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春の気配とワクチンの普及を感じながらも、まだまだ続く寒さとコロナによって、閉塞感や不安を抱えている人が増えている。身近に手軽にできるものから、ちょっと足を伸ばして行えるストレス解消法までを一挙ご紹介。ストレスを手放し、心身共に健康な状態で春を迎えよう! (取材・文/菅礼子)
精神科・心療内科医としてニューヨークとニュージャージーで開業し、外来診療を行っている松木隆志先生に、ストレス回避法、そしてストレスがたまってしまったときの対処法について聞いてみよう。
——パンデミックによってストレスを抱える人が顕著に増えたと思いますか?
はい、もちろん増えたと思いますが、新型コロナが発生した1年前と今とではストレスの種類も変わってきたと思います。
得体の知れない新型ウイルスに対する恐怖、親しい人をコロナで亡くした喪失体験、失業、経済的困窮など、コロナ禍の直接的な影響による急性のストレスにさいなまれる人が多い印象でした。今はコロナ禍の長期化によって生じるストレスと、ソーシャルディスタンスで人との関わりが希薄になることによる孤立化、在宅時間が長くなることによる家族間の軋轢(あつれき)などの慢性的なストレスを抱える人が増えています。
さらに、ヘイトクライム(憎悪犯罪)なども増加しており、社会の分断に対する失望感や不安感などの要因も関わっています。
——どういった症状の人が多いでしょうか?
うつ症状や不安症状の人が多いですね。日本人の患者さんは駐在員も多く、もともと現地の社会的なつながりが少ないため、孤立感を感じやすい傾向にあります。日本人は真面目な性格なので、ソーシャルディスタンスなどをきっちり守る。自分自身に我慢を強いることも多く、ストレスがたまりやすいんです。
——ストレス症状が現れた時に、まずすべきことは?
まずはストレスを感じている自分を受け入れることが大切で、「世の中がこういう状況なので当たり前」と思うことです。実はメンタルが強いと思っている人ほど危険なんです。ストレスを感じやすい人の方が助けを求めるので、大丈夫だったりします。
アメリカ人はちょっと不調があると精神科に行く文化がありますが、日本人は特にメンタルヘルスに対する恥の感覚が強く、実際に体に不調が出てから来るので、症状も重い。愚痴をこぼすというのは悪いイメージがありますが、心の健康にはいいんですよ。
——アメリカという別の国で生きていく上で心掛けるべきことは何でしょうか?
日本人がニューヨークで生きていくためには、寛容さがないとやっていけません。多様性を受け入れ、寛容になることです。さまざまな人種や価値観があるので、多様性を受け入れないことは自分の価値観を押し付けていることになりかねません。何事にも完璧を求めず、受け入れる姿勢を持ってください。
——現代人特有のストレスはありますか?
情報化社会で、インターネットやSNSでの情報収集はバイアス(偏見)がかかります。不安を感じやすい人は、気付いたらコロナの悪いニュースばかり見ていたり、逆にコロナなんて怖くないと思っている人は、コロナに懐疑的なニュースを見たり。人とつながるためのSNSはいいことですが、インターネットやSNSばかりから情報を収集するのは危険なことです。
——日頃からできるストレス解消法は?
1日30分、週150分を目安に有酸素運動をすると効果的です。激しい運動でなく、歩くだけでいいので日ごろから取り入れられるでしょう。日光に当たることでビタミンDが生成され、自律神経も刺激されるので、有酸素運動をしている人はうつになることが少ないといわれています。
もともとニューヨーカーは通勤で歩く人が多かった。1日中座っているのは良くありません。マンハッタンは公園も多いですし、アップステートに行けば自然も多い。ソーシャルディスタンスも保てるのでトライしてみてください。
松木隆志先生
東京医科歯科大学医学部医学科卒業。
マウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院精神科にて精神科専門医研修を修了、米国精神科専門医資格を取得。
現在はマウントサイナイ医科大学精神科助教授および同医科大学附属病院精神科救急部の指導医。
ニューヨーク、ニュージャージーにて個人開業し、一般外来診療も行っている。
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