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今月のテーマ:老後の備え
誰もが知っておきたい、アメリカでの老後の暮らしについて、法律の専門家が解説する。準備を怠ると、残された家族にはさまざまな困難が降りかかるので、元気なうちに自ら行動を起こすことが大切だ。
※この記事は2019年10月4日の記事を再掲載しています。
Q. エステートプランとは何ですか?
A.
日本出身の人は、エステートプラン(遺産相続計画)と聞いても、ピンとこない人が多いのではないでしょうか。日本では、家族が死亡した場合の相続人や遺産の分配方法などがあらかじめ決まっているので、不動産などの権利証書(deed)などの必要書類を政府に提出すれば、比較的スムーズに相続手続きが終わります。
一方、米国では相続の内訳は故人に委ねられます。遺言書の内容によっては、自分の全財産を、家族以外の人間に相続させることも可能です。
Q. 全くエステートプランを準備していないと、どうなりますか?
A.
遺言書がない場合は、あらかじめ政府により定められた分配方法が取られます。例えばニューヨーク州内で配偶者が死亡した場合、遺産の最初5万ドルと50%を相続できます。両配偶者の子供はその残りを相続します。
相続手続きは裁判所で行われ、全ての裁判過程と継承判決の内容は一般公開されます。裁判は遺言書があっても、1〜2年掛かることが珍しくありません。遺族間でトラブルがあると長引き、費用もかさむので、自分で準備を整えておくことが重要です。
Q. 手続き中の遺産は、誰が管理しますか?
A.
裁判所です。故人にも遺族にも所有権がない状態の資産を、エステートと呼びます。日本だと故人の借金やローンは自動的に遺族に相続されますが、米国ではエステート扱いとなります。エステート扱いの不動産物件や財産を管理し、動かすには、裁判所に許可を得ます。
Q. 相続には必ず裁判所を通しますか?
A.
もし故人の遺産が3万ドル以下であった場合、より簡単な手続きで遺産分配が可能です。
ちなみに、アメリカでは18歳以上は大人とみなされるので、子供の銀行口座でも正規手続きが必要です。もし大学進学した子供の銀行口座で、遠隔で手続きを行うなら、子供が委任状(power of attorney)を作成し、委任相手に親を指名する必要があります。
また、一つの不動産物件を婚姻関係にある夫婦で所有している場合、片方が死亡すると、所有権は全て残された方に移ります。これを「連帯不動産権(Tenancy by the Entirety)」と呼びます。
Q. 遺言書以外に用意すべき書類は?
A.
自分で意思疎通できない状態(脳死など)になった場合を考慮して、各種委任状を作成しましょう。
例えば、米国では個人の健康情報を勝手に開示できないため、子供や配偶者が事故や病気になった場合、HIPAA法(Health Insurance Portability and Accountability Act)に基づく承認が必要です。また医療委任状(Healthcare Proxy)がなければ、治療に介入できません。
延命措置(Living Will)や遺骨処分指定(Disposition of remains appointment)、もエステートプランの重要文書です。
子供がいる人は、子供のガーディアン(後見人)も委任しておきましょう。両親が亡くなり、18歳未満の子供が残された場合、子供は法的に指定されたガーディアンに引き渡されるか、裁判所で裁判官が保護者を指名します。
しかるべき保護者が見つからない場合は、子供は政府に保護され、施設に入ります。
ニューヨーク州は医療委任状などに簡単なフォームを用意しているので、基礎的なものなら、弁護士を通さずに作成可能です。
〈おことわり〉
当弁護士事務所は、掲載記事の内容に関して、一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。
ジア・キム弁護士
ニューヨーク州、ニュージャージ州弁護士。
ハンプシャー大学を経て、フォーダム法科ロースクール卒業。
米国および国際エステートプランや、メディケイド財産保護計画などを専門に担当。
英語や、日本語で相談可能。
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