巻頭特集

日本酒 メイド・イン・USA

決して楽ではない米国の日本酒!消費者の舌に期待

国内では人気が下降する一方の日本酒(出荷量は、1 9 7 3 年度の1 7 6 万6 0 0 0 キロリットルをピークに下降の一途、2 0 2 0 年には41万4000キロリットルで、76・6%減)だが、海外では急速に消費量が伸び、2022年には7500万ドルを突破し、10年前の3倍だ。寿司など日本食の普及と吟醸酒や純米酒など高級酒への関心の高まりが原因と言われるが、この趨勢が米国の自国内生産日本酒のブームにも拍車をかけている。

北米日本酒醸造組合(SBANA)調べでは、現在、米国人経営によるメイドインUSAの酒蔵は全米で25を数えるそうだ。そのほとんどが純米酒や吟醸酒などの高級ラインに特化して、米国人好みの口当たりと切れ味の良さを強調する。従来の日本食レストランで出てくる「火傷しそうな熱燗」というイメージを払拭したいのだろう。

とはいえ、全米地図を広げて統計をみれば日本酒市場は4億2 0 0 万ドル。全アルコール飲料の0・2%に過ぎない。ちなみにクラフトビールは338億6500万ドル同18%を占める。

「ビジネスで築いた資本を投資して日本酒造りに賭ける若い米国人によく会いますが、大抵が苦戦します」と手厳しいのは、オレゴン州で米国産日本酒を26年前より製造販売しているSake Oneのセールス・マネージャー・マサ福田氏。

「日本酒市場は確かに右肩上がりです。しかし月桂冠、大関、松竹梅など大手銘柄の普通酒が市場の大部分を占めている現実から目をそらしてはいけません。米国産日本酒メーカーのトップ5に入る弊社でさえ、ここまで来るのに数十年かかっています。」

今も毎週のように東海岸各州のレストランや小売店に丹念な営業をかける福田氏だが、大事なのは日本酒イコール日本食のお供というイメージを脱却することだと言う。つまり「ワインのような西洋料理の食中酒であれ」ということだ。

今年5月にアーカンソー州でオリガミ酒蔵を立ち上げたベン・ベル氏は、試飲パーティーのテーブルをハムやチーズ、ピザなど洋食で埋め尽くした。日本酒のポテンシャルを知った上での価値観変革への意気込みの現れだ。前向きな言葉が印象に残る。「日本酒の美味しさを本当に知っているのは消費者の方です。小売店で一般消費者に上質な日本酒を提供すれば、やがて料飲店の方も気が付いて日本酒への考え方をかえるでしょう」


<市内で日本酒買うならこのお店>

意外に普及している日本酒。だが買うなら品揃えが良くて商品知識が豊富なお店で買いたい。

さかや

イーストビレッジ地区の横丁にある間口一軒の日本酒専門店。日本全国各地の隠れた銘酒を取り揃える。純米大吟醸をはじめ、素材に気を使い手間のかかったお酒を厳選している。英語での説明書きもわかりやすく、米国人へのギフトを探している時には至極便利。基本的には日本からの輸入品が専門だが、獺祭Blueだけは棚に並ぶ。ニューヨーカーの好みを知り尽くしたオーナー夫妻のアドバイスが貴重だ。

 

 

さかや

324 E. 9th./TEL: 212-505-7253/sakayanyc.com

 


ランドマーク・ワイン&スピリッツ

旧名「ミノルズ・サケ・ショップ」。チェルシー地区にある知る人ぞ知るリカーショップ。一般酒店なるも看板にSAKE、SHOCHUと大きく掲げている。店内の壁を埋め尽くす日本酒のラインアップは圧巻。獺祭Blueを始め、ブルックリン・クラやモモカワなど米国産日本酒も多数揃えている。スパークリングやにごり酒も豊富。

 

ランドマーク・ワイン&スピリッツ

208 W. 23rd St./TEL: 212-242-2323/wineon23.com

 


蔵一

ブルックリン区はジャパン・ビレッジの一角にあるので食材ショッピングのついでに便利。店長のサムさん(日本人!)の日本酒愛は半端でなく、用途に応じた銘柄を瞬時に紹介してくれる。毎週土曜日午後4時から行われるテイスティングは、新しいお酒を試したい人にはうってつけ。日本酒の奥深さをあらためて感じられる良い機会だ。

 

蔵一

267 36th St., Brooklyn, NY 11232/TEL: 646–460-3765/kuraichibk.com

 


ビンビン サケ

日系のレストランが続々オープンする話題のグリーンポイント地区にできたボトルショップ。日本酒や焼酎、日本ブランドのウイスキーを中心に、ナチュラルワインやハードサイダーなども扱っている。オーナーのジョージさんが飲んで美味しいと思ったものだけをセレクトしているという。また食事との相性や客の好みに合いそうなものを丁寧に説明してくれる。

 

ビンビン サケ

29 Norman Ave. #100, Brooklyn, NY 11222/TEL: 646-860-0214/binbinsake.com

関連記事

NYジャピオン 最新号

Vol. 1255

夏の和野菜

盛夏のニューヨーク。色鮮やかな野菜たちが街中に溢れ、目を奪われるが、私たち在留邦人はどうしても和野菜が恋しい。実は、よく探せば、こんなアウェーな土地でも本格的な日本の野菜が手に入る。グリーンマーケットや野菜宅配サービスの賢い利用法など、今回の特集ではとっておきの和野菜情報をお届けする。