「親権にかかわらず、例外は?」弁護士が考える”その他の注意事項”

今月のテーマ:アメリカでの離婚

最終回は、これまでの話を踏まえた上での「もしも」のケースを確認していく。自分自身と相手、そして子供にとってベストな選択ができるよう、専門家にしっかり相談していこう。


 

Q. 親権にかかわらず、双方の親がそれぞれ子供と過ごすのが普通だと言っていましたが(第2回参照)、例外はありますか?

A.

前提として、アメリカでは離婚したとしても親子は親子、という考え方です。基本的には親が子供の面倒を見るのは当たり前なので、例えば父親側が、「離婚後は子供の面倒を見たくない」と、面会(visitation)を放棄する意思を見せた場合、裁判官が「では多額の養育費を支払うように」と夫側に命じる可能性がありますね。

逆に、面会を求めている相手に子供への暴力・虐待を加える危険がある場合、裁判所に面会の監督(supervised)を求めることができます。ただし、これらはその危険性を証明する必要があるので、証拠がなければ通りません。

監督では、面会の回数を一時的に制限する他、親族などの第三者に立ち会いを求めるなどの措置があります。一定期間の経過を見て問題がなければ、監督は終了となります。

 

Q. 子供が、親との面会を拒否することはできますか?

A.

公式に書面で宣言することは難しいですね。裁判官が拒否を認可することもないでしょう。

子供が「(親権がない親に)会いたくない」と発言すること自体は、もちろん自由ですが、何度も会わないケースが続いた場合、親権がない親は、裁判所に不満を訴えることができます。親権がある親(子供と一緒に暮らしている親)が権利を侵害している、言い換えると義務を履行していないという判断ですね。

裁判所は、親としての義務を果たしていないと見なしたら、親権をはく奪してくる可能性もあります。親権は、基本的に裁判官の命令に従わないと、失ってしまう危険が高まりますね。

会う頻度が減れば、子供は親に会いたい気持ちが薄れてしまいますから、とても難しい問題です。

 

Q. もし、相手の不倫を理由に離婚を検討している場合、何か準備すべきことはありますか?

A.

裁判所は離婚の理由を聞きません(第1回参照)ので、「○月○日に不倫相手と会った」といった事実などは、特に必要ありません。

その夫婦に不和が生じ、結婚生活が難しくなったと判断された場合は、そのまま離婚が認められるのが原則です。

 

Q. ニューヨーク州と他州で、法律にどのような違いがあるでしょうか?

A.

先述の「離婚理由を問わない」という概念は全米で共通ですが、その他の細かい法律は州によって異なります。

離婚後の夫婦の経済格差を埋めるために、裁判所が収入の高い方に生活費の支払いを命じる、という話をしましたが(第1回参照)、これは5年前に改正されたニューヨーク州独自の基準です。

ニューヨーク州では、財産が公平に(equitable)分与されます。経済的に弱い立場に多めに分配することで、子供にバランスの取れた生活水準を提供するということですね。

ただ州によっては、財産は経済状況にかかわらずきっちり同額に等分する、ということもあります。弁護士に相談して、自分の暮らしている州の規定を確認しましょう。

 

〈おことわり〉

当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

 

ウェイン・スタンレイ弁護士

カリフォルニア州立大学フルトン校および同校大学院を経て、オーストラリアのマッコーリーロースクールを卒業。
2001年よりニューヨーク州弁護士。
民事法、刑法、家族法、不動産法、移民法など。
相談から裁判所同行まで日本語で可能。

Wayne and Wayne Law Office

3 Berachah Ave.
Nyack, NY 10960
TEL: 845-988-6429
stanwayne@optimum.net
nybengoshi.com

               

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