~New Yorker’s English Expressions~ ニ&
子どもの習い事で大切なのが「競争参加」です。一人でピアノをコツコツ練習しているだけでは、子どもの「自信」や「達成感」は大きくなりません。発表会に出て大勢の前で演奏したり、コンクールに出場して際どい競争を経験することによって自分の実力や足りない部分を自覚することができます。
競争に参加することで
技能は向上する
スポーツ、音楽、演劇、アート、どんな習い事でも、週に1〜2回グループレッスンに参加しているだけでは、技能は良くて「人並み止まり」です。子どもが周囲から頭一つ突き抜けるには、競争に参加することが必要です。
競争に参加することで「自分はどの部分が優れているのか」「何が足りないのか」を知ることができます。サッカーの試合に出れば、ドリブルがうまい、足が早い、パスが正確、キープ力が強いなど、自分の「強み」に気付くことができます。同時に、「もっと練習してパスの精度に磨きを掛ければならない」と自分の足りない面についても知ることができます。
また、人前でパフォーマンスを披露したり、楽器を演奏する経験は、緊張する場面で実力を発揮する力、本番に強くなる力を育ててくれます。競争をたくさん経験している子どもは、日頃の練習でも実戦を想定するようになります。本番の演奏会や試合をイメージしながら練習しているので、同じ練習をしていても、周囲の子どもとは習熟度が違ってくるのです。
本番に弱い、実力を発揮できないという子どもは、競争経験が少ないからです。場慣れしていないからプレッシャーに負けてしまいます。また、普段の練習でも本番をイメージしておらず、「失敗してもやり直せばよい」という軽い気持ちで練習に向き合っています。
競争では勝ち負けは
二の次
子どもが競争に参加する際の注意点は、「親が勝敗へこだわらないこと」です。もちろん競争に参加する目的は勝つことです。しかし、子どもが100%力を出し切ったのであれば、負けても、それは勝利と同様に高く評価してあげてください。
「やるからには勝たねばならない」と勝敗へのこだわりが大きすぎると、子どもに恐怖心や不安感を植え付けてしまい、実力を発揮できなかったり、競争を楽しめなくなったりします。健全な競争心を育てるためには、親が「全力を出し切ることが大切」という態度でいることが大切です。日本のスポーツは、高校野球に代表されるように「絶対に負けられない一発勝負!」という深刻さが付きまといます。
でも子ども時代の競争の目的は、勝ち負けよりも、本気でチャレンジしたことで得られる達成感を経験させることです。
優勝して一番大きなトロフィーをもらう喜び、敗者となって涙を流す悔しさ、敗北から再び立ち上がってチャレンジし続ける粘り強さ、そんな経験が人生にとってマイナスになるはずがありません。大切なのは「競争経験」であり「勝敗」ではありません。
子どものレベルに合った
競争環境を選ぶ
子どもが競争に参加する時は競争レベルに配慮してください。理想は、「手の届く範囲の競争」です。明らかなレベル差がある場合、子どもが劣等感を持つ可能性があります。今の実力よりも少し高いレベルで競わせること、際どい競争ほど子どもを大きく成長させてくれます。
そして、子どもの技能が一つ上がったことを見極めたら、もうワンステップ高いレベルの競争にチャレンジするのです。さらにそこをクリアしたら、もうワンステップ上げていきます。これを積み重ねていくと、いつの間にか、ずば抜けて高いレベルへ到達できます。頭一つどころか、卓抜することができるのです。
船津徹 (ふなつ・とおる)
TLC for Kids代表 教育コンサルタント
1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。
2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。