巻頭特集

闇があるから光がある 犯罪都市ニューヨーク

データで見る ニューヨーク市の治安状態

パンデミック以降、再び物騒になったと感じる今日この頃。実際はどうなのか?


市全体の治安は改善傾向

ニューヨーク市警察(NYPD)が6月5月に発表した市全域の犯罪統計によると、2023年の最初の5カ月月間を通して、昨年同期と比べて市では7つの指標となる犯罪カテゴリーのうち5つで減少が見られた。内訳は、殺人14.1%減(158件対184件)、強姦7.3%減(619件対668件)、強盗3.9%減(6357件対66155件)、窃盗7.7%減(5834件対6319件)、重窃盗0.6%減(1万9993件対2万121件)だった。

地下鉄内の重犯罪は、23年の最初の5カ月間を通して減少率は昨年度同期と比べて8.7%(893件対978件)上回っており、パンデミック以降常態化していた治安が若干改善されたことが分かる。

アジアンヘイトは継続

23年5月のヘイトクライム(憎悪犯罪)は、5%増(59件対56件)。被害者を人種別に見ると、アジア系が160%(13件対5件)増と突出している(左の表を参照)。原因は新型コロナウイルス感染症のパンデミックであることは論を俟たない。アジア系を標的にしたヘイトクライムは、2020年と2021年に急増した後、22年は32%減少(2022年4月調査)、 年になってから再び増加している。

犯罪多発地帯

ニューヨーク市の犯罪生率は地域によって大きく異なる。最も危険な地域を認識しておくのはこの街に暮らす私たちにとって極めて重要だ。不動産関連サイトでは各種データ(犯罪発生率、犯罪の種類)、歴史的背景や人口統計など複数の要素を基に左の地域を「危険地域」として挙げている。(数字は人口10万人あたりの犯罪発生件数と犯罪の被害に遭う確率。2021年9月FBI発表)。

増える未解決事件 人種間格差も

FBIのデータによると、全米で発生した殺人事件のクリアランス(解決)率は過去最低。1960年代半ばには、殺人事件の90%以上が解決し犯人の逮捕に至ったが、90年代には60%台まで、さらに殺人件数が急増した2020年までには初めて約50%まで低下した。CBSニュースの分析では、白人が被害者の殺人事件に対する全米のクリアランス率は改善している一方で、黒人とピスパニック系のそれは低い。過去10年間のNYPDのクリアランス率も白人の被害者ではかなり高く、直近では84%だったのに対し、ヒスパニックの被害者では61%、黒人の被害者では53%だった。NYPDによると、検挙率はFBIのデータとバツクログがあり、現在は解決に向かっているというが、殺人事件の犯人を逮捕するには、以前にも増して多くの証拠が必要だという。


日本人がNYで巻き込まれた凶悪事件

1994年8月

砂田啓さん (当時22歳、福岡県出身)

レフラックシティ地区(クイーンズ 区)のアパートビルの非常階段で2人組の強盗に襲われ、目を撃たれ3日後に死亡。犯人のアーモンド・マクラウド (20)とレジナルド・キャメロン(19、ともクイーンズ在住)は懲役25年。父親の尚壱さんは事件後、銃規制運動を開始。全米ライフル協会(NRA)を相手取り全米の銃器製造業者や販売業社を訴えた集団民事訴訟(99年)で全米初の勝訴評決を受けた。


2000年5月

チョウサ・リョウコさん (当時24歳、長野県出身)

自宅から約1ブロック離れたエルム ハースト52アベニュー87-59番地(ク イーンズ区)の外歩道で午前3時ごろ発見。ナイトクラブから帰宅途中のチ ョウサさんは顔、首、腹を撃たれてい た。エルムハースト総合病院に運ばれたが、同5時ごろ死亡した。チョウサさ んはソーホー地区のYWAミュージックに勤務。日本の音楽グループをラテンアメリカや米国に紹介する仕事を手伝っていたという。未解決。


2014年8月

オノウエ・ヨシアキさん (当時53歳)

頭部に傷を負い、ウエストビレッジ地区のハドソンリバーパーク付近で水 に浮かんでいるところを発見。NYPD によって引き上げられ、救急隊員によってその場で死亡が確認された。頭を撃たれた可能性があるという。オノウエさんは、ミッドタウン地区のコンビニや麻雀店勤務だった。未解決。

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