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「家に帰ったら料理がそこにあればいいのに」。1980年代、子育てに家事に忙しかった母親はたまにそのようなことをつぶやいていた。当時わが家では外食は週末のお楽しみ。平日は家で食べるもの、そんな空気感があったが、この母親の思いを実現するかのように2010年以降、食品工場で料理素材から調味料を全て準備する「ミールキット」ビジネスが先進国を中心に飛躍している。
このミールキットが始まったのは、アメリカでも、日本でもなくスウェーデンである。「Middagsfrid」社は、07年にミールキットビジネスを開始。07年とは今では世界中に広まっているiPhoneが誕生した年でもある。その後「Middagsfrid」は北欧を中心に拡大していった。11年には現在のミールキット業界最大手「HelloFresh」が創立。その翌年アメリカでも「Blue Apron」が創立し、ミールキットビジネスの下地ができた。
「Blue Apron」は14年にカリフォルニアとニュージャージー州に工場を構え、本格的に大量出荷体制を確立した。その後「Home Chef「Sunbasket」「Plated」「Marley Spoon」など、さまざまなミールキットビジネスがスタートし、現在では150社にも及ぶミールキットサービスが北米で展開されている。
世界的な市場規模は17年時点で約22億ドル(約2500億円)といわれていたが、パンデミックで各社共大きくビジネスを伸ばした。21年時点の市場規模は約69億ドル(約7500億円)に広がったといわれている。
当初は消費者の買い出し、献立作りの代替から始まったミールキットも、今ではベジタリアン、パレオダイエットなど用途や目的に合わせた内容が増え、多様化している。
有名レストランも参加する仕組みが開始
コロナによるパンデミックで、ミールキットに起きた新たな流れがある。それはレストランのとっておきメニューをミールキットにしてお届けするビジネスである。米国においてこのマーケットの先駆者は13年にビジネスを開始した「Goldbelly」で、全米各地のレストラン、ベーカリー、デリと契約し、オンラインで受注したオーダーを直接レストランから出荷している。現在約850店のレストランが参加しており、ミシュラン二ツ星の「Daniel」、日本でも人気のハンバーガー店「Shake Shack」、日本の観光客にも有名なニューヨークのベーグル屋「Ess-a-Bagel」などさまざまな顔触れが並んでいる。コロナ禍以降日本食のラインアップも増え、ニューヨークの有名店、「EN Japanese Brasserie」「Ramen Nakamura」「Blue Ribbon Sushi」「Lady M」などが加わった。
新たなビジネスモデルとして確立を目指す
コロナ禍を機に始まった日本食関連のミールキットビジネスも多くある。「Umami Kit」は旅行業界の大手HIS社がLAのラーメン店とタイアップしスタート。メニューの幅を広げ、現在は鮮度の高い超低温魚セットや高級BBQセット、もつ鍋セットなども販売している。「Ramen District」もLAの有名ラーメン店とタイアップし、大黒屋、新撰組、つじ田など老舗のメニューを提供している。ニューヨークでは日本食イベントを数多く手掛けるジャパンフェスが「Umami Square」を開始。こちらもラーメン店を中心に品ぞろえしている。その他にも当地のお弁当専門店「BentOn」は和食ミールキットを手掛け、鶏つくね、ほっけ、さばの塩焼きなど日本人には心からうれしい総菜の数々を提供する。
パンデミックを一つのきっかけとして広がったミールキットだが、通常の店内飲食ビジネスが戻るにつれ、人手不足、食材一つ一つの梱包への対応など課題がまだまだあることも確かである。しかしオンラインビジネスの発達により、こだわりのあのメニューが一歩身近になった。新たなフェーズに向けて各社の挑戦はまだ始まったばかりである。
釣島健太郎
Canvas Creative Group代表
食ビジネスを中心とした戦略コンサルティング会社Canvas Creative Group社長。
「食ビジネスの新たな未来を創造する」をコンセプトに、現在日本からの食材・酒類新事業立ち上げ、現地企業に対しては、新規チャネル構築・プロモーションから、貿易フローや流通プロセスの最適化、物流拠点拡張プランニングまで、幅広くプロジェクトを手掛ける。
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