)。1892年の創業当初はアウトドア用品の販売店だったが、1992年に10~20代向けのアパレルブランドに大きく転換し、全米に出店を広げ海外展開も加速した。2010年代に入り、同社の排他的なキャンペーン広告や企業理念に批判が相次ぎ、また消費者の低価格志向もありファストファッションが流行するようになると大量撤退を余儀なくされた。17年にフラン・ホロビッツ氏がCEOに就任し、大型店の面積縮小を行う一方で、オンライン販売を強化。

多様性を取り入れ体型や用途に合わせたドレスライン、ミレニアル世代をメーンターゲットに据え、一昨年だけで株価が4倍になる劇的な復活を見せた。2フロアにまたがる6000平方フィート超の広さを誇る新店舗は、限定商品や、同地区を拠点に活動するクリエーターによる書籍やアート作品を販売する。

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Hermès
91 N. 6th St., Brooklyn, NY 11249
(新:111 N. 6th St., Brooklyn, NY 11249)
TEL: 718-750-0510
hermes.com

VEJA BROOKLYN
111 N. 5th St., Brooklyn, NY 11249
TEL: 347-599-2408
veja-store.com/en_us

Kith Williamsburg
25 Kent Ave. Floor 1, Suite 102
Brooklyn, NY 11249
TEL: 347-699-1045
kith.com

Abercrombie & Fitch
95 N. 6th St., Brooklyn, NY 11249
TEL: 929-505-0310
abercrombie.com

               

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