~New Yorker’s English Expressions~ ニ&
小学5年生で「英検準1級」に合格したタカシ君。でもタカシ君は帰国子女でなければ、インターナショナルスクールに通っているわけでもありません。タカシ君は日本で生活しながら、家庭学習だけで英語力を身に付けたのです。
タカシ君に英語教育を実践することを決意した母親は、幼い頃から英語の歌や動画をかけ流して「英語の音環境作り」をしました。日本語の発語がしっかりしてきた頃からは、フォニックス絵本や英単語絵本を与えて、英語の文字が読めるようになる環境作りを心がけました。
タカシ君はいつの間にか簡単な単語が読めるようになり、5歳の頃には短い絵本なら一人で読めるように育ちました。そこからは、タカシ君が喜びそうな本を探して与えることがお母さんの仕事になりました。
リーディングを身につける順序
子どもが高度な英語力を望むならば「英語の本を読む力=リーディング力」を鍛えることが近道です。英語の本が読めるようになれば、英語の4技能を子ども自身の力で限りなく伸ばしていくことができます。
と言っても、ただ英語の本を与えておいても英語が読めるようにはなりません。タカシ君のお母さんのように、適切な順序で読む力を育てる働きかけを実践することが必要です。
子どもにとってリーディング力を最もスムーズに身に付けられる順序は「フォニックス/英語のひらがな」→「サイトワーズ/英語の漢字」→「リーディングフルエンシー/英語の本の多読」です。
この順序で英語の文字を大量インプットすることで、回り道なく、短期間でリーディング力を育てることができます。
フォニックスとサイトワーズの違い
日本語で「ひらがな」と「漢字」を学ぶように、英語の本を読むためには 「フォニックス」と「サイトワーズ」を学ぶことが必要です。
フォニックスは英語のひらがなであり、単語を一文字ずつ発音する学習法です。たとえば「cat」を「ク」「ア」「ト」と分解して発音します。フォニックスのメリットは「正しい発音で未知の単語を読めるようになる」こと。子どもにネーティブ発音を期待するならばフォニックスは欠かせません。
一方のサイトワーズは英語の漢字であり、単語単位で読み方を教えます。「cat」を「キャット」と一目で読めるように指導します。フォニックスに比べてサイトワーズは効率良く単語が読めるようになります。
しかしサイトワーズには「知らない単語は読めない」という弱点があります。また、漢字学習と同じように、ひたすらサイトワーズを覚えていかなければならず、子どもにとってあまり楽しい学習ではありません。
どうフォニックスとサイトワーズを教えるのか?
フォニックスはアルファベット26文字の音を教えることから始めます。次に3文字単語(cat, hat)、4文字単語(clap, trap)と、グループ単位で読み方を教えていくと、どの子も楽に多くの単語が読めるようになります。
フォニックスでアルファベット26文字の音を覚えたらサイトワーズ学習を導入します。フォニックスが全て終了したらではなく、フォニックスと平行してサイトワーズを取り入れることがポイントです。
サイトワーズはDolch Sight Wordsと呼ばれる約300単語のリストを覚えることから始めます。リストはインターネットで入手できますので、プリントアウトして子どもの目に入る場所に貼っておきましょう。
またYouTubeで「phonics song」「phonics lesson」「sight words」と検索すればたくさんのレッスンビデオが見つかります。これらを活用して家庭でフォニックスに親しませましょう。
リーディング学習を始めたら、アルファベットチャートを子どもの目に入る場所(高さ)に貼りましょう。子どもは目に入るものを無意識に反復学習します。チャートを貼っておくだけで自主学習してくれますので、ぜひ実行してください。
船津徹 (ふなつ・とおる)
TLC for Kids代表 教育コンサルタント
1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。
2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。