グローバル時代の子育て

ネーティブ発音を身に付ける

日本語にも地方ごとに通用する方言が存在するように、英語にもアクセント(なまり)が存在します。準英語圏であるインド、シンガポール、マレーシアなどでは、かなりアクセントの強い英語が話されています。私が暮らすハワイもアメリカであるにも関わらず、独特のアクセントと簡素化された文法による英語(ピジン英語)が通用します。

発音にどこまでこだわるべきか

ハーバードビジネスレビュー誌(2012年5月)によると、全世界で英語を話す人は約17億5千万。そのうち、英語ネーティブは3億8500万人。英語話者のうち、英語ネーティブはたった22%に過ぎないのです。残りの78%は英語を第二言語で話すノンネーティブスピーカーです。

国際語として英語が普及するにつれ、英語は多様化してきています。発音や文法については国や地域ごとに多少の違いがあっても良いではないかという「ワールドイングリッシーズ(World Englishes)」という考えも広がっています。

私たち日本人が英語でコミュニケーションをとる場合も、相手がノンネーティブスピーカーである可能性が高く、過度にネーティブ発音にこだわる必要はないという考え方に私も同意します。

しかし自分の発音はともかく、子どもにはネーティブ発音を身に付けてもらいたいというのが多くの親の願いではないでしょうか。私自身も中学から英語学習をスタートしましたが、いまだに発音が完璧でないため、ネーティブとコミュニケーションをとるときに聞き返されることがあります。

どうやって共通日本語を身に付けたのか?

では、子どもがネーティブ英語を身に付けるにはどうしたら良いのでしょう?これを考える参考となるのが共通日本語の存在です。

関西弁を話す人も津軽弁を話す人も、共通日本語語を話すことができます。家庭、学校、地域社会での会話は、ほとんどが「方言」であるにも関わらず、どうやって子どもたちは共通日本語を話せるようになったのでしょうか?

その答えは、二つ考えられます。一つはテレビやメディアを通して、「共通日本語」がインプットされてきたこと。そしてもう一つは、教科書や本を通して「共通日本語」に触れてきたことです。

テレビのアナウンサーやアニメの登場人物は、「共通日本語」を話します。また教科書や本に書かれている言葉も「共通日本語の書き言葉」です。すなわち、「耳」と「目」を通して共通日本語が大量にインプットされてきたのです。

ネーティブ英語を大量にインプットする

英語も共通日本語と同じように考えてみましょう。子どもにネーティブ発音を身に付けさせる最も確実な方法は、「ネーティブ英語を耳と目から大量にインプットすること」です。

英語の歌を聞かせたり、アニメを見せたり、教育番組を見せたりすることで、ネーティブ英語を耳から大量にインプットします。さらに、英語の本を読めるように指導することで、目からもネーティブ英語をインプットすることが可能になります。

子どもがネーティブ発音で英語の本を読めるようになれば、世界中どこに住んでいようとも、ネーティブ発音とアクセントのある地域英語をきちんと使い分けられるようになります。

ネーティブ英語を大量にインプットすれば、親が日本語なまりの発音で英語を教えたり、本を読んであげても親の発音が子どもにうつる心配はありません。

発音向上には「フォニックス」

子どもがネーティブ発音で英語を読めるようになるには、「フォニックス」が効果的です。フォニックスは英語を正しい発音で読む指導ですから、ネーティブから学ぶことをお勧めします。ネーティブの家庭教師を見つけなくても、YouTubeやフォニックスアプリを活用すれば、家庭でフォニックスを学ぶことができます。

 

 

 

 

 

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾
TLC for Kidsを開設。
2015年に
TLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

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