インタビュー

食ビジネス戦略のスペシャリストから学ぶ 日本文化と米国の未来を繋ぐキーワード

人気連載「食ビジネス 古今東西」を執筆している食ビジネス戦略のスペシャリスト、釣島健太郎さんのコラムがしばらくお休みに。それにあたり、様々な新プロジェクトを手がけ日々奔走する釣島健太郎さんの「食」ビジネスの現在についてスペシャルインタビュー。


─ご自身が経営する会社のビジネス内容について教えてください。

弊社は日本から米国マーケットへのビジネス拡大を支援する戦略コンサルティングとアドバイザリーを行っています。サービスは主に企業様と政府向けに分かれています。約二十年間、食ビジネスの最先端にいることから業界は食品が中心ですが、最近ではヘア(髪)ケア業界の支援も実施。日本からの企業のみでなく、現地企業様へのサービスも提供しています。

「企業様」向けには、新事業立ち上げ時に社長代行のイメージで、ターゲット市場の調査や説明、対象顧客の区分け等、戦略設定を行います。その後、実ビジネス開始に向けた組織編成など事業の骨幹のアドバイスを行い、販売フェーズには販売体制の構築等を行います。新事業の立ち上げ時には、弁護士と会計士を採用されると思いますが、彼らと連携し、よりビジネスの実態に即したサービスを提供します。

「政府向け」には地方自治体や日本酒等、品目毎のプロモーション事業の企画、運営をするケースが増えてきました。2000年代後半から日本政府は主にイベントへの参加、実施等を通して支援を行ってきました。これからは流通業等、実体ビジネスと連携したプロモーションが益々重要になると考えており、そのような企画、運営の実施をお手伝いしています。この他にも政府や自治体のアドバイザーも行っています。

和牛レストラン「J-Spec」にて長崎和牛のイベントを開催

─2020年に会社を設立されてから、振り返り、会社にどんな変化がありましたか。

2010年頃から日本政府も主導して「官民一体」となって日本食ビジネス拡大支援を行ってきました。官と民は大目標は一緒でも、それぞれ役割やルールが違うこと等から、絵に描いたように連携をすることは容易ではありません。弊社はアメリカで実際の販売、物流を行ってきた経験を活かし、官民のリエゾンとなれるようなプロジェクトの設計、運営を心掛けています。そのような必要性を認識し、満たし、皆がWinになるようなサービスの必要性をここ三年間で感じるようになりました。

─米国において日本食ビジネスはここ15年で大きく変化したとおっしゃっておりますが、今後はどのように、さらに成長していくとお考えでしょうか。

今までのアメリカでの日本食ビジネスの変化や変遷については『食ビジネス古今東西』のコラムで書いてきましたが、これからのキーワードは「コスモポリタン化」「カジュアル専門化」「小売マーケットの拡大」ではないかと思います。

コスモポリタンとは「国際化」です。人種のるつぼのニューヨークでは今まで以上に様々な人種、人々が日本食に関わっています。様々な他国のエッセンスが入ったメニューが増えるでしょう。この事象において日本人にとって大事なことは技術、哲学、コンセプト、革新性、全てにおいて最先端にいることです。そうすることで国際化しても日本食は常に中心に居続けることでしょう。

「カジュアル専門化」は、B級グルメと言われている料理等がカジュアルにファッショナブルに広まることです。IT技術の進歩もあり、次世代の人々はお手頃に気の利いた料理を好みます。たこ焼き、お好み焼き、うどん、そば等に特化したレストランが増えていくことでしょう。

「小売マーケットの拡大」は目線が若干違いますが、日本の高級な焼き菓子、お手頃なスナック、ユニークな調味料等がアメリカの消費者に益々届けられるようあの手この手で取り組んでいく必要があり、広がっていくと考えています。

─最後に、読者へメッセージをお願いします。

僕らの親の世代は1980年代のバブル経済も後押ししてアメリカで日本の存在感を大きく高めてくれました。自動車、家電業界等が大きくグローバル化に成功しました。最近は日本の食、アニメ、美容など、日本の文化に根差した業界への注目が世界から集まっています。この優れた文化をどのようにグローバルビジネスに繋げていくかが、これからの我々世代の役割です。新たな時代を共に創っていきましょう。

 

八女茶園訪問

 

 

 

 

釣島健太郎
Canvas Creative Group代表

食ビジネスを中心とした戦略コンサルティング会社Canvas Creative Group社長。
「食ビジネスの新たな未来を創造する」をコンセプトに、現在日本からの食材・酒類新事業立ち上げ、現地企業に対しては、新規チャネル構築・プロモーションから、貿易フローや流通プロセスの最適化、物流拠点拡張プランニングまで、幅広くプロジェクトを手掛ける。
canvas-cg.com

 

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。