巻頭特集

ニューヨークの中のパリ

2024年はパリ・オリンピックの年。開催までには半年あるが、今週はニューヨークでパリを体感できる場所やグルメスポットを紹介。併せて今から動向をチェックしておきたいフランス出身の選手に注目する。(文・取材/加藤麻美)


見上げれば、パリ

花の都がNY建築に与えた影響

ニューヨーク市内にはフランスの建築様式から影響を受けた建築物が数多く残っている。フランス建築に造詣が深い建築家の佐藤さんが代表的な建築物を案内してくれた。

 

ルイ16世様式

ニューヨーク市庁舎

左右対称や直線を多用するなどギリシャやローマの影響を受けながらも軽やかで優美なデザインが特徴のルイ16世様式、荘厳さを重んじた新古典主義、ルネサンス期のフランスの壮麗な宮殿や城に代表されるフレンチルネサンス様式が折衷された三部構成の建物です。フランス人建築家のジョセフ・フランソワ・マンギンが設計、1812年に完成しました。

ニューヨーク市庁舎/New York City Hall

City Hall Park


フレンチルネサンス様式

プラザホテル

フレンチルネサンス様式は、憧れの存在だったヨーロッパ貴族の仰々しいスタイルを模倣する様式として19世紀半ばから20世紀にかけてニューヨークのお金持ちの間でもてはやされました。プラザホテルは1907年に完成し、1919年から1922年にかけて増築。白い大理石の土台、華麗なエントランス、マンサード屋根(下記参照)は建築愛好家ならずとも必見です。

プラザホテル/The Plaza

768 5th Ave


ゴシックリバイバル様式

ルワスビルディング

天に向かって伸びるゴシック様式の尖塔をいただく壮麗な姿から「商業の大聖堂」の愛称を持つウールワースビル。完成は1913年です。この様式は機械や大量生産に対する反動(ロマン主義)と中世への畏敬の念の影響を受けて18世紀半ばのイギリスで誕生。フランスで本格的に花開き、19世紀半ばにニューヨークで定着しました。十字形に交叉した急勾配の屋根、装飾的な縦板張りやゴシックアーチ、縦ラインを強調したデザイン、マンサード屋根などが特徴です。

コルビジュエが「マンハッタンは立ち上がる街」と言ったように、プラザホテルもウールワースビルも、胴体部分が本家フランスより上に数倍引き延ばされて数十階建ての高層になっている点に注目。

ウールワースビルディング/The Woolworth Building

233 Broadway


ボザール様式

アンソニア

世紀末のパリで生まれ、1893年のシカゴ万博で紹介されニューヨークで大流行したのがボザール様式の建物。古典的な要素とモダンな要素が混在し、豪華な装飾を何層にも重ねているのが特徴です。「ギルテッドエイジの建物」がこれですね。アンソニア、グランド・セントラル・ターミナルなどが代表的な例です。

アンソニア/The Ansonia

2109 Broadway


もうひとつの建築散歩

なんちゃってパリを探してみよう

現在のパリ市街の原型はナポレオン3世の時代に作られた。推進役はセーヌ県の知事だったジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン(1809-1891)だ。それまでのパリは細く入り込んだ路地が多く、コレラ流行の原因にもなっていたが、オスマンは大通りを東西南北と凱旋門や広場を中心に放射状に建設し交通機能を大幅に改善するなど大胆な都市計画を断行。商店や事務所が入る1階と中2階の基壇、集合住宅が4層並ぶ胴体、屋根裏部屋を擁したマンサード屋根*の「3層7階建て」が水平に伸びる建物、いわゆる「オスマン様式」と呼ばれる集合住宅を建てた。マンハッタン区にもマンサード屋根が付いたオスマン様式を真似た建物はいくつかあり、「散歩がてらに探すのが楽しい」と佐藤さん。「中途半端な作りで、なんちゃってなんですが、建築家の目から見ると愛嬌があって面白いんです。皆さんも探してみてください」

マンサード屋根=下部が急勾配で、上部が緩やかな勾配の2段階の斜面を持つ屋根。下部の急斜面に窓を取り付け、屋根裏部屋を囲ったスタイルは中世以前から存在していたとされるが、17世紀の建築家マンサールが多用したことにより普及した。マンサード屋根は、19世紀パリのオスマン様式の街並みを構成する重要な要素となっている。

 

案内してくれた人

佐藤康治さん

建築家。東京に生まれ1960年代のパリで育つ。帰国後、東京の街並の貧相さに驚き、建築を学ぶため早稲田大学に入学、美術史家の会津八一、建築学者の今和次郎の流れを汲む建築史研究室に進み修士号を取得。パリで鍛えた味覚に裏付けられた調理の腕はプロ級。

 

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