巻頭特集

闇があるから光がある 犯罪都市ニューヨーク

ニューヨーカーが震え上がった凶悪事件

タブロイド紙の人気記事といえば今も昔も犯罪とゴシップ。市内で発生した代表的な殺人事件を当時の報道をもとに紹介する。


標的は閉店間際の客 ラスト・コール・キラー

リチャード・ロジャース

1990年代初頭、ニューヨークのLGBTコミュニティを震え上がらせた連続猟奇殺人事件。被害者はゲイとバイセクシュアルの男性4人。深夜に酩酊状態でマンハッタンのピアノバーから立ち去る男を誘い、スタテン島の自宅に連れ込み睡眠薬を飲ませ、めった刺しにして殺害。遺体を切り刻み、禍々しい「細工」を加えた後ごみ袋に入れ、ペンシルベニアやニュージャージー、ニューヨーク州の高速道路沿いのごみ箱に遺棄していた。ロジャースは70年代から90年代にかけて、他州でも数人の男性を殺害した疑いが持たれている。2001年に逮捕、終身刑となり73歳の現在も服役中。

自宅から発見された聖書には、首切りや四肢切断についての記述が強調された箇所、刺し傷が描かれたシャツ姿の男性のポラロイド写真などが発見された。


サタンに命じられ? サムの息子

デビッド・バーコウィッツ

1976年夏から77年夏にかけて44口径リボルバーで無差別に13人を銃撃、うち6人を殺害したシリアルキラー。市内をパニックに陥れ、ニューヨーク史上最大規模の捜査網が敷かれた。自らを『サムの息子』と名乗り、「隣人のサムの飼い犬にサタンが憑依し、殺せとメッセージを送っている」と主張した。当時、市内で発生した多数の未解決放火事件にも関与していたとされる。77年8月10日に逮捕され終身刑に。70歳の現在も服役中。バーコウィッツが住んでいたウエストチェスター郡ヨンカーズ、パインストリート42番地は「サタンの隠れ家」と呼ばれた(現在は番地が変わっている)。

事件をモデルにした映画やドラマ、 楽曲が多く制作されている。なかで もスパイク・リーによる1999年公開 の映画「サマー・オブ・サム」は有名。


毒牙にかけた売春婦は17人 NY史上最多のシリアルキラー

ジョエル・リフキン

20世紀のニューヨークで最も多くの殺 人を犯したシリアルキラー。1989年から93 年にかけて、売春婦17人をロングアイランドはイーストメドウの自宅で殺害。遺体を バラバラにし、セメント入りの牛乳箱やドラ ム缶に詰めてイーストリバーやブルックリ ンの桟橋付近などに遺棄していた。93年6 月28日未明、ロングアイランド・サザン・ステート・パークウェイを走行中に交通違反で逮捕。パトロール中の警官が悪臭に気づ き、トラックの荷台にかぶせてあったブル ーシートをはがすと、そこには裸の女性の腐乱死体が。自宅からは4年間にわたる殺 人の「トロフィー」約228点が見つかった。終身刑となり、64歳の現在も服役中。

逮捕時、リフキンの口ひげにはノグゼマがべったりと塗られていたが。それは91年公開の映画「羊たちの沈黙」で描かれた、死体処理の際の悪臭を誤魔化すトリックだった。


タイムズスクエアの惨劇 トルソーキラー

リチャード・コッティンガム

1967年から1980年にかけてニューヨークとニュージャージーで18人を強姦・ 殺害したシリアルキラー。タイムズスクエアのモーテルで売春婦を殺害した際の残忍な手口(手と頭を切り落とし、遺体に放火)は有名。ニュージャージー州郊外で暮 らし、マンハッタンでコンピューター技師として働いていたコッティンガムは逮捕後、「100人以上を殺害した」と告白。彼が犯人と判明しているのはDNA鑑定が一致した場合か、犯人しか知り得ない詳細を証言した場合のみであることから、未解決事 件も含め米国史上最も「多産」なシリアルキラーの可能性が高いとされる。終身刑となり76歳の現在も服役中。

事件についての詳細は、2021年 からネットフリックスで配信中のドキ ュメンタリーシリーズ「クライムシーン:タイムズスクエアキラー」で知ることができる。


まだ未解決!!

ロングアイランド 連続殺人事件

【速報】サフォーク郡警察は13日夜、ナッソー郡マサペクアパークに住む建築家レックス・ホイヤーマン(59)を、一連の事件の容疑者として逮捕した。

 

1996年から2011年にかけて10〜18 人が殺害され、ロングアイランドのサウスショアに遺体が遺棄された連続殺人事件。身元が判明している被害者のほとんどは、クレイグスリストに広告を出していた売春婦だった。遺体の発見場所から「ロングアイランド・シリアル・キラー」「ギルゴビーチ・キラー」とも呼ばれる。

ジャージーシティの売春婦シャナン・ ギルバート(当時24歳)さんによる2010年5月の911 コールが事件の発端。911コールはオークビーチ付近からのもので、23分間にわたり「顧客が私を殺そうとしている」と訴えていた。その後ギルバートさんは行方不明に。失踪を受けてオークビーチとギルゴビーチに近いオーシャンパークウェイ沿いを捜索していたサフォーク郡警 察が同年12月から数カ月の間に麻袋に入った4人の20代女性の遺体を約500 フィート間隔で発見。さらに11年4月までに、のちに身元が判明した女性2人、 身元不明のアジア系男性、身元不明の女性2人、身元不明の女児1人の遺体を発見。女児はDNA鑑定により、 約7マイル離れた場所で発見された女性の娘と判明。ギルバートさんの遺体は失 踪から19カ月後の11年12月「ギルゴ4 人組」の発見場所からほど遠くない湿地帯で発見された。その他にも付近一帯からは、ごみ袋に入った8人の遺体が見つかっている。

ギルバートさんの死因については異論があるが、当局は「ギルゴ4人組」は全員殺害され、連続殺人犯の犯行と推定している。現時点で容疑者は特定されていない。直近では昨年5月、サフォーク郡警察が被害者の身体的特徴などの詳細と事件に巻き込まれるまでの足取りを公開。解決に向けて市民の協力を呼びかけた。

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