グローバル時代の子育て

勉強と習い事、最高のバランスとは?

習い事を真剣にさせていく上で、どの親も出合う問題が、「好きなことだけをさせておけばいいのか」、あるいは「勉強もやらせた方がいいのか」です。特に好きなことにおいて、子どもの能力が高いほど親の悩みは大きくなります。これについては、明確な答えがあります。それは「Well-Rounded/均整が取れている」状態であるということです。

どちらも高いレベルを
目指すことが大切

 勉強だけでなく、スポーツや音楽などの課外活動も高いレベルでできる、均整の取れた子どもに育てる。欲張りなようですが、この状態を理想とすることが、これからの子育てには必要なのです。

 というのも、スポーツだけ、勉強だけ、と一つのことに偏っている子どもは、年齢が上がり、世界観が広がり、競争のレベルが高くなっていくと、自分よりも優れた人に出会ったり、敗北を経験したときに挫折しやすく、燃え尽きやすくなるからです。

 例えば、学年でサッカーが一番うまくても、市内ではどうか。市内で一番でも、県内ではどうか。県内で一番でも、全国ではどうか。どんな分野でも、上には上がいるのです。競争する範囲が広がれば、それまで以上に優れた人たちと競わなければならなくなります。

 勉強も同じです。どんなに学校で勉強が得意でも、少し外に目を向ければ必ず上には上がいます。習い事と大きく違う点は、勉強は誰もがやることなので競争の平均的なレベルが高いこと。さらに、生まれつき特別な才能を持った「先天性の天才」も学問分野には一定数存在します。ですから、その中でトップを取ることは本当に難しいことなのです。

習い事は勉強に
良い影響を与える

 学業やスポーツで「自分には無理だ」という挫折を味わったときの保険として、また「こっちがダメならあっちで勝負」と柔軟な思考を持つためにも、勉強系と習い事系、二つの強みを子どもに身に付けさせることが重要です。

 習い事に従事する=勉強に悪い影響を与える、そう思い込んでいる人が多いと思いますが、実際は習い事への参加は学業面にも好影響を与えます。

 Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine Physical Activity and Performance at Schoolが、1990年から2010年にかけて行ったスポーツと学業に関する調査で、スポーツ参加は学業成績にプラスの影響を与えることが分かっています。

 また、トロント大学のグレン・シュレンバーグ教授が04年に行った、「音楽がIQに与える影響」では、音楽を習った生徒は、習わない生徒よりもIQが高くなることが分かりました。同じく、トロント大学のシルベイン・モレノ准教授が11年に行った調査では、音楽のレッスンを受けた生徒は、たった20日間でIQが高まることが分かりました。その他にも音楽がIQを高めるという研究報告は、世界中で発表されています。

 スポーツや音楽だけではありません。アメリカの大学進学適性試験(SAT)を行うカレッジボードが01〜05年にかけて実施した調査では、演劇経験がある学生は、演劇未経験者に比べ国語のスコアが平均で65ポイント高く、算数のスコアが平均で34ポイント高いことが分かりました。

勉強と習い事は互いに
良い影響を与える

 勉強以外に習い事に打ち込むことは、実社会で成功することへの準備にもなります。一人で机にかじりついて教科書を暗記するだけでは、他人と一緒に働くこと、協力し合うこと、時間管理すること、他人をマネジメントすることなどを学ぶことはできません。

 また習い事を通して、「きわどい競争」「緊張する場面」を克服してきた子どもは本番に強く、人前でも緊張することが少なく、楽観的な性格に育ちます。ちょっとやそっとの困難や挫折にはビクともしない「メンタルタフネス」を持っていますから、人生の大切な場面でも実力を発揮できるようになるのです。

 

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾
TLC for Kidsを開設。
2015年に
TLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

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