高鳥会計事務所に聞く②日本での税金問題

今月のテーマ:日米の税金制度

日本に残してきた両親や家族、不動産や財産などは、米国にいる間もかかさずケアしていきたいところ。今号は、税務のプロが、日米双方から求められる手続きなどについて解説。

Q. 米国在住で、日本でも不動産や財産を保有する場合、何か米国で申告する必要はありますか?


A.

日本人にとって認知度が低く、対策漏れが起こりやすいのは、「FBAR(The Report of Foreign Bank and Financial Accounts)」と呼ばれる米国の税金制度です。これは、米国外に1万ドル以上の金融口座を保有している人に、国外金融口座の1年内での最高額を開示することを義務付けるものです。

残高がその1年で、1回でも1万ドルを超えた場合は、IRSに申告する必要があります。現時点で1万ドルを超えていなくても、年内に超えた記録があれば該当するので、注意しましょう。

 

 

Q. 米国在住中に、日本で不動産を貸し出している場合、日本での確定申告はどのように処理されますか?


A.

日本国内の不動産は「国内源泉所得」と呼ばれ、貸主の居住地にかかわらず日本で確定申告が必要です。

なお、賃借人が法人として事業用途で利用する場合、賃借人は所得税20%と復興特別所得税0・42%、計20・42%を源泉徴収として納付する義務があります。

源泉徴収ありの場合でも、貸主は日本で確定申告が必要ですので、ご注意ください。通常、所得税の還付となります。

 

Q. 米国在住の立場で、日本にある財産を相続する場合、何に気を付けるべきでしょうか?


A.

日本の相続税の課税対象になるかどうかは、被相続人と相続人のステータス(居住者か非居住者か)、および相続財産の所在(日本にあるか、日本国外にあるか)によって決まります。

例えば、亡くなった自分の親(被相続人)が日本に居住していたなら、相続人(自分)がたとえ長年米国に居住していたとしても、相続した財産全てが課税対象となります。

日本での申告納税手続きは、日本居住者を納税管理人に選任して、納税管理人を通じて行う必要があります。

なおこの場合、相続発生から10カ月以内に申告納税が必要です。

 

Q. 納税管理人は、どのように指名するものですか?


A.

納税管理人とは、日本国外に居住する人が日本で確定申告や納税を行う際、その納税事務処理を代わりに請け負う人のことです。

日本居住者であれば個人・法人のどちらでも問題ありません。実務上は、親族や顧問税理士がなることが多いですね。

例えば、日本国内の不動産収入がある場合、所得税と固定資産税の納税管理人を選任する必要があります。

所得税の納税管理人の選任は、自分(納税管理人ではない)の納税地を管轄する税務署に、「所得税の納税管理人の届出書」を提出します。納税地は、基本的に、日本国内の不動産の所在地になります。

固定資産税の納税管理人の選任は、不動産所在地の市区町村に「納税管理人申告書」を提出します。

ちなみに、納税管理人は、管理を請負った相手が税金を滞納したとしても、連帯して納付する義務は負いません。

 

〈おことわり〉

※当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を置いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

高鳥拓也会計士

2001年、京都大学経済学部経営学科卒業。
IPトレーディングジャパン、アルプス電気などを経て、2014年に高鳥公認会計士事務所を開業。
日本と海外での税務の仕組みを解説する「海外送金.com」も運営。
メールやビデオ通話で相談受付可能。

 

高鳥公認会計士事務所
東京都港区赤坂8-5-40
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