巻頭特集

編み物に没頭してみるのはいかが? ストレス解消にもつながるという編み物の魅力を知ってみよう

今年もやってきた年の瀬。気温も下がり、自宅で過ごす時間が長くなるこの時期、暖かい部屋でお気に入りの音楽やポッドキャストを聞きながら、編み物に没頭してみるのはいかが? ストレス解消にもつながるという編み物の魅力を知ってみよう。(取材・文/キム・クンミ)


「ダウンタウンヤーンズ」のレティーさんに聞く
編み物の楽しさって?

イーストビレッジにある毛糸店「ダウンタウンヤーンズ」に勤めて10年以上になるレティーさんは、いつも自作のニットや洋服の、個性的な装いが評判だ。

レティーさんは12年前、FITでファッションデザインを学ぶためにロサンゼルスからニューヨークに引っ越してきた。ニューヨークに住むようになってすぐ、友人に連れられてこの小さな毛糸店に一歩入った途端、目に飛び込んできたカラフルな色や毛糸の手触りの良さに一瞬で引き込まれてしまったという。当時、編み物は全くの初心者で、ニットのビギナーズクラスに参加したのが編み物初体験だった。

レティーさんのトレードマークのウサギの耳付き帽子も、2つの団子結びにした髪を入れるために自分で考案した。立体的な耳にするために編みながら何度も試行錯誤を繰り返して完成させたそう。自分でデザインした独特な装いも、編み進めながら良い方法を発見して作っていくという。うまくできた時は何ものにも変え難い満足感を得られるとか。

お団子にした髪が収まるよう、試行錯誤して立体的に編み上げたウサギ耳のニット帽。今ではレティーさんのトレードマークとして定着している

編み物は瞑想に通じるセラピー

店にやって来るのは学生やクリエイターも多く、接客から刺激を受けてアイデアがひらめくと、レティーさんは家に飛んで帰って編み物に没頭する。編み物は通勤の地下鉄の中でも公園でも場所を選ばずにできる。指先に集中しひたすら編み針を動かしている間は他のことを考えないのがレティーさんのこだわりだ。

編み物はマインドフルネスに通じる瞑想効果もあるという研究報告がある。ニットセラピーについての著書も多い理学療法士、ベトサン・コークヒル氏がカーディフ大学と協力して3500人を対象に調査したところ、回答者の81%、また、うつ病を患った回答者の54%が編み物で幸福感を感じたと回答している。また、ハーバード大学医学部のハーバート・ベンソン教授によると、高血圧と不眠症、慢性疾患の痛み治療法として患者に編み物を勧めているという。

最近では東京オリンピックの男子シンクロ高飛び込み金メダリスト、イギリスのトーマス・デーリー選手がプールサイドや観客席で編み物をしながらチームメートを応援する姿が話題になった。イギリスの国営放送BBCのインタビューでは、「編み物は自分にとってマインドフルネスになった」と答えている。編み物作品を次々に披露しているデーリー選手のインスタグラムは評判を呼び、現在およそ350万人のフォロワーを集めている。11月には編み物用具やパターンを販売する「Made With Love By Tom Daley」というブランドも立ち上げた。

編み物を通じて知る日本

この冬の「ダウンタウンヤーンズ」のショーウィンドーにはジブリ映画の大ファンだというレティーさんが創作したトトロとチビトトロ、まっくろくろすけが飾られている。大きなトトロを仕上げるためには3カ月を費やしたそうだ。

また、日本の編み物マガジンや書籍にも詳しい彼女は、編む手順を文章で説明したものがほとんどの欧米の書籍に対し、「日本の本には方眼紙を使った編み図などがあり、視覚的でわかりやすい」と教えてくれた。日本の作図方法を学んで自分の作品のパターンを作ることを目標にしているレティーさんの作品集が完成する日もそう遠くない。

 

話を聞いた人

レティー・ルイスさん

イーストビレッジにある「ダウンタウンヤーンズ」に勤務。現在は運営を任されている。
同店で月〜土曜に行われている対面式初心者クラスの講師も務める。詳細はインスタグラムでチェック!

Downtown Yarns

45 Ave., A
TEL: 212-995-5991
Instagram: @downtownyarns
Web: downtownyarns.com/store.htm

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1244

オーェックしよ

コロナ禍で飲食店の入れ替わりが激しかったニューヨーク。パン屋においても新店が続々とオープンしている最近、こだわりのサワードウ生地のパンや個性的なクロワッサン、日本スタイルのサンドイッチなどが話題だ。今号では、2022年から今年にかけてオープンした注目のベーカリーを一挙紹介。

Vol. 1243

お引越し

新年度スタートの今頃から初夏にかけては帰国や転勤、子供の独立などさまざまな引越しが街中で繰り広げられる。一方で、米国での引越しには、遅延、破損などトラブルがつきもの、とも言われる。話題の米系業者への独占取材をはじめ、安心して引越しするための「すぐに役立つ」アドバイスや心得をまとめた。