「母親の方が有利ですか?」弁護士が考える”離婚と子供”

今月のテーマ:アメリカでの離婚

今月は、最近日本でも何かと話題に上ることが多い、離婚について専門の法律家が解説。日本とアメリカでは少しずつルールが異なるので、基礎から丁寧にさらっていこう。ニューヨークの離婚事情はどうなっているのだろう?


Q. 離婚の際、子供の親権を得るのは、母親の方が有利ですか?

A.

原則としては男女平等なので、どちらかが有利というわけではありません。ただし母乳が必要な乳児などがいる場合、裁判官は、育児で母親の方がより求められていると判断する可能性があります。

親権は子供の幸せを十分考慮した上で決定する必要があります。もし夫婦の双方が親権を主張した場合、裁判官は子供に対して、両親のいない状態で「どちらに付いていきたいか」の意思確認をすることがあります。

なお、18歳以上は大人と見なされるので、親権の争点にはなりません。また、きょうだいは原則、分けられることはありません。

Q. 逆に、どういった場合に親権を得ることが難しくなりますか?

A.

親に非(fault)があると考えられると難しくなりますね。子供を虐待する恐れがある場合はもちろん、例えば精神疾患を抱えている場合、正常な判断が難しく、子供を危険にさらすと裁判所に判断される場合があります。夫婦関係や子育てについて深く思い悩んでいる人は、注意したいですね。

また、現在は男女共に働くケースが多いので、どちらかが無職で収入がなかったり、金銭的に子育てが難しいと判断されると、親権獲得にマイナスの判断が下ります。

Q. 離婚したら、元の配偶者と子供を会わせなければなりませんか?

A.

日本では、一度夫婦が離婚したら、親権を得た片方の親が子供の責任を負いますが、アメリカではたとえ離婚したとしても、子供は永久にその2人の子供です。

なので、元配偶者が子供に危害を加える恐れなどがない限り、子供との面会を求めることができ、また親権を得た親も面会を拒否することはできません。

アメリカで一般的な過ごし方は、例えば普段は母親の元で暮らし、毎月どこかの週末は父親と暮らす、というものです。あるいは、夏休みを1カ月ずつ折半して子供と過ごしたり、主要な祝日(クリスマスや感謝祭など)は交代でそれぞれの家に行ったり、といった方法もありますね。

これは家庭ごとに最善とみなされる処置が異なるので、ケースバイケースといえますね。

Q. 養育費の金額は、どのように決まるのでしょうか?

A.

基本的には離婚時に取り決めます。ただ、将来的に失業したり、収入が減少して支払いが難しくなることも考えられます。したがって、同意書(agreement)には「収入の17%を養育費として毎月支払う」という風に、金額ではなく割合で取り決めを行うといいでしょう。子供が2人いる場合は25%、3人なら28%など。ただし養育費が収入の30%を超えることはありません。

また、親権を得た母親がその時点で仕事をしていなかったり、夫婦間で収入に大きな差がある場合、裁判所は、子供の生活水準をなるべく離婚前と同じ状態に保ちたいと考えます。そこで、収入の差額の支払いを生活費として元配偶者に命じる場合もあります。ただし、財産分与などで十分な資産がある場合、生活費は不要と判断します。

<おことわり>

当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

ウェイン・スタンレイ弁護士

カリフォルニア州立大学フルトン校および同校大学院を経て、オーストラリアのマッコーリーロースクールを卒業。
2001年よりニューヨーク州弁護士。
民事法、刑法、家族法、不動産法、移民法など。
相談から裁判所同行まで日本語で可能。

Wayne and Wayne Law Office

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Nyack, NY 10960
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