~New Yorker’s English Expressions~ ニ&
アメリカは市場原理を重視する競争社会です。子どもたちの日常生活にも「競争」が組み込まれていて、学校の勉強はもちろん、放課後には音楽やスポーツの練習、さらに週末には競技会やコンテストへの参加と、遊ぶ暇なく「競争」に明け暮れる日々を過ごしています。
アメリカでは習い事
=競争参加
アメリカ人は本当に競争が好きです。自分が競争に参加することも、競争を見ることも好きです。
赤ちゃんのハイハイコンテストに始まり、学校のタレントショー、レゴリーグ、ロボティックス、スペリング大会、スピーチコンテストなど、あらゆる分野で子どもたちを競い合わせ、技能の向上を計ります。
例えば、アメリカでは6歳になった子どもをサッカーチームに入れるということは、サッカーリーグに参加させて試合に出ることを意味します。そして、サッカー初心者でも試合に出して競争させるのです。
日本では「習い事=練習」ですが、アメリカでは「習い事=競争」なのです。アメリカではサッカーチームに入っても、日本のように放課後、基礎練習をすることは多くありません。
基礎練習は家庭の責任でやるもの。チームへ参加する目的は、試合で実践を経験させることです。
アメリカの豊かな
競争環境
アメリカの競争文化を支えているのが、競争環境の豊かさです。子どものスポーツリーグは年齢や技能別に細かくレベル分けがされていて、初心者から上級者まで、技能に合った競争に参加できるようになっています。
この仕組みがあらゆる競技に根付いているので、初心者でも、同レベルの相手と、際どい競い合いをしながら技能を向上させていくことができるわけです。
また、アメリカの親やコーチは子どもを競争に送り出す時に、「楽しんできなさい!」と言葉を掛けます。子どもをリラックスさせるための配慮なのですが、「100%力を出し切ること」で得られる達成感、際どい競争を楽しみなさい! というメッセージでもあります。
周囲の大人が勝ち負けにこだわらないと、子どもは伸び伸びと競争を楽しめるようになります。
習い事に丸投げしては
いけない
スポーツや音楽などの習い事を成功させるポイントは、親のサポートです。子どもにどれだけ素晴らしい素質があっても、どれだけ評判の良い習い事やチームに入れても、決して習い事任せ、コーチ任せにしてはいけません。
コーチや指導者は、一人で何十人もの子どもを見ています。一人一人の特性に合ったきめ細かい指導を求めることは現実的ではありません。
また、えこひいきはできませんから、習い事任せにしていても子どもは良くて「平均止まり」なのです。
平均止まりでは「強み」にならず、「自信」も育ちませんから、習い事に参加させる意義が半減してしまいます。
親はその習い事への経験がなくても構いませんから、子どもの練習に付き合ってあげましょう。親がそばで見ていてくれている。それだけでも、子どものモチベーションは大きくなるのです。
身近なアイドルを
見付ける
子どもの「やる気スイッチ」を入れる簡単な方法が、「身近なアイドル」を見付けることです。
野球をしている子どもの場合、「イチロー選手のようになりたい!」と大きな夢を抱くかもしれませんが、あまりにも遠すぎて現実味が湧きません。モチベーションアップには「二つ上の先輩」など、身近なスーパースターを見付けることが効果的です。
「◯◯先輩みたいになりたい!」と、子どもがそう思えば「やる気」がアップします。スポーツ、音楽、ダンス、どんな分野でも身近なスーパースターがいるはずです。その先輩が競技や演奏をしている姿を見せたり、話をする機会を作ると、子どもの「やる気スイッチ」が入ります!
船津徹 (ふなつ・とおる)
TLC for Kids代表 教育コンサルタント
1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。
2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。