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さかのぼること2020年1月。ニューヨークにおいてコロナ禍はアジアで起こっている海の向こうの現象であった。それが変わったのが3月。3月2日にニューヨーク市で初のコロナ感染者が確認され、5日後の3月7日にはアンドリュー・クオモ州知事による緊急事態宣言が発令される。その後、初の死亡者が確認されると3月17日にはニューヨーク州のレストラン、バーは店内営業が禁止となった。この日の声明でビル・デブラシオ市長は「戦時中の精神で対応する必要がある」と発表した。アジアで起きていた現象は、たった2週間で飲食ビジネスを大きく変えてしまった。説明責任は、と言っている暇もなく戦時中期間に入ってしまったのである。
日本食が手にした「高級」の称号
20年3月以前の日本食ビジネスを振り返ってみると、02年以降20年近くに及ぶ「右肩上がり時代」だった、と言えるだろう。ニューヨークのみならず米国で日本食レストランが大きく飛躍していた。05年に全米で日本食レストランの数が1万店を超え、17年には2・5倍の2万5000店になったといわれている。
世界でも著名なレストラン格付けガイド「ミシュランガイドニューヨーク2021」では、格付けされた68店中15店が日本食レストランである。日本食のエッセンスや食材を多く取り入れているレストランも加えると実に20店にも及ぶ。世界最高峰の料理と言えばフランス料理がすぐ思い浮かぶが、日本食はフランス料理と共に世界最高峰の料理、と言っても過言ではない。
正確にお伝えすると、フランス料理、日本食どちらが優れている、秀でている、という事はない。お互いが学び合い、より高め合い、新たな技術や革新を創り出せる存在である、と言える。しかし一つ言える事は20年近くの「右肩上がり時代」で日本食は「高級」という称号を確実に手に入れた。
「コト消費」が停滞したコロナ禍
そして突如ニューヨークに訪れた昨年の戦時中期間。高級化を成し遂げた日本食にとってはその革新が少しスローダウンした期間であったかもしれない。店内飲食が制限されたレストランは体験、サービスをビジネスにすることができなかった。いわゆる「コト消費」が止まった期間であった。しかしこの期間に予想以上に失われなかったもの、それは「モノ消費」だ。
米国経済は20年第2四半期は大きくマイナスに転じたが、第3四半期は前年対比に近い数字まで持ち直した。その理由の一つは米国消費者がオンラインやスーパーで商品を買い続けたからである。レストランビジネスにおいてもあらかじめパックした食材やメニューを郵送する「ミールキット」が躍進した。レストランで飲食する体験は提供できないが、パックした食材、「モノ」「商材」をはるかかなたのお客さまへお届けするというビジネスが確立されてきている。
デリバリー注文へのハードルも下がった。デリバリーも完成品をお届けする、という観点では「モノ消費」とも考えられる。このように、コロナ禍の飲食ビジネスでは「モノ消費」が中心にビジネスが行われた。レストランが得た新たなビジネスチャネル、とも言えるかもしれない。
さて一年の時を経て21年6月、戦時中期間はいったん終わりを迎えた。これで店内飲食という「コト消費」をお客さまに提供できることになった。まだ先行きが不透明ではあるが、今までと同じではない、より洗練された体験をお客さまに提供するチャンス、とも考えられる。店内飲食が戻った今、レストランは「コト消費」と「モノ消費」両方を提供できる、数少ないビジネスの一つである。人手不足、仕入れの高騰など、さまざまな課題は蓄積するが、各店独自の「モノコト消費」を突き詰め、新たな時代を切り開く時期なのかもしれない。
釣島健太郎
食ビジネスを中心とした戦略コンサルティング会社Canvas Creative Group代表。
2004年より大手総合食品卸で日本食材、酒類、調理器具等の購買スペシャリストとして活躍。
11年、同社副社長に就任。
販路拡大、物流拠点設立、労務管理など、経営管理に携わる。
現在は食ビジネスの新たなビジネスモデル提言からアメリカ市場での商材の販路拡大、レストラン開業支援等を展開する。
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