スペシャリストに聞く

尾崎真由美会計士に聞く ①基礎知識と仕組み

今月のテーマ:タックスリターン

年をまたげば、迫ってくるのがタックスリターン。一見シンプルな収入構造の人でも、思わぬ落とし穴があり、申請に手間取ることがある。まずは、本質をしっかり理解しているかの確認から始めよう。

※この記事は2021年1月1日の記事を一部改変して再掲載しています。

 

 

Q. タックスリターン(tax return)について教えてください。

A.

米国税務省(IRS)と自分の住んでいる州または市に、日本でいう確定申告を行うことを指します。過払いの税金を払い戻す、あるいは不足分を納税することで、追徴税や罰金を防ぎます。

市民権やステータスにかかわらず、アメリカ国内で所得があれば申告が必要です。ただし一部のビザ保持者(F・Jなど)は除外されることもあります。

 

Q. パートタイムやOPTなど、収入が少なくても必要でしょうか?

A.

タックスリターンは収入額にかかわらず申告しなければなりません。思わぬ課税が控除対象となり、少額であってもお金が戻ってくる可能性があります。

 

Q. 申告期間はいつですか?

A.

来年度は4月15日(金)に締め切り予定です。ただし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、5月まで延期されました。来年も政府からイレギュラーな対応を求められる可能性がありますので、最新情報に注意してください。

また、今回のパンデミックで失業・転職者が例年より多くなっています。税理士との準備や政府の対応も、通常よりも時間がかかる可能性があります。準備は早めに始めましょう。

 

Q. 締め切りを過ぎてしまった場合は?

A.

IRSよりペナルティーが課せられる場合があります。遅延期間分だけ利子が算出され、増税されることがあるので、締め切りを過ぎてしまったら、早めに会計士に相談しましょう。

 

Q. アメリカ国外にいる場合はどうすれば?

A.

申告はどこにいても義務付けられていますので、オンラインから申請してください。郵送でも可能です。また、基本的にはどの会計事務所も、海外からの相談に対応してくれると思います。今年中に日本に永久帰国したり、別の州に転居した場合は、別途申請が必要です。これは後の号で詳しく解説します。

 

Q. 申請に必要なものは何ですか?

A.

申請者は必ずソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN)を保有している必要があります。新たに米国にやって来た場合は、社会保障事務局に申請し、取得します。

ただし、現在も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、取得プロセスに時間を要する場合があるので注意が必要です。通常、就労ビザの配偶者・扶養者など、SSNがない人は、ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)こと、個人用納税者識別番号を申請します。今回のパンデミックでSSNが取得できていない人にも、ITINの取得が推奨されたのですが、こちらもIRSの対応が停滞し、取得できなかったケースがありました。

納税義務がある限り、タックスリターンは最大3年分までさかのぼって申請可能です。こういった事情がある場合、対応がそれぞれケース・バイ・ケースになるので、会計士に別途相談することをおすすめします。

もう一つ、勤務先から送付されるW2フォームが申請に必要になります。これは1年間の収入と源泉徴収について記した書類です。万一紛失した場合は、再発行を申請してください。

〈おことわり〉

当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

尾崎真由美会計士

ワシントン州CPA、ニューヨーク州会計士。
東洋大学法学修士、経営学修士。
アメリカ全域および日本に、会計・経理代行サービスや税務コンサルティングなどを行っている。
フロリダのオフィスから完全リモートで、問い合わせから12時間以内に対応する。

 

 

尾崎会計事務所

18001 Old Cutler Rd., Suite 454
Miami, FL 33157
TEL: 877-827-1040
info@1040me.com
1040me.com

 

 

NYジャピオン 最新号

Vol. 1275

─ハワイ最新情報・前編─ 国内旅行で人気再燃 ハワイを満喫しよう

今年9月にアラスカ航空とハワイアン航空が統合し、ホノルルを第2の主要ハブとして確立させると発表。また、今年の国内旅行(*1)の人気ランキング第4位は、オアフ島が選ばれるなど今再び注目されている。小さな子供連れからシニア世代まで十分に楽しめるオアフ島を中心にハワイの魅力を特集してみた。来年春休みの旅先として計画してみては!(*1)U.S. News Travel調べ

Vol. 1273

トランプ大統領による新政権 第2章が遂に動き出す

米大統領選挙は今月5日投開票され、米東部時間6日午前5時30分過ぎに共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)の勝利が確実となった。一方、民主党候補だったカマラ・ハリス副大統領は6日午後、首都ワシントンで演説し敗北を認めた。支持者らに向け、理想のために戦うことを「決してあきらめない」よう訴え、「この選挙結果は私たちが望んだものではない」としながらも、平和的な政権移譲が必要だと強調した。1期目とは全く異なると言われるトランプ政権2期目の行方はいかに。

Vol. 1272

リトルポルトガル味めぐり

ニュージャージー州ニューアークはポルトガルからの移民とその子孫が多く暮らしていることで有名だ。今週は日本人の舌にも合うポルトガルの味を探訪、併せてリトルポルトガルの成り立ちにも迫る。