高鳥会計事務所に聞く①永久帰国を考える

今月のテーマ:日米の税金制度

今は米国での暮らしを満喫しているが、医療制度の違いや経済的理由から、老後は日本に戻ろうかと考えている人も少なくない。計画的に帰国するためには、事前勉強は必須。税務のプロに話を聞いた。

Q. 日本へ永久帰国をする際、税金で注意すべき点はなんでしょうか?


A.

米国で長く暮らした後、永久帰国をすることになった場合、永住権(グリーンカード)を放棄するという人も多いかと思います。この際、米国に預金や株式、不動産などの資産がある人は、出国税(Exit Tax)に要注意です。出国税とは、永住権放棄と共に、米国にある保有財産を「売却」したものとみなし、その売却益に課税するものです。過去15年間で8年以上、永住権を保有していた人が、次のいずれかに該当する場合に課税されます。

①放棄日時点の全世界での純資産額が、200万ドル以上ある
②放棄前5年間の連邦所得税の平均所得税額が、16万8000ドルを超えている
③放棄前5年間で、連邦所得税の申告納税義務を果たしていることについて、宣誓できない(例=日本の金融口座を開示していなかった場合など)

 

 

Q . 前述の3項目のいずれもクリアしていたなら、何も申告しなくていいのでしょうか?


A.

いえ、これら3項目に「該当しない」ことを、IRSに報告する義務があります。この際、証拠資料の提出も求められますので、金融機関から保有財産の証明書(Financial Statement)を取得するなどして、準備しましょう。

 

Q . 帰国後、日本での確定申告はどうすればいいでしょうか?


A.

日本の確定申告は例年、3月15日が申告締め切りなので、だいたい1月から準備を始める人が多いですね。日本に永久帰国した人は、帰国日から12月31日までの期間に発生した収入を計算して、翌年の3月に確定申告を行います。この申告では、米国の金融資産からの配当・利子を含めた、全世界の所得について申告する必要があります。年末時点での国外財産が5000万円を超える場合、「国外財産調書」の提出が求められます。ただし、米国金融機関からの配当・利子が20万円以下の場合、確定申告の必要がないケースもありますので、専門家に確認してください。

 

Q. 永久帰国後、日本の住民税はいつから発生しますか?


A.

帰国年の翌年から発生します。1月1日に日本に住所がない(住民票がない)場合、その年の納税義務はありませんので、帰国年の住民税は発生しません。

 

Q. 米国口座の資金を、日本口座に送金する際の注意点はありますか?


A.

自己資金を米国口座からに日本口座に送金することは、資金移動に過ぎませんので、基本的に日米共に税金は発生しません。ただ、ジョイントアカウントからの送金は、資金拠出割合に応じて送金しないと、贈与と認定される可能性がありますので、事前に専門家に確認ください。100万円以上の海外送金は、毎月、その内容が、着金銀行から税務署に報告されています。税務署はこの報告に基づいて、「国外送金などのお尋ね」を日本の住所宛に送付します。この「お尋ね」では、送金資金の原資や使途、贈与や海外所得の有無などを回答する必要がありますので、ご注意ください。

 

〈おことわり〉
※当社は、掲載記事の内容に関して、一切責任を置いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。

 

高鳥拓也会計士

2001年、京都大学経済学部経営学科卒業。
IPトレーディングジャパン、アルプス電気などを経て、2014年に高鳥公認会計士事務所を開業。
日本と海外での税務の仕組みを解説する「海外送金.com」も運営。
メールやビデオ通話で相談受付可能。

 

高鳥公認会計士事務所
東京都港区赤坂8-5-40
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