食ビジネス古今東西

第2回 食品輸出入「激動」の今に見る食材確保問題と高騰

当コラムでは、食ビジネス戦略のスペシャリスト、釣島健太郎が米国食ビジネスを現在、過去とさまざまな観点から検証。その先の未来へのヒントやきっかけを提示していく。


食ビジネス業界において最近の話題は新たなトレンドや新店オープンではなく、もっぱら食材の「確保」と「高騰」である。その現状を少し掘り下げてみたい。

食材の在庫管理、は食ビジネスにおいて永遠のテーマであろう。アメリカに来て食品輸入卸の購買の責任者をしていた私だが、会社の業績が伸びるとともに、より効率的な在庫管理の仕組みはどのようなものか、四六時中考えていた。トヨタのジャスト・イン・タイムの仕組み、手法を取り入れ、実践しようと試みると不測の事態が起き、あっさり重要商材の在庫が切れてしまう。お客さまに迷惑を掛けてはいけない、と手厚く在庫を持つと会計の担当者が下りてきて資金が足りない、と言ってくる。このような日常の悩みはどの会社も持っているが、ここ最近起きている現象は今までとは大きく違う。多くの食材、商材がタイムリーに供給されない「不測事態」の連続で、在庫切れが日常的に起きてしまっている。特に日本からの商材は大きな影響を受けている。なぜこのような状況が起きているのであろうか。

 

 

船舶業界が苦戦する主要航路の確保

昨年3月頃からコロナ禍による経済閉鎖が始まると海上コンテナ業界は一気に減便に動いた。船会社が船舶を一台動かすのに年間数十億円の経費が発生すると言われている。一般的に船舶の寿命は20年程度だが、コロナ禍を機に多くの船会社が老朽化した、古い船舶の解体に動いた。需要と供給のバランスが一時的に崩れたタイミングで船会社は可能な限り経費の削減に動いた。船に載せるコンテナについても同じで不必要なコンテナの箱が処分されることになった。

ここで起きた事態が、一年後の今、大きな影響となって返ってきている。船舶、コンテナが不足している中、米国は一気に経済再開に舵を切った。しかし供給が追い付かないのが今の現状である。

このような中、船会社が行っている事は「主要航路の確保」である。ベトナム、タイなどからロサンゼルスなど主要航路は何とか確保するが、主要でない航路は減らす、そんな状況が続いているのである。これが「確保」の現状だ。

爆発的な高騰の影響

この状況に合わせて発生しているのが「高騰」である。通常ニューヨークまでの輸出コンテナ費と言えばおよそ4000ドル程度だったが、冷凍など温度管理が必要なコンテナは安くて1万5000ドル、通常の3倍以上という状況が発生している。インドネシアからニューヨーク行きは2万5000ドルと6〜7倍の価格に跳ね上がっている。

このような異例の値上がりは誰も経験した事がなく、正に「激動」だ。このような状況で大きく影響を受けるのが量は売れるが単価が安価な商品である。納豆、冷凍うどん、冷凍野菜などがそのよい例で、場合によってはコンテナ費の値上がり幅がほぼそのまま反映されてしまう可能性もある。大幅な値上げが難しいと判断した場合、しばらくは輸入しない方が賢明、という事も起きている。

ではこの状況はいつまで続くのか。そもそも収束するのだろうか。船舶、コンテナについては今年に入り、主に中国、韓国の造船会社が造船を始めている。それでも船舶の完了には1、2年かかるため、これらがデビューするにはもう少し時間が掛かりそうだ。またニューヨークは経済再開モードであるが、食品工場があるタイ、ベトナム、インドネシアなどは新型コロナウイルス感染者が急激に増えており、工場が通常より減産している。需要が伸びても供給はすぐに改善とはいかない。この激動の今、今まで当たり前であった事に固執せず、柔軟に物事を考えていくことが大事だろう。

ダーウィンが「進化論」で生き残る者は「適者生存」と言ったが、激動の中では強い事、正しい事より求められているのは「適応能力」なのかもしれない。

 

 

 

釣島健太郎
Canvas Creative Group代表

食ビジネスを中心とした戦略コンサルティング会社Canvas Creative Group代表。
2004年より大手総合食品卸で日本食材、酒類、調理器具等の購買スペシャリストとして活躍。
11年、同社副社長に就任。
販路拡大、物流拠点設立、労務管理など、経営管理に携わる。
現在は食ビジネスの新たなビジネスモデル提言からアメリカ市場での商材の販路拡大、レストラン開業支援等を展開する。
canvas-cg.com

 

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