ハートに刺さるニュース解説

予測不能の米大統領選挙 世論調査の結果は信用できるのか

最後に誰が笑うのか
予測不能の大統領選

11月3日の米大統領選投票日まであと13日。新型コロナウイルス感染から回復したトランプ大統領と選挙陣営は、大規模な集会などに復帰し、まさに「スーパースプレッダー(超感染拡大者)」となっている。

一方で、新型コロナ感染は、夏の第2波の収束をみないままに第3波に突入。激戦州を含む多くの州で感染が拡大し、投票率が読めなくなってきた。この他にも、この選挙は過去にない大きな問題をいくつも抱えている。

コロナ回復後、選挙活動を再開したトランプ大統領

支持率に男女差
コロナ感染も影響

「郊外に住む女性たち、お願いだから、私のことを好きになってくれるか?」と、東部ペンシルベニア州ジョンズタウンで今月13日に開かれた選挙集会でトランプ氏。参加者が歓声を上げた。

さらに「彼女らは私を好きになるべきだ。なぜなら、私はあなたたちのひどい隣近所を(犯罪などから)救ったからだ」発言には、トランプ氏が入手しているデータが見え隠れする。それは郊外に住む女性の過半数が、ライバルの民主党候補、バイデン前副大統領に肩入れしているからだ。

教育機関の「オール・イン・トゥギャザー」などが9月に発表した調査結果によると、郊外に住む女性の55%がバイデン氏に投票するとし、トランプ氏の41%を大きく上回った。

一方、郊外に住む男性のバイデン氏支持者は43%で、トランプ氏が50%と、男女間で大きな差がある。女性がトランプ氏を支持しないのは、「コミュニティーの安全が失われた」というのが大きな理由だ。

トランプ氏は今月2日、新型コロナウイルス検査で陽性になったと発表し、急きょ入院。5日にスピード退院し、自己隔離期間の14日間が終わる前から、連日のように選挙イベントを開いている。10日にはホワイトハウスで、12日にフロリダ州、13日にペンシルベニア州と激戦州にも飛んだ。

9日までに側近や関係者が約30人も新型コロナに感染し、トランプ氏とホワイトハウスはまさに「スーパースプレッダー」。米国では日々5〜6万人が新規に感染し、死亡者の累計は約21万8000人に上る(16日現在)。しかし、トランプ氏が受けた高額な薬品は、患者や犠牲者の家族の手には入らないという状況だ。

世論調査の結果は
信用できるのか

政治ニュースサイト「リアルクリアポリティクス(RCP)」によると、世論調査機関の支持率平均はバイデン氏が51.2%、トランプ氏が42.3%とバイデン氏がリードを広げている(16日現在)。しかし、2016年の選挙では、民主党候補のヒラリー・クリントン元国務長官がリードしていたにもかかわらず、トランプ氏が当選した。

米市民はその驚きの記憶から、世論調査は「不確かだ」「一部を除いて不確かだ」と答えた人が81%に上る(米誌ザ・ヒル、18年12月発表)。20年の世論調査による勝者の予測は果たして信じていいのか——。

この他、投開票日前後の治安が悪化する懸念が高まっている。

米連邦捜査局(FBI)は今月8日、ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致・殺害計画を察知し、武装集団男性13人を逮捕したと発表した。同知事は、新型コロナ対策として、全州の公共の場所でのマスク着用を命じていたが、マスクを嫌う保守派市民から疑念の声が上がっていた。

また、投開票日までに銃を買う、主に保守派市民や、自警団を形成する呼び掛けがオンラインで見られる。トランプ氏が敗北した場合、保守派や武装集団による暴動が起きる可能性も予想され、警察などが対策に乗り出している。

新型コロナ感染が今春を上回るスピードで広がる中、果たして有権者は投票に行くのかどうか。記録的に急増している郵便投票や事前投票は、投開票日からどのくらい経って集計が終わるのか。また、投開票日前後の市民の対立や暴動は、市民生活にどのような影響を及ぼすのか。「不確定要素」が山積みのままだ。11月3日まであと11日、米国民にとって運命の日が訪れる。

【今週の用語解説】

米大統領選挙

4年に1度行われる米大統領選挙。2020年選挙では、米国二大政党の共和党・トランプ現大統領の再選か、民主党候補のバイデン氏の政権奪回かで揺れている。一般投票は、18歳以上の米国民で、有権者登録を行った者が可能。投開票日は11月3日(火)。事前投票の他、今回は新型コロナの影響により、郵便投票が多くなる年といわれている。当選した大統領は2021年1月20日(水)に就任式を迎える。

 

津山恵子
ジャーナリスト。
「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。
フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。
近書に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

 

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