タックスリターン(tax return)について弁護士が考える”基礎知識と仕組み”

今月のテーマ:タックスリターン

年をまたげば、迫ってくるのがタックスリターン。一見シンプルな収入構造の人でも、思わぬ落とし穴があり、申請に手間取ることがある。まずは、本質をしっかり理解しているかの確認から始めよう。


 

Q. タックスリターン(tax return)について教えてください。

A.

米国税務省(IRS)と自分の住んでいる州または市に、日本でいう確定申告を行うことを指します。過払いの税金を払い戻す、あるいは不足分を納税することで、追徴税や罰金を防ぎます。

市民権やステータスにかかわらず、アメリカ国内で所得があれば申告が必要です。ただし一部のF・Jなどのビザ保持者は除外されることもあります。

Q. パートタイムやOPTなど、収入が少なくても必要でしょうか?

A.

タックスリターンは収入額にかかわらず申告しなければなりません。思わぬ課税が控除対象となり、小学でもお金が戻ってくる可能性もあります。

Q. 申告期間はいつですか?

A.

今年度は4月15日(木)に締め切り予定です。ただし、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、10月まで延期されました。今回も政府からイレギュラーな対応を求められる可能性がありますので、最新情報に注意してください。

また、今回の騒動で失業・転職者が例年より多く予想され、税理士との準備や政府の対応も、通常よりも時間がかかる可能性があります。準備は早めに始めましょう。

Q. 締め切りを過ぎてしまった場合は?

A. 

IRSよりペナルティーが課せられる場合があります。遅延期間分だけ利子が算出され、増税されることがあるので、締め切りを過ぎてしまったら、早めに会計士に相談しましょう。

Q. アメリカ国外にいる場合はどうすれば?

A. 

申告はどこにいても義務付けられていますので、オンラインから申請してください。郵送でも可能です。また、基本的にはどの会計事務所も、海外からの相談に対応してくれると思います。昨年中に日本に永久帰国したり、別の州に転居した場合は、別途申請が必要です。これは後の号で詳しく解説します。

Q. 申請に必要なものは何ですか?

A.

申請者は必ずソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN)を保有している必要があります。新たに米国にやって来た場合は、社会保障事務局に申請し、取得します。

ただし、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、取得プロセスが停滞しているので、注意が必要です。通常、就労ビザの配偶者・扶養者など、SSNがない人は、ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)こと、個人用納税者識別番号を申請します。今回の騒動でSSNが取得できていない人にも、ITINの取得が推奨されたのですが、こちらもIRSの対応が停滞し、取得できなかったケースがありました。

納税義務がある限り、タックスリターンは最大3年分までさかのぼって申請可能です。こういった事情がある場合、対応がそれぞれケースバイケースになるので、会計士に別途相談することをおすすめします。

もう一つ、勤務先から送付されるW2フォームが申請に必要になります。これは1年間の収入と源泉徴収について記した書類です。万一紛失した場合は、再発行を申請してください。

 

〈おことわり〉

当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

 

尾崎真由美会計士

ワシントン州CPA、ニューヨーク州会計士。
東洋大学法学修士、経営学修士。
アメリカ全域および日本に、会計・経理代行サービスや税務コンサルティングなどを行っている。
フロリダのオフィスから完全リモートで、問い合わせから12時間以内に対応する。

 

 

尾崎会計事務所

18001 Old Cutler Rd., Suite 454
Miami, FL 33157
TEL: 877-827-1040
info@1040me.com
1040me.com

 

 

 

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。