高鳥会計事務所に聞く④日米間の贈与

今月のテーマ:日米の税金制度

連載の最終週は、日本の家族からの送金問題について、税務の専門家が解説。日米の制度が違うからこそ、思わぬ支払いが発生しないように注意深く行動したい。

Q. 米国での不動産購入のために、日本の家族からの送金を手配する際、贈与税はどうなるでしょうか?


A.

まず日本の贈与税は、贈与者(家族)が日本居住者である以上、受贈者(自分)が米国在住であったとしても、受贈者に納税義務があります。米国から納税する際は、納税管理人(連載第2回を参照)を選任して、日本で申告納税する必要があります。

受贈者1人あたり年間110万円を超えた金額の贈与は、超過分について10〜55%の累進課税になります。

不動産や純資金などは贈与税の課税対象になりますが、親や祖父母から子供(孫)に対する常識範囲内での扶養義務は、課税対象になりません。生活費、教育費、医療費、養育費などがその対象外の例です。

米国の贈与税は、贈与者(日本に住む家族)が納税義務者ですが、贈与者の日本口座から受贈者の米国口座に送金で贈与するときは、米国外財産の贈与となるので、課税対象外です。

ただし、米国外に住む日本人から、年間10万ドル以上が贈与された場合、米国の受贈者(自分)は、フォーム3520を、翌年4月15日までにIRSに提出する義務が発生します。

 

 

Q. 海外送金に際しての贈与税対策には、どのような方法が考えられますか?


A.

送金を「貸与」とする、相続時精算課税制度を利用する、あるいは購入不動産の名義を送金元(両親など)の名義に変更するなどが考えられます。

最も多くの人に利用されるのは、送金分を貸与扱いとする方法。契約書を作成し、送金元に「返済」することが必要です。

貸借契約は、例えば支払い期限があまりにも非現実的(例=送金元が80歳なのに支払い期限が40年間に設定されている)だと成立しません。少なくとも1年に1回は返済するようにしましょう。

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫への生前贈与について、選択により利用できるというものです。合計2500万円までの贈与に対する贈与税の納税が、相続発生時点まで繰り延べられます。

ただしこの制度のデメリットとして、贈与税における毎年の非課税枠が使えなくなる、などがあります。

名義を送金元にした場合は、名義元(親など)が亡くなった後、相続手続きが複雑化してしまうので、個人的にはあまりおすすめしません。

 

Q. 日本から少額を少しずつ送金してもらう方法は、法律上問題ないでしょうか?


A.

はい、法律上は問題ありません。1回100万円以下の海外送金について、日本の銀行は税務署に送金内容を報告する義務がないので、送金後に税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が届く可能性は低いといえます。

ただし、日本の銀行には海外送金の履歴が残っていますので、将来、税務調査などで送金内容の説明を求められる場合に備えて、きちんと回答できるよう準備しておくことをおすすめします。

税金問題は個人のケースによるところも大きいので、些細なことでも専門家に相談してみてください。

 

〈おことわり〉

※当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を置いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

 

高鳥拓也会計士

2001年、京都大学経済学部経営学科卒業。
IPトレーディングジャパン、アルプス電気などを経て、2014年に高鳥公認会計士事務所を開業。
日本と海外での税務の仕組みを解説する「海外送金.com」も運営。
メールやビデオ通話で相談受付可能。

 

高鳥公認会計士事務所
東京都港区赤坂8-5-40
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